開幕の合図は銃声で
久しぶりの執筆になります。
拙いストーリーかもしれませんが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!
錆び付いてもう動かないであろう機械に囲まれて、男が二人対峙していた。
交渉中のようだったが、交渉の現場としては少々異常だった──
「なんだと・・・?も、もう一度言ってみろ!!」
その二人のうち、パンパンのスーツを着た中年の男の怒号が木霊した。
びりびりと埃の舞う空気が振動する。
肉がついて大きくなった顔を真っ赤にして、小さな目を血走らせているその姿は明らかに激怒している。
しかし、それを知ってか知らずか、答えるもう一方の男の返答は実にそっけないものだった。
「だーから、その依頼は受けられねえって言ってるんですよ」
真白い髪をし、ファーのついたパーカーというラフな格好をしたその男─・・・いや、青年は、いかにも時間の無駄だ、というような表情で中年男を見た。
異常にだるそうである。
青年の態度が余計に癇に障ったのか、中年男は声のボリュームを更に上げた。
「金はいくらでも積むと言ってやってるんだ!!掃除屋の分際で・・・」
「あのねえ、何か履き違えてんじゃないんですか?」
青年が全く態度を変えずに、だがどこか機嫌を損ねた様子で言う。
「確かに俺は掃除屋ですが、運び屋じゃねーんですよ。しかもそんな──」
青年は中年男がその右手に持つ大層なアタッシュケースをあごでしゃくった。
「ご法度もんの白い粉ときたらなおさらねえ?」
「!!」
中年男が、アタッシュケースの取っ手を握る手の力を強くした。
その『白い粉』がよっぽど大切なんだろうか、中年男は歯をきつく噛み締める。
──・・・だが次の瞬間、ついに堪忍袋の緒が切れたのか、赤い顔を歪ませ叫んだ。
「もういい!」
その声に、青年はうるさそうに眉をしかめた。だが中年男は喚き続ける。
「もういい!!チンピラ風情が馬鹿にしおって・・・!!──おい!!」
中年男は、自分の背後に開く入り口に向かって大声で呼びかけた。
それを聞いた瞬間、青年はますます眉間の皺を濃くした。
(・・・うわ、めんどくせえ)
ため息一つ。
入り口からぞろぞろと黒服の屈強な男達が現れてきたのを見て、ため息もう一つ。
中年男は、青年のうんざりしたような表情を絶望のそれと勘違いしたのか、優越感の塊のような笑顔を見せ、高らかに言った。
「・・・チンピラ風情が意気がるからこうなるんだ!!・・・──殺れ」
中年男が後ろに控える男達に親指で合図すると、男達は揃った動きで懐から銃を取り出し、その銃口を
青年に向ける。
絶体絶命、その瀬戸際のはずだった。
「・・・!?」
男達は青年の動作に同様をかいま見せた。
なんと、自分のジーンズのポケットから煙草を取り出し、くわえて見せたのだ。
中年男も唖然としている。
「お前・・・自分が今どんな状況に置かれてるのかわかって・・・」
「わかってるからこそだ。最期に一本吹かすぐらいいいだろ?」
青年はいっそ気楽そうに答える。
開き直ったか・・・?
その場にいた、青年を除く全員が気を少し緩めた瞬間。
青年が、跳躍した。
呆然と頭上を舞う青年を見やる男達。
青年の両手には、銃が二丁握られていた。
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「お疲れ様でした」
煙草をふかしながら廃工場から出てきた青年に、ひどく淡々とした声がかけられる。
青年は、入り口に停めてあった黒塗りの高級車の屋根の上にちょこんと止まっている青い小鳥を見やり、煙を吐いた。
「おうよ」