28.手練れとは?
「お前……!?よくも草原のど真ん中で放置しやがったな!?
危うく魔物に食われる所だっただろうが!」
「こいつ、ヴェルに向かってお前とか言った」
「グリュン、こいつとか言わない。弱いのは確かなんだが」
「何なんだこいつら……?」
未だ俺の闇魔法で拘束されているのも関わらずジタバタと抵抗している様を見る限り、そこそこの力はあるらしい。
とはいえ拘束を解けていない時点でそこそこ、なのだが。
そう思っていると慌てたように職員らしき人が俺の近くに走って近づいてきた。
「もしかして、貴方が捕まえてくれたんですか!?」
「………まぁそうではあるんですけど」
「────ありがとうございます!」
「え?」
思ってもみなかった言葉を言われ思わず半歩下がる。何だ?この人間もしかして何かやらかしてたのか?
そこまで考えて、あ、と思い出す。
そういえば最近噂の盗賊がどうとか言ってたな。しかもかなり手練れの。
………これが。
「お前、絶対変なこと考えてんだろ」
「いえ?別に何も」
「ねぇヴェル、結局何なのこの人」
「小さい方はやけに辛辣だな」
盗賊を放置しつつ職員の方から話を聞いていく。要約するとどうやら報奨金がもらえるらしい。しかもそこそこの額を。
取り敢えず今日は野宿しなくて済みそうだ、と安心していると「一旦拘束を解いてもらうことってできます?」と言われたの出来ますよ、と返す。
「え、本当に良いんですか?」
「はい!お願いします!」
「……はぁ」
外して暴走するとは思わないのだろうか。せめてこう、何かするとか……。そう思いつつも渋々外す。
そして見事に俺の予想通り、切りかかってきた。
こういうところは何と言うか小物感がすごいのだけれど、確かに剣筋は綺麗で回避しにくく、実力はあるんだろうなと思った。
ただ、一つ言えるとするなら。
「刃が軽すぎる」
そして額に指で一撃、いわゆるデコピンをする。
ただ思ったより強かったのか、かなり遠くまで転がっていってしまったのだが、まぁ許されるだろう。どう考えても正当防衛だ。
そう自分に言い聞かせて、盗賊を回収しにいく。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと可哀想……ヴェルのデコピン痛いんだよね……」
「…………」
なんか不貞腐れて何も言ってくれなくなったので、抱えて職員の前に置いておく。
新人なのか見るからに慌てて───あれ?さっきも慌ててなかったか?まぁ良いか。慌てて、俺に謝ってくる。
「申し訳ありません!お手数おかけして……」
「いえ、別に構いませんが……」
「報酬は上乗せしておくので!」
それは普通に嬉しい。
そう思いつつ、足元に転がる盗賊の方を見ると、完全にいじけていた。そんな……見るからにはぶてなくても……。
まぁそれだけ自信があったのだろう。門番が警戒を促してたぐらいだしな。
その後、無事に俺たちはお金を受け取り、受付の人たちが教えてくれた宿へと向かう。そこで子供たちにもみくちゃにされつつも何とか部屋までたどり着いた。
「ああー……疲れたぁ」
「お疲れ。懐かれてたな、かなり」
「なんで……?」
ぼふ、と音を立ててグリュンが人生初であろうベットに寝転がる。
さて初めての感想はどうだろうか?
「……思ったより硬い……」
───予想外だった、それは流石に。




