18.雪の護り人
「うーん……」
「……どうしたグリュン?」
「雪、今年降ってないね……」
「確かにそうだな、もう降ってもおかしくはないが……」
ちら、と窓の外を一緒に見やる。清々しいほどの冬空。少し肌寒いが、まだまだ秋とも言えるぐらいの気温。雲一つないほどの真っ青な空にグリュンは一つため息をついた。
若干、今の天気に不服そうに見えるその表情に少し疑問を抱く。
正直俺にとっては雪かきをしなくていいから楽ではあるのだが。
「何かあるのか?」
「かまくら作ってみたかったなぁって思って……」
「かまくらかぁ……」
それは確かに雪が降らないと作れない。ただ、この天気のままだと雪はどう足掻いても降りそうにないな。冬の息を全く感じない。秋がずっと居座っている。
魔法でもいいのなら降らせれるのだが、流石にそれは楽しくないだろう。
そうだな、それなら。
「てるてる坊主でも作るか?」
「何、それ?それ作ったら雪降る?」
「グリュンの頑張り次第だな」
「……!じゃあ作る!」
気力の抜けた目に一気に輝きが灯る。じゃあ作るか、と幾つかの布と糸を用意して、グリュンに作り方を教えていく。
布の色を変えてもいいし、何してもいい、と伝えるとどうしようかなぁと悩み始める。
俺も一つ作ろう。折角ならグリュンに似せて作るか。
服を作った余りの布切れを丸めて頭部の代わりにする。そうして少し大きめの布でそれを包んで糸で縛る。布のひらひらとした部分を黄緑と緑のグラデーションに魔力で染めて、頭の方は茶色で少しだけ髪色風に染める。
我ながらグリュンっぽく作れたのではないだろうか?
そう思ってグリュンの方を見ると、グリュンもグリュンで何かを模して作っていた。
紫と黒色のグラデーションの服に頭の部分は黒色。
……もしかして、それは俺か?
「出来たー!これヴェル!」
「上手に作ったな、ちなみに俺はグリュンを作ったぞ」
「わ、上手……すごい!」
「そんなに変わらないだろ?」
わぁ……と目を輝かせて俺の作ったてるてる坊主をじっと見つめる。本当に、グリュンのと大差ないと思うのだが、そんなに嬉しかったのだろうか?
いつの間にか俺の手からグリュンの手の中に移っているてるてる坊主を見つめながらそう思う。というかなんか可愛いな、小さいもの同士だからなのか……?
それはさておき、これで雪が降ってくれればいいのだが。そうしたらグリュンと一緒にかまくらを作ることができる。
その後、どこにつるか、と言う話になって二つ並べて窓の近くにつる事にした。
真っ青な空に紫と黒と緑と黄緑が異様なほど主張しているが、それはまぁ、良いだろう。気にしたところでどうしようもないし、背景が雪でも異様な程主張するに違いない。
それに俺とグリュンの願いがこもったこの二人はきっと雪を連れてきてくれるはず。
そう願って俺はもう一度窓の外を見た。
───なお、この二日後本当に雪が降るのだが、それはまた別の話……。