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占い師の娘

この話で一旦花音と香霞の出会いはおしまいです。

 山の向こうに沈みかけた太陽は空を茜色に染め上げ、周囲の雲や空の青と絶妙なグラデーションを織り成していた。


 ふぅっと緊張の糸をほんの少し緩めた香霞は、自身の奥の深い部分で妖力が藻掻くように揺らめくのを感じ、全力でそれが(こぼ)れないように慎重に抑え込む。

 そろそろ変化の限界が近い。日没までには帰らねば、花音の前で雪女の姿を晒すことになってしまう。


 だが、香霞にはあと一つだけどうしても聞いておきたいことがあった。


「占い師パープルティンクの娘がどうしてこんな山奥の高校に転入してきたか聞いてもいい?」


 私たちと昔関わりがあった占い師の動向を知っておいて損は無い。


 唐突な香霞の質問に花音はその大きな目をぱちくりとさせて軽やかに笑う。


「だってここ京都には雪女の本家があるって言う噂があったんですもの。香霞さんは何か知っていて?」


 ぎくり。


 雪女の本家...や、あるけど...しかもそれ実家(うち)だし!!!


 だけどまさか、敵か味方かも分からない相手にそれを知られるわけにはいかない。


 それに、だいぶ息が苦しくなってきた。

 これはきっと意表を突かれた驚きだけではなく、本気でそろそろ身体の限界が近いのだ、と遠のきかける意識を必死に繋ぎ止めながら思う。


「大丈夫?!」


 異変に気づいた花音が香霞の真っ青な顔に驚いて声を上げた。


「大、丈夫......今日は失礼する、わ......。あと、名前、香霞でいい...敬語も、いらない......。」


 息を切らしながらも何とかそれだけ言い置いて香霞はその場を後にする。


 ーーだから、気づかなかった。


 じゃらり。


「え...?」


 地面に金属が擦れるような音がして顔を上げた花音が香霞の首元や手足を凝視して不思議そうな声を上げたことに。


 変化が解けかかった香霞の首、手首、足首にそれぞれ嵌められた頑丈そうな(かせ)とそれを繋ぐ細い鎖が彼女にはしっかりと見えていたのだった。


 あれは、何...?


 見間違いかもしれないと瞬きをして再び目を凝らして見ても確かにそれは香霞の手足と首にしっかりと嵌められていた。

 残念ながらそれを繋ぐ鎖がどこに繋がっているかまでは分からなかったが、どこまでも伸びる長い長い鎖は先が見えなくなるまで遥か彼方へと続いていた。


 話している間は見えなかったのに急に見えた枷と鎖。


 占い師の娘である花音は、半分ではあるがその血を受け継いだために強烈な霊力をその身に宿していた。彼女に普段の香霞を見破るほどの力はなかったが、黄昏(たそがれ)時、彼女の変化が解けかかっていたからこそ徒人(ただびと)では視えないものをその瞳は捉えたのだ。


 花音がようやく我に返り、その場を動くことが出来た時には、既に陽はとっぷり暮れて辺りは紺色に覆われ、ぽつぽつと星のように街灯が浮かび上がっていた。

次話は香霞ちゃんの過去です〜!

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