26.新しい街にて
出発してからはや数時間。この調子で歩けば昼までには王都に着くだろう。
それにしても、どうやってお金を稼ぐべきだろうか。流石にここまでくると目を逸らせなくなってくる。
昔は旅人組合みたいなのがあって、そこの依頼を受けて達成すれば幾らかの報酬は貰えていたが、今でもあるのだろうか。……いや、ないような気がする。俺の昔は相当前のことだといつの日かにグリュンに言われたしな。
「ヴェル、どうかした?」
「いや、何でもない。気にするな」
突然振り返ったグリュンに少し驚きつつもそう返す。まさか金策を思案しているとは言えない。
それにしても、と考えを逸らす。
こんなにも、ここは平和だっただろうか。俺の記憶が正しければもう少し荒れていたような気がするのだが、気候変動でもあったのだろうか。
変に穏やかすぎて落ち着かない。ただまぁ、初めて旅をするグリュンにとっては優しい気候と状況なのでそこは感謝する事にしよう。
「あ!ヴェル、見て!もうすぐじゃない?」
そうグリュンが指す先には門がある。おそらくあれが街を囲む城壁なのだろう。思ったより早く着いたな、もう少しかかるかと思ったが。
そう思いつつ、二人並んで門の方へと歩き始める。そうして門に着き、街に入ろうとしたその時。門を見張っていた人の良さそうな門番に呼び止められた。
「……どうかしましたか?」
「あんた達、あんまり見ない顔だよな?だったら一つ聞いてってくれ」
「なにー?」
「ここ最近、少し物騒でな……特に夜中出歩く時は気をつけてほしい」
曰く、最近盗賊が出没しているらしい。しかもかなりの手練れのようで、未だに手がかりすらつかめていないのだとか。良かった、俺たちが何かしたのかと思った。
しかし俺自身敬語なんて久々に使ったな。グリュンは相変わらずだったが。
「そうだ、冒険者カード持ってるか?そうしたら詳細な情報を渡せるんだが」
「カード、ですか?」
「俺たち持ってないよ?」
俺とグリュンがほぼ同時に答える。すると門番は少し驚いたような表情を見せたものの丁寧にもらえる場所まで教えてくれた。
というか、最近はそんなのになっているのか……技術の発展って凄いな。
そんな感じで少し感心しつつ、ようやく街の中に足を踏み入れる。
すると、そこに広がっていたのは、煌びやかな街並み。建造物と街路樹が丁度良いぐらいに配置されていて、自然溢れる街へとなっている。
「綺麗っ……ねぇヴェル、凄いね!」
「───あぁ、そうだな」
本当に綺麗だと、そう思った。昔は逃げてばかりで、落ち着いて街を見る機会なんてなかったから。そう思っているとグリュンが何かを指さした。それに導かれるように目を動かすと街の中心によくある噴水を指していた。
「ヴェル、あれ何?」
「あれか?あれは噴水だ」
「近づいてみても良い?」
「いいぞ。あ、間違っても入るなよ」
「はーい」
小走りで噴水の方へと向かっていったグリュンを追うように俺も歩いて行く。ざわざわと音を奏でる木の葉たちやグリュンよりも小さい子どもたちの笑い声、人々の足音が合わさって、今が平和なのだと実感する。
そうしてグリュンは着いて早々、目を輝かせながら噴水を見上げた。
「凄く綺麗……俺ずっと見てられるかも」
「そんなに気に入ったのか?」
「うん!」
謎に気に入ったらしい噴水を眺める事数分。そうして満足した後は早く行こう、と急かしてきた。少し俺は苦笑いしながらグリュンの後ろを歩いていく。
「何だっけ、次はかーど?貰いに行くんだよね?」
「そうだな、持っていた方が便利らしい」
「ちょっと楽しみかも、何するんだろう?」
声を弾ませてグリュンがそう言った。確かに登録手続きとか絶対あるだろう。何をするのかは正直俺も興味がある。
そう思いながら親切な門番が教えてくれた建物に俺がグリュンに追いついて、二人並んで歩みを進める。
───思わぬ厄介ごとが起こっているとは露知らず……。




