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【完結済み】スーパーハニーになりたくて。 ~ポンコツ令嬢はスパダリ製造機~  作者: 西九条沙羅
第三章

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⑤ 卒業と職権乱用

今回は少し短いです。

「どうしたの?」



黙ってしまったルイにアリスが尋ねる。


先ほどまで、再ラウンドを望むルイと、もう休みたいアリスによる攻防戦が繰り広げられていたのだ。


結局、これ以上疲れたら卒業式の後にある卒業パーティに完璧な姿で出席が出来ないと、アリスの涙の訴えが勝利を手にしたところだった。



拗ねてしまったのかとアリスが問いかけると、別の意味で拗ねていたようだ。



「本当は、例の件を明日までに解決して、卒業式後は結婚の準備に入る予定だったのに・・・」


ルイが甘えるようにアリスの胸元に顔を埋める。

けしからんたわわがルイの顔を優しく包み込む。

極上の癒しである。


アリスだって残念で仕方が無い。


だけどアデルを思うと、これが最善なのだ。


「もう少しで解決出来るんだから、ラストスパートよ」



アリスは自分の胸元で顔をスリスリしているルイの髪を優しく撫でる。

黒いふわふわの髪は、細い猫毛で気持ちがいい。



「お姉様の憂いを全て取っ払って、絶対に私の結婚式に晴れやかな笑顔で出てもらうんだから!」


アリスは拳を作る代わりにルイの猫毛を両手でもしゃもしゃする。

ルイはその間もたわわを堪能し、お互いに癒し癒されたカップルは、そのまま眠りについた。







卒業式は恙無く終わり、ルイは三年間通して首席を死守した。


在校生達の多くが失望の涙を流した。女子はルイとの別れに涙して、男子はアリスとの別れに膝をついた。


卒業生は、一時期低位貴族とルイとの間で確執があったが、概ね友好的な関係を築いた生徒が多く、和やかな別れとなった。


卒業式の後は、学園のホールで卒業パーティが開かれる。

卒業生達は一度各自家に戻り、着飾ってからパーティに参加する。

ルイはアリスと一緒にコンフラン家に戻り、さっさと準備を済ますと、ソワソワとアリスの準備を待つ。



アデルの結婚式の時には失敗したが、同じ轍を踏まないと、今回はアデルや侯爵夫人から教えを乞いアリスにドレスを贈ったルイは、採点を待つ子供の様にソワソワと当主の執務室のソファに座っていた。


現在例の件の報連相中であったが、ルイがソワソワと落ち着きが無いので、侯爵は早々と諦めた。




そして、執事長のセバスチャンからアリスの準備が出来たと連絡を受けた二人は、エントランスホールでアリスを待つ。


アリスの準備を終えた夫人が先に、ニマニマしながら降りて来た。


「やるじゃない、ルイルイ」


侯爵とルイの間に並んだ侯爵夫人は、肘でつんつんとルイを押す。

その一言で、ソワソワがワクワクドキドキに変わったルイは、食い入るように階段の先を見据える。


エントランスから真っ直ぐに伸び、中段での踊り場から左右に分かれる巨大なサーキュラー式の階段。


その右手側からアリスが姿を見せた。緩やかな弧を描く曲線の階段をゆっくりと降りて来る姿は、まさしく天上の天使の様だ。



美しいデザインが施された手すりを伝い、極上の笑みを乗せた視線をずっとルイに向ける。



ハイネックのマーメイドスタイルのドレスは、真っ白からアリスの瞳の色の薄い紫色へ、そして濃い紫からルイの髪色である真っ黒へとグラデーションで色付けされている。


無垢な天使の様であり、妖艶な女性の様でもある。まさに今、少女から女性へと成長しているアリスにとても良く似合っていた。



中央の踊り場で立ち止まったアリスがそっと両手を差しだすと、ルイは大股で階段を数段飛ばしに一気に登って、アリスの前に来る。


侯爵家一同、末端のメイドですら、ルイのお尻の尻尾がぐりんぐりんと、揺れるどころでなく円を描いて高速で回っているのが見えた。



「綺麗だ・・・。誰にも見せたくない・・・。閉じ込めてしまおうか・・・」




ルイの発言がヤバくなった所で、アリスが「あわわ。やばし!」と軌道修正する。



「このドレスを着て、皆の前でルイと踊りたいからダメ」



アリスがルイにそう言ってエスコートを催促すると、アリスにノーと言えないルイが顔をぐぬぬと歪めながらも愛する少女をエスコートして階段を降りる。



ルイのぐぬぬ顔を見た侯爵夫妻は、何となく状況を把握して、一歩間違えればヤンデレになりそうな婿にため息をつく。


そして同じ様に状況を把握した執事長のセバスチャンが、いつも通りにそそくさと子供達を送り出したのだった。






王立学園の卒業パーティでは、これから大人として夜会に出る子供達が最後の授業として体験する、プレ社交界の意味合いを持つ。

卒業生の親達が見守る中、明日から大人の仲間入りをする子供達がダンスパーティを楽しむ。

しかし卒業パーティに変わりはないので、国王が来て祝辞を述べることなどない。王太子然りである。

しかしアデルがアリスの卒業パーティに参加しない筈が無い。


王家に嫁いだアデルはもう、コンフラン家として参加出来ない。

王太子妃が易々と卒業パーティに参加する事は出来ない。


(じゃぁ仕事として参加すればいいじゃない!)


恋愛小説では、たいてい王子がお股ユルユルと恋に落ちて、婚約者である貴族令嬢を断罪するのだ。そしてそれは卒業パーティで行われて、最近あるパターンでは、卒業パーティに来た国王によって、その王子が廃嫡されるのである。


「と、言う事で、王太子妃として卒業生に祝辞を述べて、もしも断罪があったらスパーンッと逆ざまぁ致します」


そう言って職権乱用が行われたのは、アリスの卒業の二ヶ月前の事。



それによって警備の問題など多くの人間に迷惑をかけたアデルであったが、普段元王太子妃のせいでストレスMAXの現王太子妃の為に多くの人間が尽力した。




そうしてアデルとアリスは、つかの間の安寧に身を寄せて、パーティを楽しんだのであった。















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