地球わらし
数多の妖怪や魑魅魍魎の集う異界に、ある日、人間の使者団が訪れた。
聞けば、地球のさらなる繁栄のために、とある妖怪の力を借りたいという。
――指名を受けたのは、座敷童子だった。
住み着いた家は繁栄を遂げるという、その幸運の力のためだ。
その『家』の認識を広げれば、もたらす幸運の範囲も広がるに違いない……と。
要するに――。
人類みな兄弟! なので、人類が住む地球はこれすなわち大きな家!
……という認識を周知徹底してもらえれば、座敷童子が地上にいるだけで、地球全土が幸運に包まれ繁栄間違いなし! とのこと。
地球のどこであろうと、家と思って好きに過ごせる――。
そう出来るように全ての国家が援助する、という破格の待遇も提示されたので、座敷童子は二つ返事で了承して人間界へと赴いた。
――以来、地球は空前の繁栄を迎えた。
誰もが何をやっても上手くいき、世の流れは何もかもが良い方向へと連鎖していった。
地球人類は、そのすべての人が、汲めど尽きない幸福を手にしたのだ。
……それから、長いような短いような時が過ぎて――。
ある日、唐突に、座敷童子が異界に帰ってきた。
「おや。どうしたんだい? 大層良い生活をしてるって聞いてたけど」
「……滅んじゃった」
「滅んだ? 人間が? そりゃまたどうして」
訊かれた座敷童子は、やれやれとばかりに肩をすくめて首を振る。
「……兄弟ゲンカは管轄外」