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それぞれの想い

場面が次回からまた切り替わるのでちょっと分量が短くなってしまいました。

「こちらでできる限り調べますが、どうもきな臭いですね。過激派とはいえ、元は小心者の風魔いたち族に5年前のあの襲撃を企てることができたとはとても思えません。」


 緑陰の言葉に香霞は強く頷く。


「きっと彼らに双瑠璃の存在を吹き込んだ黒幕がいるはずよ。...貴方が不在だったとはいえ、祐馬と美紗渚様があそこまで遅れを取るほどの相手が風魔いたち族にいただなんて思えないもの。」


 風魔いたち族の規模で風オオカミ族の精鋭部隊と天狐である美紗渚をほぼ全壊させることなど不可能だ。


「ですから分家は真っ先に候補から外してしまっていたのですが.....。ひとまず、香霞様に術をかけた無礼者は捕まえて裏を吐かせたらすぐにでも消しましょう。」


「.....。」


 びりびりと震える空気が肌に痛い。物騒な言葉とは裏腹ににっこりと浮かべられた笑顔の圧が凄まじい。よくよく見るとこめかみにうっすらと青筋が浮かんでいるのが見て取れた。そうでなくとも、彼の纏う妖気は刃物のように鋭利で膝の上の祐乃が彼の覇気に当てられてぷるぷると震えてしまっているほどだ。


 緑陰は怒っていた。


「舐められたものだ。()を怒らせたこと、きっちり(あがな)ってもらおうぞ。」


 地を這うような低い声で呟かれた言葉に香霞は静かに目を閉じた。

 5年前の襲撃に関わった過激派はきっと一人残らず駆逐されるであろう。あの襲撃は穏やかにひっそりと暮らしていた香霞達から多くのものを奪い過ぎた。

 そして、5年間ずっと香霞を術で縛り続けた。


「勿論私も行くわよ。」


「香霞様!?」


 先程までの怒りを消し、驚いたような不安そうな表情を向けられて香霞は困ったように苦笑する。

 彼の中できっと私はまだあのころと同じ小さなお嬢様のままなのだ。


「これは私の因縁でもあるもの。.....それに、守られてばかりだったあの頃とは違うわ。」


 敵に怯え、見ていることしか出来なかったあの頃とは違う。二振りの宝刀を使いこなし、双瑠璃としての力も完全に制御できるようになった。


 強い意思の宿る、今は隻眼の瑠璃色に緑陰は香霞をゆっくりと見つめて温かな微笑を浮かべる。


「そう、でしたね。.....幼かったお嬢様がこんなにも立派になられて。一緒に過去に蹴りをつけましょう。」


 ふっと香霞を見つめる青い瞳が細められ、視線が香霞を通り越す。香霞を見ているようで見ていない、その視線の先にいるのはいつもたった一人。

 既に魂は半分以上が香霞に馴染んでしまい、彼女の存在はもう薄らとしか残っていないだろう。

 それでも彼は私の中に彼女を探し、見出そうとする。


 忘れられない、たった一人の愛しい人。


 彼女のためにも復讐は果たさねばならない。


「ええ、必ず。背後に何がいても私たちは負けないわ。」


 負ける訳には行かない。目を閉じて優しい新緑を想う。何となく、彼を探す糸口も掴めそうな気がしていた。

香霞の過去のおさらいをちらっと。


6歳 閉じ込められて出させてもらえなくなる。

8歳 緑陰達に預けられる。

9歳 迷い込んだ奏と出会う。

10歳 襲撃により命を落とし、美紗渚の魂をもらって復活

15歳 今

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