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世界最強の竜、子育て始めました!?  作者: 蒼空花
第一章「旅立つその日まで」
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11.旧友

 ぴよぴよという小鳥の声で目が覚める。しかし、いつもなら聞こえてくるはずの料理の音や漂ってくる良い香りが全くしなくて首を傾げた。

 ヴェル、いないのかな?でもそれならそうと一言ぐらい言いそうなのに。

 そう思いつつ布団を出て、誰もいない部屋を通り過ぎて家の外へ出る。

 すると───


「……え、誰!?」


 俺の目線の先にいるのはヴェルと俺の知らない人。それも結構楽しそうに話している。

 じっと隠れて観察していると桃色の長い髪に、若葉色で切れ長の瞳が特徴的な女の人という事は分かった。でもそれ以外何も分からない。


「……ほんとに誰だろう………?」


 でもきっと友達なんだよね?今まで見たことないけど。そう悶々と一人で考えていたから、ヴェル達がこっちに来ていることに気付かなくて。

 俺が気が付いた時には目の前が澄み渡った綺麗な若葉色で染められていた。


「…………!?」

「これがノアの言っていた少年か?」

「そう、グリュンだ」

「───ふむ、中々面白いじゃないか」

「分かるか?」

「まぁな、流石に分かる」


 えっと、女の人で本当にあってるよね?多分……。

 見た目は完全に女の人なのに、話し方がどうしても一致しなくて混乱する。

 そうして結局、一番最初の問いに戻ってしまった。


「あの……誰、なの?」


 そう俺が聞くと、その人は少し驚いたような表情をしたがすぐに微笑んでこう言った。


「すまない、自己紹介が遅れたな。私の名前はアリア。この森の主だ。」



♢♢♢


 時は遡ってグリュンが目覚める少し前。

 のんびり朝の掃除をしていた俺は思いがけない旧友にばったり出会った。


「ノア、来てやったぞ」

「……珍しいなアリア、どうかしたのか?」


 大概眠っているアリアが目覚めて活動しているのは珍しい。それでなくてもめんどくさがりの彼女は滅多に外に出ない。

 なら、いつ出てくるのかというと、よほどの大事があった時だ。なので少し身構えて話を聞こうとしたその時、アリアがすかさずこう切り出した。


「あぁ、勘違いするな?今回は別に何かあったわけじゃない」

「……そうなのか?ならまぁ良いんだが」

「今日はノアが育てているという少年に会ってみたくてな」

「──相変わらず突拍子もないなアリアは」


 せめて一言ないのか?と聞くと、ないな、と即答された。

 確かにアリアにはこの森で匿ってくれていたという恩があるとはいえ、もう少し遠慮とか配慮とかはないのだろうか。いや多分ないな。あったら今、ここに居ない。


「で、その子は居るか?」

「もうすぐ起きると思うから待ってくれ」

「分かった」


 そんな会話をしていると、後ろに気配が一つ増える。おそらくグリュンだろう。人の気配に気づいて起きたのか、それともただ起きたのか。

 どちらにせよ、アリアを紹介しておかないといけない。

 そう俺が考えていると、いつの間にか隣にアリアがいなくて少し焦る。もしかしてもう行ったのか?

 ぱっ、とグリュンの方を見ると、アリアはもうグリュンに話しかけていて、慌てて駆け寄る。


「これがノアの言っていた少年か?」

「そう、グリュンだ」

「───ふむ、中々面白いじゃないか」

「分かるか?」

「まぁな、流石に分かる」


 アリアは属性が見るだけで分かる。だったら最初から彼女を頼れば良かったのだが、この前は門前払いされてしまったのだ。気が向かないからまたな、と。

 そうしているうちに呆気に取られていたグリュンが復活し、誰?と聞いた。

 それに対し、アリアはこう返したのだった。


「すまない、自己紹介が遅れたな。私の名前はアリア。この森の主だ。」


♢♢♢


 アリアと名乗った女の人を見上げるように見つめる。

 ヴェルとまではいかないがそこそこ背が高い。しかもかっこいいと綺麗が両立した非常に凛々しい女の人だった。


「えっと……アリア、さん?」

「アリアで良い、ノアとあまり歳は変わらないからな」

「俺の方が百歳上なんだが」

「細かいな、大差ないだろう」


 ぽんぽん、とテンポ良く会話が進むせいで、どこで話に入れば良いのか分からず互いの顔を見やる。

 どこで出会ったの?とか、いつから?とか聞きたいことはたくさんある。でもそれ以上に、二人の会話を聞いているのが面白くて、思わず聞き入ってしまう。

 こうして聞いていると、お互いがお互いのことを信用しているんだなぁと感じてしまい、思わず微笑んだ。


「……何を笑っている、少年」

「いや、ヴェルとアリア楽しそうだなぁって」

「……グリュンもいつかアリアに疲れる日が来るぞ」

「何だと?」


 失礼なやつだ、とはぶてたアリアを見てヴェルと一緒に笑う。

 ───結局どんな人かは分からなかったけど、優しくて面白そうな人だなぁ。

 俺は今日、ヴェル以外の人と話すのも楽しいのだと、そう実感したのだった。

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