番外編 リックの災難…
「リック、今日はお前に頼みたいことがある」
「シード副隊長!私に頼み事とは一体何でしょう?」
シード副隊長の話では、ドラグン隊長に内密である令嬢を監視するということだった。アンソニー様からの依頼だそうだ。
私は副隊長の指示のもと、その令嬢を尾行した。とても変わった女性で何故かヒト族 特有の香水の匂いが一切しなかった… 令嬢は一人で家を出ると挙動不審に町を歩き始めた。 何人もの獣人が令嬢に声を掛けようとしていたが、牽制して追いやってみたが、どうもおかしい… どうやら令嬢は声を掛けられるのを待っているようだった。
『あんな彼女欲しいな…』
そんな出来心だった… 香水をつけていない令嬢に興味がでてしまったのだ。
まさかこの後、あんな悲劇になるなんて…
「お嬢さん、珍しいね。お嬢さんからは香水の匂いがしない。本当にヒト族?」
声を掛けてしまった…
多分違反になるだろう…
だけど、仕方ない… 気になって仕方ないのだから。
令嬢は満面の笑みで「恋人募集中」と答えた。
『やったぁ!これはチャンスだ。もしかしたら可愛い彼女が出来るかもしれない…』そんな淡い期待を胸に令嬢を食事に誘う。
次の瞬間…
大きな咆哮と共にドラグン隊長が空から現れ、令嬢を抱き抱えて飛び立った。
ゴクリッ
『冷や汗が止まらない… 何が起きたんだ… あの咆哮は龍人が本気でキレた時のやつだった… まさか…』
リックは慌てて、龍騎士の詰所に向かった…
「お前馬鹿だな… 知らなかったのか?スカーレット家の令嬢の事。まあお前はアンソニー様の護衛したことないもんなぁ」
同僚の龍人は「お前殺されるぞ」なんて笑いながら話してるけど、なら最初から教えてくれよ…マジで怖かったドラグン隊長。
同僚の話では、ドラグン隊長は明らかにスカーレット令嬢に好意があるのに、令嬢を拒み続けていたらしい。騎士団では有名な話だが、隊長があまりにも怖いので口には出せなかったと言う…
隊長は巡回途中で急に狂ったかのように、目の色を変え上空へ飛び立ったらしい。
スカーレット令嬢はドラグン隊長のツガイだったに違いないと言うことだった…
『死んだな…』
リックは顔を真っ青にしてその場を暫く動く事ができないでいた…
「ドラグン隊長がツガイ届けを持ってきた!」
そんな声が辺りに響いた…
『遂にドラグン隊長が来た…』
リックはバクバクと鳴る心臓をぎゅっと抑え、その時を待つ…
「リックはいるか?」
「は、はいっ!ここに居ます。ドラグン隊長」
『殺される…』
隊長の目は明らかに怒っている。ああっ…どうして私は声をかけてしまったのだろう…
「お前には特別メニューを用意した。私が休んでいる間、そのメニューをこなすように!いいな?」
「は、はいっ!ありがとうございます」
「本当は八つ裂きにしてやりたいのだが… 獣人からマリーを守ってくれたと聞いている。次は無いぞ?分かったか!」
「はい!心得ています!」
隊長はそれだけ言うと、部屋から出ていった。
「良かったなぁ。あれくらいで済んで」
「ああ、本当に…」
『明日から頑張ろう…』
そう思うリックであった。




