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【完結済み】スーパーハニーになりたくて。 ~ポンコツ令嬢はスパダリ製造機~  作者: 西九条沙羅
第二章

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⑬ アリス

アリスが少しメンタルをやられてしまいますが、スパダリがすぐに駆け付けるのでご安心ください。

その為、少し短めです。



『女の子は誰だってみんなプリンセスなの。


白馬に乗ったアリスだけの王子様が、愛してくれるわ。



アリスは、アリスと言う人生の主人公なのよ』








いつから、ルイは私の特別になったのだろう・・・。



気付けば一緒に居た。



毎日一緒だったから、ルイが来ない日曜日は、自分の半身がどこかに行ってしまったように感じた。






昔から私は、我儘な子供だった。


自分が望んだことが叶えられないなんて、考えた事もなかった。


お母様の様な、お姉様の様な、淑女になりたくて。


いつも真似っこをしていた。


皆がそんな私を見て、微笑んでくれる。



ルイはとても可愛い男の子だった。

自分よりも小柄で、自分の意見をあまり言わないルイは、弟みたいな存在だった。


(わたしがルイのめんどうをみなきゃ!)


そうやっていつもルイを引っ張っていたな・・・。

ルイはいつだって私の望みを叶えてくれた。


手を繋いでどんどん歩いて行く私の後ろから付いてくるルイ。



振り向いたら、いつも眩しい笑顔で微笑んでくれた。




他の人もそう。



この世にいじわるな人なんていない。みんな私に微笑んでくれた。



優しい人々に囲まれて、優しい世界でぬくぬくと生きていて、私は驕っていたのだろう・・・。




だって私は、どんなに怖い状況でも勇気を振り絞って立ち上がったら、いつも幸せを手に入れる事が出来たから・・・。






あの船底で囚われた記憶は、私の心に大きな闇となって残った。


自分が今まで見たことも無い、恐ろしく暗い、闇。


私はあの日まで、自分は何だって出来ると信じていた。


だけど、ちっぽけな私の小さな手では、守れない物もあるのだと、知った。




ジュリエット様と話した後、自分がどうやって生徒会室に戻ったのかも分からない。



だけど、何時もの様にルイと話しながら馬車で帰る。


何事も無かったかのように。



ルイは、私に話し掛ける時、とても優しい()をする。


――— だけどそれが愛ゆえだと、どうして分かるの?


私の様子がおかしいと、すぐに気づいてくれる。


――— それが愛されている理由になるの?




今まで信じていた何かが、急に心もとなく感じた。




今までの私だったら、聞いていたかもしれない。ルイに問い質していたかもしれない。



だけど、怖くて聞けない。



お姉様が読んでくれた小説にあったな。女の子は恋をすると臆病になるって。



もしも私を愛していなかったら、もしも本当にジュリエット様を愛していたとしたら・・・。



私はルイの手を放せるだろうか?


この手を、この瞳を、失くしたまま一人、生きて行けるだろうか?




家に帰った私は、食欲が無いからと言ってそのまま部屋に閉じこもった。



キキがやってきて、無理やり私の手を引いてお風呂に入れさせる。


私の髪の毛を洗いながら「嫌な事、悲しい事は湯船で洗い流せばよいのですよ」と言って、私が涙を流している間ずっと、歌いながら世話をしてくれた。



お風呂に入ってさっぱりすると、少し気が楽になった。



ジュリエット様と話して、少し神経質になっていたのかもしれない。


今なら、ルイの手を放してあげることもできそうだ。


そう思って、やっぱり少し泣いてしまった。



バルコニーで物音がした気がして、カーテンから外を少し覗いたら、そこにルイが居た。




黄金色の瞳に、不安げな、迷子の様な表情の自分が映っている。




ルイ、大好き。




だから彼を、自由にしてあげなくちゃ・・・






『白馬に乗ったアリスだけの王子様が、愛してくれるわ』




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