32.辛辣な二人
「グリュンの友達って、お前だったのか……」
「……どうも」
「おはようルーク、早いね」
グリュンが協力してほしいというから来てみたら。俺がちょっと前に出会った盗賊だった。
……人間の縁って想像できない時があるよな。時々。
そう心の中でため息をつきつつ、もう一度グリュンが説明してくれた話を思い出す。
確かこの盗賊……ルークは強くなりたいんだったよな。それで魔力を増やそうとしたら異様に伸びが悪かったので俺にその理由を調べて欲しいんだったか。
俺は『鑑定』と呟いて眺める。
グリュンと違って弾かれることもなく情報を出してくれたので、少しホッとしつつ読んでいく。すると一つ気になる事が書いてあった。
「成長阻害の呪い……?」
「何それ?そんなのあるの、ヴェル?」
「あぁいや、基本的には使われないんだが……」
これは確か、アリアが俺たちの周りに結界として張っていたものだ。
つまり彼は実質俺たちのせいでこうなっていると。
「なんか……悪かったな」
「何がだよ!?って、あれ?体が軽い?」
「解呪しておいた。これで多分、今までより強くなれるだろ」
「あ、ありがとう……」
反発してくるかと思ったら素直にお礼を言われ少し驚く。ルークなんか反抗期まっしぐらの目をしているのに。
ふぅ、と俺は一息ついて木の影に腰を下ろす。
俺はルークがグリュンに何を言ったのかは知らないが何故かすごく、燃えている。あの状態のグリュンに手を出し口を出す方が愚かというもので。
……遠くから眺めておくことにしよう。
♢♢♢
数時間後。本を読んでいた俺の隣に気がついたらルークが転がっていた。思ったより鬼教官なのだろうか、グリュンは。
「ほらーもうちょっと頑張ってってば」
「ま、待ってくれないか?せめて少し休憩を……」
「頑張れルーク、俺は応援してる」
「ヴェルさん?思ってもないよねそれ!?」
恨みが含まれたような悲鳴をあげながらグリュンに引きずられていく。というか俺はさん付けになっている。まぁ別に構わないが。
何だろう、グリュンはルークを弟子にでもするつもりなのか?いや確かに、使える属性が水と雷の時点でかなり素質があるとは言え……。
「流石にスパルタすぎるか」
どかーんと目の前でまた一つ爆発が起きる。そう育てたのは俺だけど。
いやでも、流石に俺はここまでじゃなかっただろ。もしかしてグリュンにはそう見えていたのか?
───今度から、気をつけよう。
そう思いつつ二人の方をもう一度眺める。パッと見ただけでは兄弟に見えそうではある。どっちが兄かと言われると、なんか……年齢的にはグリュンの方が三歳ほど下なのだが、状況だけ見るとルークの方が弟だと思ってしまいそうだ。
「あ、ルークが飛んでった」
「受け取ればいいか?」
「ありがとー」
爆速で飛んできたルークの首根っこを片手で受け止める。そして風魔法で受け止める準備をしているグリュンの方へ投げ返した。もちろん風除けの魔法はかけてあげている。一応俺なりの配慮だ。
「本当に、何なんだこの二人はーー!?」
そんな叫びが聞こえたような気がしなくもなかった。
♢♢♢
「おぉー……出来るようになったねルーク!」
「凄いな、やっぱり素質あるんだな」
「中々に鬼だったけどな……」
ふわふわとルークの周りに初歩魔法『水球』がいくつも浮かんでいる。普通は一つだけしか出せない人が多いがルークは五個出していた。
他にも出来ることはたくさんあるが、取り敢えずルークは満足したらしく、時間も時間だったので感謝を述べて帰って行った。
「グリュンは意外と手厳しいんだな」
「だって、ヴェルと一緒に遊びたいのに時間とられてるんだもん」
「あのなぁ……」
うちのグリュンはこんなんで本当に大丈夫なのだろうか。
俺一番で何も生活しなくていいんだが……。
少しだけ、というかかなり心配になる今日この頃だった。




