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しばらく花音ちゃんと香霞ちゃんのお話が続きます。
休み時間、彼女の周りには人だかりができていた。
「花音さんってどこの学校にいたの?」
「趣味は?」
「パープルティンクってあの有名な占い師の?!」
「彼氏はいるの?」
などなど。一気に様々な質問を浴びせかけられていた。質問も凄いが、答える方も丁寧でなかなかに凄かった。
「前に居たのは星雲女学院よ。趣味は妖怪で、正真正銘占い師パープルティンクの娘よ。彼氏はいないわ。」
そこである単語に香霞が反応する。
今、確かに聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
それに、占い師パープルティンクといえば、昔うちの一族と関わりがあったという占い師の名前に似ているような気もする.....
少し間があり、他の人も香霞と同じ部分に興味を示した。
「え!?花音さんってオカルトマニアなの??」
「ええ、まあ。マニアというか家業的な関係もあるかしら。.....香霞さんは?」
先程、視界の隅で香霞が僅かに反応したことを確かに捉えていた花音は最初の自己紹介の時に自分に全く興味がなさそな彼女が、やっと少し自分に対して興味を持ってくれたのかもしれないという思いで軽く尋ねたつもりだった。
対する香霞はそんなこととは知らず、急に話を振られて言葉に詰まる。花音について考え事をしていたのもあって慎重に言葉を選ぶ。
まして、占い師の娘であり妖怪が趣味だと言った彼女に万が一でも自分が雪女であるとバレる訳にはいかない。
顎に人差し指を当てて考えるように下を俯いた彼女の顔に長い前髪がひと房はらり、とこぼれ落ちて右目を隠す。
「パープルティンクさんほどかは分からないけど、少しは興味あるわ。」
迷った末に無難に答えたつもりだったが、それが意外だったのか花音は硝子玉のような薄い水色の瞳をくりくりとさせて嬉しそうに顔を綻ばせた。
「花音でいいわ。私たち、きっと気が合うわ。」
まさか、こんなに喜ばれるとは思わなかった。
心底嬉しそうに笑う彼女に香霞は「どうでしょうね」と意味ありげに呟いて本をしまった。
予鈴が鳴っている。
香霞は授業を上の空で聞いていた。
ーーと、隣から手紙を渡された。
少し不器用だが、丁寧な文字が並んでいる。
曰く。
『香霞さんへ
放課後、屋上へ来てください。
みんなには内緒ですよ。
花音より』
困ったなぁ、とため息をついて空を窓から眺め、軽く目を細めた。
人間に変化するのは物凄く体力を消耗するのだ。香霞は能力の高い雪女とはいえ、まだほんの子どもに過ぎない。変化していられる時間は限られていた。
いかがだったでしょうか?明日もお楽しみに!