19.雪に埋もれて
無事に雪が降り始め、地面に少しずつ白色のカーペットが引かれていった頃。グリュンは住処の外で雪だるまをまた作っていた。前回のミニサイズのと比べると自身の身長サイズまで大きく作られているのを見て微笑ましくなる。
それにしても、もう少し雪が積もってくれたのなら、かまくらが作れると思うのだが。今の厚さだとグリュンを押し込んだらギリギリ入るぐらいの大きさのかまくらしか作れないような気がする。
「わー!?」
グリュンの驚きの声が聴こえる。大方木の上の雪が大量に落ちてきたとか、そういうのだと思っていたので何も考えずに振り返ると、グリュンがいなかった。
「…………は?」
「たすけて……ヴェル……」
「グリュンどこに……って、あぁここか」
グリュンがいたであろう木の下にこんもりと雪が積もっている。何をしたのかは知らないが、雪の下に埋もれていることは確かだ。
さくさくと音を立てながら、スコップの先がグリュンに当たらないよう雪を削っていく。なんかかき氷食べてるみたいだな……。
幾分か山が小さくなった頃、勢いよくグリュンが飛び出てきた。
「おかえり」
「ありがと……死ぬかと思ったぁ」
「別にいざとなったら魔法で出られただろ?」
「─────確かに!?」
「気づいてなかったのか……」
発想は時々鋭いものが出てくるのに、なぜ時々こうなのか……。いや良い悪いではなく、ただ単純に不思議だった。
全く、グリュンといると飽きないな。
「あ、待って!ヴェル、雪!」
「ん……?あ、本当だな」
「これで作れる!?」
「かもな?」
空から降ってくる粉雪に目を輝かせながら周りの雪をかき集めていく。そんなに作りたかったのか、かまくら……。
確かに、木の上に積もりまくっている雪を集めれば何とか作れそうだ。
そう思って俺は羽だけ出して木の上の雪をグリュンの近くに落としていく。間違ってもグリュンを埋めないように。
そうして雪が大量に集まってきた頃、俺たちは二人でかまくら作りをスタートした。
まず地面に円を描いて、大まかな形を想像する。そして俺がその円の中に雪を置いていって、それをグリュンが踏んで固めていく。ただ一回グリュンが少し重かったのか、落とし穴にはまった時みたいに目が点になってこちらをじっと見つめていたのには思わず笑ってしまった。何故気づいたのかというと、後ろから「たすけてー」と聞こえたからだ。
今日俺に助けを求めすぎじゃないか?
「で、これからどうするの?」
「これから、この雪の山をくり抜くんだ」
「なるほど?」
そう言ってグリュンは大きな雪の山を少しだけ掘る。雪を一欠片だけ取り出した感じだ。
「……別にもう少し勢いよく掘っていいんだぞ?」
「いやちょっと、怖くて?」
「まぁ確かにな、今日二回埋まってるしな」
「もう!」
とは言いつつもさくさくと二人で掘り進めていく。
グリュンによって、なかなか雑に掘られていった雪の空洞を丁寧に内側から固めていって何かあった時に崩れないようにしていった。
しばらく黙々と作業をしていると、不意にグリュンが声を上げた。
「あ、俺やったかも……」
「どうした?って、あぁ……」
「真ん中に光が差すようになっちゃった」
「まあ良いんじゃないか?これはこれで楽しそうだろ」
てっぺんにそこそこ大きな穴がグリュンの手によって作られてしまったが、幸いな事に、もう雪が止んでいたので入ってくる、ということはそうそうないだろうと思いたい。
そんなこんなでなんとか、かまくらが完成した。外から見てもなかなか綺麗なドーム状になっていると思う。
「ヴェル、出来た!」
「そうだな、よく頑張ったぞグリュン」
「早速入ってみよう!」
「早いな」
グリュンに手を引かれてかまくらの中に実感を持って入ると、そこはなかなか暖かくて。外の寒さがまるで別世界なぐらい、ちょうど良い気温になっていた。
「でも、ここで何しよう?」
「考えてなかったのか……でも、そうだな。
────ここでスープでも作って食べるか?」
「わぁ、楽しそう!俺道具とってくるね!」
「……早くないか」
移動速度が脱兎のごとく早いんだが。どれだけ楽しみだったのだろう。
その後無事に調理器具を一式抱えて帰ってきたグリュンとスープや他の簡単な料理も作り、色々なことをしながらかまくらの中で一日を過ごしたのだった。




