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【完結済み】スーパーハニーになりたくて。 ~ポンコツ令嬢はスパダリ製造機~  作者: 西九条沙羅
第二章

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番外編: ルイの暗躍


自分がジュリエットの前で笑顔を見せてしまった、つまりやらかしてしまったと気付いたルイは、その日から動き出した。



まずはクラスメイトに相談をする。


「最近、一年の低位貴族の令嬢と噂になっているみたいなんだ」

「そうなの? 聞いたことないけど・・・」

「うん・・・。俺もたまたま聞いて。

俺がアリス以外を眼中に入れる筈ないのに・・・」

「まぁ、そりゃそうだわな」

「どこかで噂を聞いたら、否定しておいてくれないか? アリスに捨てられたら、俺はもう生きていけないから・・・」

「そうだな、分かった」

「あと、アリスが嫉妬してその子をいじめているなんて噂もあるみたいなんだけど、アリスが嫉妬するはずないって、皆なら分かるよな?

天使の様なアリスが、普通の人間の少女に、嫉妬なんかするはず無いって・・・」


そう言って、ルイはクラスメイトに困っている現状を伝えておいた。

この中に、もしも低位貴族のクラスに知り合いがいる人物がいれば、布石にはなるだろうと思い。




そして、生徒会メンバーにも相談をする。

ここには、低位貴族のクラスに所属している人間はいないが、ジュリエットと同じ一年生の生徒はいる。

だから、クラスメイトよりも慎重に、そしてはっきりと否定する。


「最近、一年の低位貴族の令嬢と噂になっているみたいなんだ。リクヴィール男爵令嬢って知ってる?」

「あ、僕達と同じ一年生ですよね? 知っています。有名ですよ」

「そうなんだ・・・。俺はその子の顔すらも知らないんだけど、どんな子」

「瞳や髪の色が薄くて、全体的に儚い感じの子ですよ」

「そうなんだ・・・。

何でそんな噂が出たのか知りたいんだけど、調べる事できる?」

「いいですよ。知り合いに聞いてみます。しかし災難ですね」

「そうなんだよ。皆も普通に考えれば分かる筈なのに。

アリスを知っている人なら、絶対思わないよね。アリスを捨てて他の女に走るなんて」


一年生だけでなく、二年生の生徒会メンバーもアリスの笑顔を思い浮かべる。

知り合う前のアリスは、この世に存在していないかのように思えるほど神々しかったが、生徒会室で会うアリスは、いつも笑顔で可愛らしく皆アリスが大好きだった。



「「「いや、絶対あり得ませんね!!!」」」


「分かってくれて嬉しいよ。万が一噂を聞いたら、あり得ないって否定しておいてくれる?

あと、アリスが嫉妬してその子をいじめているなんて噂もあるみたいなんだけど、アリスが嫉妬するはずないって、皆なら分かるよな?

天使の様なアリスが、普通の人間の少女に、嫉妬なんかするはず無いって・・・」


ルイはとってもいい笑顔で下級生達にお願いをしておいた。





そして最後は噂好きの女子達。

ここでルイは悩んだ。彼は知っているのだ。

人と言う生き物は、自分の好き嫌いに関係なく、ただ恵まれた者、誰からも愛される人間を嫌う事があるという事を。

アリスの美貌を羨んでいる者の中には、その反動でアリスを嫌っている者もやはりいるのだ。


そんな人間は周りに左右されるから、ターゲットからは外す。

出来ればアリスに憧憬の念を抱いている人間が好ましい。

そしてジュリエットに憎しみを持っている方がなお良し。



ルイは、何とかクラスメイトの女子をカフェテリアに連れて来るように、パウルに頼んだ。

理由は何だっていい。

出来れば婚約者をジュリエットに盗られた女子を含めて、多数。


そうして決行日、パウルがクラスメイトの女子と二人の男友達を連れて放課後のカフェテリアにやって来た。

そこには窓際の席で、憂いの浮かぶ瞳で気だるげに外を見ているルイがいた。

後でパウルが伝えた事によると、ルイの背中には薔薇の花が背負われていたらしい。

けぶるまつ毛に彩られた金色の瞳が微かに揺れて、ルイのため息にはフェロモンが乗る。


「ルイ兄様、どうされたのですか?」


予定通りにパウルがルイに話し掛けた。


「パウル。どうしたんだ? こんなところで」

「友達とお茶をしに来たのです。 アリス姉様はどうされたのですか?」

「今は職員室に行っているよ(真実)」

「何だか元気がありませんね、ルイ兄様」

「うん・・・。さっき嫌な噂を聞いてね。そういや、パウルは子爵・男爵クラスだったね。リクヴィール男爵令嬢って同じクラスだよね?」

「ええ、まぁ・・・」

「なんか、その子と俺の噂があるみたいなんだけど、・・・知ってる?」


パウルが知らない振りをすると、そこから少女が一人勇気を振り絞って、この学園の権力者である生徒会長に物を申した。


「わたくし存じ上げております。生徒会長とリクヴィール男爵令嬢が恋仲だという噂ですわ。

わたくしは信じておりません。

天使様を捨てて人間の、それも底辺の女を選ぶなんて・・・」


憎しみを込めてそう言った少女が、きっと婚約者を奪われた子だろうと、ルイはすぐさま気付いた。


「そうだね。アリス以上の女性はいない。俺が彼女と別れることは無いだろう。たとえ女神様が目の前に現れたとしても。

俺も何でそんな噂が立ったのかが、分からないんだ・・・」


そうして、わざとらしくフェロモンを乗せたため息を吐き、けぶるまつ毛をバサバサとするように瞬きをする。伏し目がちに。薔薇を背負いながら。


一五、六歳の少女など、これだけでいちころだった。

誰もが頬を上気させて、潤んだ瞳でルイを見つめる。


「みんなも、もしも他の子達が噂について何かを言っていたら、否定をしておいてくれる?

俺達は、とても愛し合っているんだから」



ルイは、目の前にアリスが居るかのように、極上の笑顔を向けた。



「あと、アリスが嫉妬してその子をいじめているなんて噂もあるみたいなんだけど、アリスが嫉妬するはずないって、少し考えたら分かるよね?

天使の(ような)アリスが、普通の人間の少女に、嫉妬なんかするはず無いって・・・」




ルイは、少女達の胸に自分の笑顔と共に、この言葉が刻まれるように、殊の外ゆっくりと優しく少女達に話し掛けた。

そしてこの絶妙なタイミングで、アリスがカフェテリアにやって来た時に、ルイは女神もアリスの味方であると気付いた。



「ルイ、お待たせ~。

あれ? パウル珍しいね。お友達?」


アリスが、巨匠レオナルドの手によって描かれた天使の様な笑顔で、少女達に挨拶をする。


「初めまして、アリス・コンフランです。

パウルは私の大切な弟だから、皆、仲良くしてあげてね」



パウルとルイは、全員が堕ちた事を確認した。




こうして、ジュリエットとの噂はただの噂であると、多くの人間の心に少しずつ刻まれていったのだった。


アリスとルイは真実愛し合っていて、ルイが天使よりただの人間を選ぶ筈が無いと。



天使のアリスが、人間の少女に嫉妬をする筈が無いと・・・。






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