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【28話】愛の告白


 ひと悶着あったものの、無事にパーティーは終わった。

 

 国王と第一王子夫妻に挨拶をして、ミレアとラルフは会場を出た。

 

 

 馬車に乗る二人。

 一度王宮へと戻り、明朝、シルクットの街へ帰ることになっている。

 

 カタカタ揺れる車内の中、ミレアはものすごく緊張していた。

 これからラルフに、胸に溢れる気持ちをぶつけようとしている。

 

 そして緊張しているのは、ミレアだけではなかった。

 

 隣に座っているラルフも、張りつめた空気を出している。

 

(ラルフ様も、パーティーが終わった後に話があるって言っていたわね)

 

 沈黙の中、ラルフと視線が交差する。

 ミレアの出方を伺っているのかもしれない。

 

 ミレアは大きく深呼吸。

 覚悟を決めて口を開く。

 

「あの!」

「実はだな!」


 二人が声を上げたタイミングは、それはもうまったくの同じだった。

 完全にやらかしてしまった。


(まさか被るなんて……!)

 

 せっかく覚悟を決めたというのに、気まずくなってしまった。

 再びの沈黙が車内に流れる。

 

 それを破ったのは、ラルフの方だった。

 

「こういう時は、レディーファーストと相場が決まっている。だから、ミレアから言うといい」

「いえ、ラルフ様の方からどうぞ!」

 

 そう言ってくれるのはありがたいが、譲られるとかえって言いづらくなる。

 

 しかし、ラルフも口を開こうとしなかった。

 もしかしたらミレアと同じように考えていて、言いづらくなっているのかもしれない。

 

「同時に言うというのはどうでしょうか!」


 だからこその、この提案。

 

 ラルフも、「それはいい!」と大きく頷いてくれた。

 

 息を吸い込む二人。

 せーの、と掛け声を口に出す。

 

「私、ラルフ様が大好きです!!」

「愛している、ミレア!!」


 大好き。

 愛している。


 それは愛の告白だった。

 言葉に違いはあれど、中身は同じだ。

 

「つまりこれって、両想いってことでいいんですよね?」

「あぁ、そうだ」


 両腕を伸ばしたラルフが、ギュッと体を抱きしめてくれた。

 

 彼の体温を、全身で感じるミレア。

 体の芯から温かいものが溢れて、隅々まで広がっていく。

 

「ラルフ様。私今、とっても幸せです!」

「それは俺も同じだ。ミレア、愛している」


 再び愛の言葉を紡いだラルフが、それを紡いだ唇を重ねてきた。

 彼の唇は優しくも情熱的であり、そして、とても熱かった。

 

 

 何度目かのキスをして、二人は体を離した。

 

「最初はパーティーの前に告白しようと思っていたのだが、二人で特別な体験をした後に言うのが効果的、というアドバイスをもらったんだ」

「そのアドバイスをした相手というのは、もしかしてルークさんですか?」

「そうだが……なぜ分かった?」

「実は私も、同じアドバイスを貰っていたんです。エリザさんから」


 ミレアとラルフは顔を見合わせ、そして、同時に笑った。

 

「少しもったいないが、あいつらに王都の土産でも買っていくか」

「そうしましょう! 二人は私達のキューピットですからね!」


 

 いつまでもずっと、今みたく笑い合える幸せな日々が続きますように。

 車窓から見える真っ暗な空に浮かぶ大きな満月に、ミレアは心から祈った。

これにて完結です!

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!


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それではまた、次回作でお会いしましょう!

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