30.前途多難とはまさに
「ルークは何の属性が使えるの?」
「俺は水と雷だ。グリュンは?」
「俺は……風と光」
本当は闇属性以外全部使えるけど黙っておく。そして自分の属性を偽ろうかとも考えたけど、後々が面倒な事になりそうなのでやめておいた。
水と雷ってことは、そもそもの属性の相性は良い、よね?
となると最後はルークの素質次第になるかなぁ。
───と、思っていた俺を恨みたい……!
いざ街の外に出てみて、やってみよう!ってなってから、一回も成功していない。俺みたいな爆発すら起きないし、何なら発動の兆しも見えない。
これは、もしかして。
「ねぇルーク、もしかして魔力少ない?」
「……そうなのかもしれない。前にもそれ言われた気がする……」
「じゃあ増やすとこから行こ?」
「え、増やせるのか?」
「単純作業にはなっちゃうけど、出来る」
昔ヴェルと一緒にずっとやっていたこの作業。今となっては懐かしい思い出。
まず魔力を線状にして、糸にする。これをずっと保つだけ。
ルークはそれだけか?と言っていたけど、思ったより難しかったのか、四苦八苦しながら生み出そうとしていた。
そうして数分後にやっとふにゃふにゃの糸が出来た頃には横で倒れている人がいて。
「もー何休んでるの?ほら、頑張ってってば」
「相変わらず辛辣だな……」
そう言いつつも、魔力不足で本当に立てそうになさそうだったので、仕方なく頭に手を乗せて魔力を分ける。ちゃんと水と雷に変換して渡したから大丈夫……なはず。
すると、渡した途端ルークは首を傾げた。
「待てグリュン。お前、この魔力さっきと違うんじゃないか?」
「……そうだけど、何で分かったの?」
「いや何となく……?」
うわ厄介、と一瞬思ってしまった。ルークは魔力行使においてはからっきしだが、探知や感知においては一級なのか。それにしても、感覚でわかっているというのが怖いなぁ。意識すればもっと気づけるようになりそう……そうなると、俺が嘘ついたこともバレてしまう可能性がある。
「「あ」」
その時、ふわーっとふにゃふにゃの糸が空気に溶けていく。
……まぁ何にせよ、まずこちらから特訓しないとなぁと思ったのだった。
♢♢♢
夕暮れ。そう、もう少しで夜が来る。
なのにルークの魔力が一向に増えない。いや、増えてないと言ったら嘘になる。微々たる増加はしているのだが……もう少し増えても良いような気がする。
「ねぇルーク、明日もする?」
「良いのか?」
「うん、ヴェルも連れてくる」
「え?」
そう俺が言うとすごく驚いたような顔をされる。そんなにヴェルにボコボコにされたの根に持ってるのかな。それは知らないけれど、俺は頑張ればルークは強くなれると思う。
……うーん、流石にそろそろ帰ろうかな。時間も時間だし。
また明日、と別れを告げて宿まで走って帰る。
今日はたくさんヴェルに話したい事がある、食べて欲しいものがある。はやる気持ちを抑えつつ、一段飛ばしで階段を上がって、勢いよく俺たちの部屋の扉を開けた。
「うわ、びっくりした……楽しかったか、グリュン?」
「楽しかった!あのねヴェル、今日ね………」
屋台で美味しい果物を買ってきたから食べて欲しい事、そしてヴェルにとっては因縁?があるであろうルークの事……。
俺が話している最中、ずっとヴェルは頷きながら聞いてくれる。
そう言えば何でヴェルがお兄ちゃんに繋がるのかは分からなかったけれど、俺はヴェルが兄でも親でも、どちらだったとしても幸せで。
「ヴェル、今度は一緒にお出かけしよう?」
「ああ、分かった」
「絶対、約束だからね!」
そう、ヴェルに告げる。俺は今日一人でこうしてお出かけして、実感した。
───やっぱり、二人一緒の方が楽しいのだと。




