プロローグ
そよそよと流れていく風に身を任せるよう目を瞑る。暑くもなく寒くもなく、絶好の昼寝日和だ。
俺はそんな事を考えながら一眠りするために、大きすぎるこの竜の体を魔力で人型へと変化させる。
これまでなら適当に丸まって寝る、の一択なのだが今となってはそうもいかない。
何故かと言うと──そう、拾った子供が一緒に寝たがるからだ。勘のいいあの子供はそろそろ、こちらに向かって走ってくる頃だろう。
それまで寝ていても良いだろうかと考えながら横になったその時、自分の腹に大きな衝撃が加わった。
「もう!相変わらずヴェルはずるいんだから!」
「いや、ずるいも何も昼寝するだけじゃ……」
「俺も一緒がいい!」
なんていつものように繰り返すこの会話に慣れてきた自分も確かにいて。俺の隣に寝るスペースを空けてあげると嬉しそうに笑いながらそこに収まった。
その時俺は拾った時より大きくなったその姿にくすぐったいような感情を覚える。これが親心とかいうやつだろうか。
前までの俺なら芽生えるはずのないその感情に浸りながら眠りに落ちる。
──懐かしい夢を見た。
それは俺とこの子供が出会った時の記憶──。
不定期更新になると思いますがお付き合い頂けると嬉しいです!