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本日2話目です。
主人公の名前がわかります!
「香霞様.....。」
少し困ったような色の滲む緑陰の声に、香霞と呼ばれた少女は
「ええ。」
と短く応じる。
ややあって、後ろを振り向いた香霞は視線を後ろに向けたまま緑陰にこう言った。
「ーーねぇ、この子うちに連れて帰ってもいいかしら......?」
しばし沈黙が流れる。が、折れたのは緑陰だった。
「......そうですね。」
額を押さえて首肯する緑陰に彼女はふわりと微笑んでその子猫を抱き上げた。
「ありがとう。」
そろそろ森を抜ける。
「ところで、そのお姿のままでここを進まれますか?」
唐突に立ち止まってそう尋ねてくる緑陰に、香霞は「ん?」と首を巡らせ、次いで自分の姿を見下ろした。
彼女が纏う衣は巫女が着る物に酷似した雪のように真っ白い着物。そして、濡れたような美しい黒髪は長く、腰ほどまである。
たっぷり一呼吸おいて彼女は美しい瑠璃色の瞳を瞬かせ
「わっ!?」
とたじろいた。見れば腕に抱いた子猫が寒さにぶるぶると震えている。
香霞は慌てて瞬き1つのうちに本性から人間の姿へと変化した。
長かった黒髪は背の中ほどに、着物は七分袖のシンプルな花柄のワンピースにレモン色の薄手のカーディガンといった人間の女の子たちが着ているような私服へと変わっていた。
「.....私、雪女に変化してたのね......。ごめんね、寒かったでしょう?」
香霞は自分が首に巻いていた白いマフラーをしゅるっと外し、それで子猫を優しくくるむ。
何せ雪女の体温は雪のそれと大差ないのだ。それを寒さの苦手な猫ーーましてや、子猫が平気でいられるはずがなかった。
「全くです。......あの程度で変化してしまってはいつ人間に見つかるか......。」
本気で思案する緑陰をそっちの気に、香霞はマフラーにくるまって気持ちよさそうに眠る子猫を見つめていた。木から落ちたり香霞たちに着いてきたり寒さに耐えたりと色々疲れたのだろう。
限りなく黒に近い焦げ茶をした毛並みには所々白や茶が混じり、ふさふさとしてとても柔らかそうである。
なんとも愛らしい。
❄️ ❄️ ❄️
ここ、「京都」の季節は木枯らしの吹き抜ける秋の終わり頃。
かの土地は未だに魑魅魍魎の跋扈する妖怪の宝庫であった。
彼女はその中のある一族に属する。
ーーー雪女、である。
姓はなく、名を「香霞」という。
ちなみに、人間時の姓は「白露」。
そして、彼女は12月で16歳になる嵐山高校の1年生として、人間に紛れて生活をしていた。
いかがだったでしょうか?
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