30話
『見つけた!リード様だ』最近 試作品で作った双眼鏡を覗き込むマリー。アンソニーが授業中、アルフリードは校内の見回りをしている。バレない様に距離をとることを考え付いたマリーはドルゲスさんに無理を言って作って貰ったのだ。
「かっこいい。リード様~ 横から見ても前から見てもかっこいいわぁ~」
屋上から中庭の見回りをしているアルフリードを見つめるマリー。
「そこで何やってんだ?」
「な!何しに来たのよ!今は授業中よ!」
集中していて全く気づかなかった。マリーの後ろにはザックが立っていた。
「お前が言えるセリフかよ。なぁ、それだろ?最近親父と作ってた試作品。ちょっと俺にも貸せよ!」
「嫌よ!今いい所なの、邪魔しないで!」
「何見てたんだ?見せてみろよ!」
「やだ!向こう行って…」
「少しくらいいいじゃん。なぁ、頼むよ…」
「嫌なものは嫌!後で貸すから今はどっか行ってよ!」
その時、屋上に繋がるドアが勢いよく開いた。
「そこで何をやっている!んっ?マリー嬢?」
「アルフリード様…」
『最悪だ… リード様に見つかるなんて… リード様を見てた事がバレたら… あわわっ』
「2人で何をやっている?今は授業中ではないのか?」
「ちょっと、気分が優れなくて風に当たりに…」
「そちらの彼は確か カーネリア…」
「カーネリア・ザックです。龍騎士のドラグン・アルフリード様ですよね。宜しくお願いします。」
「こちらこそ宜しく頼む。で、2人で何を騒いでいる?」
「私とマリーは幼馴染みでして。とっても仲がいいんです。」
「ちょっ…」
「だから、2人の将来の話をしていました。」
「な、何でそんな…んっんっー!」
ザックに口を押さえられたマリー。
「だから、邪魔しないで貰えますか?」
「そうか… 将来の話をか… 邪魔してすまなかった。では、私はこれで… 」
アルフリードはマリーの方を見ること無くその場を後にした。
「離して!ひどい!!ひどいよ!リード様に誤解されちゃたじゃない!」
「リード様? あーあ、やっと分かった。お前が昔から【推しのリード様が】って言ってた奴があの龍騎士って訳か。」
「何よ!なんか文句あるわけ?あんたなんか大嫌い!」
「はっ、嫌い?そんなこと知ってるよ。お前が俺を昔から嫌ってた事くらいな…」
「じゃあ何で私に付きまとうのよ!私の事はほっといて!」
「ほっとけねぇ~んだよ!分かれよ!」
「分かれ?分かるわけないでしょ!」
マリーは目に涙を浮かべ、アルフリードを追った。しかし、龍騎士であるアルフリードに追い付ける訳もなく、探したけれど見つからなかった。アンソニーに聞いてはみたが、アルフリードは部下に護衛を任せて何処かへ行ってしまったようだった。
◆◆◆
『俺はどうしてしまったんだ…』先程、カーネリア・ザックの話を聞いてから自分の感情がコントロール出来ない。
「おい」
「はいっ!隊長なんですか?」
「私は少しここを抜ける。代わりのものを2人寄越すから後は頼んだそ!」
「はいっ!分かりました。お任せください!」
アルフリードは背中から羽を出すと空へと舞い上がった。『くそっ、なんなんだ… 気持ち悪い…』
怒り、悲しみ、苦しみ、そして安堵… アルフリードは自分の中にたくさんの感情が沸き上がる事に恐怖した。
◆◆◆
「マリー、元気ないわねぇ…」
「何か私達に出きることないかな?」
ここ何日かマリーは元気がない… これ程までに落ち込むのは大抵アルフリード関係だ。そう思ったオゼットとローズは原因を探ろうとアンソニーに聞いてみたが、アンソニーも知らず、アルフリード本人は何故か数日の休暇を取ったらしい。アルフリードが休暇を取ることは今までに一度もなく、アンソニーも驚いているようだった。
「ねぇ、マリー?」
「ん~?」
「週末3人で遊びに行かない?」
「う~ん。」
「では、決まりね!」
◆◆◆
「ねぇ、なにがあったか聞いていい?」
3人は今、人気のハンバーガー屋に来ている。勿論、マリーが出したお店だ。マリーは重たい口を開き、屋上での事を話し始めた…
「やっぱり、ザック様はマリーの事が好きなんじゃない!」
「違うと思う… 昔から私をからかうのが好きだったからその延長でしょ…」
「でも、今の話を聞いていると… まあいいわ。ザック様は置いといて、今はアルフリードね!もし、ザック様の話を聞いてアルフリードが仕事を休んでるとしたら… もしかしてアルフリードはマリーに気があるんじゃない?」
「ま、まさか!」
マリーの心臓が跳ねた。『そんなこと絶対に有り得ない…』
「直接聞くのが一番ね!」
「聞けるわけない…」
「なら、抱きついてみたら?」
「な、な、な、な、なんでそうなるの!」
「アルフリードはねぇ、あの見た目でしょ~とてもモテるのよ。だから昔から彼に近付こうとたくさんの令嬢達がアプローチしてたわ。だけど、彼は一切触らせなかった。全て避けていたわ。だからもし、貴女に気があるとしたら…」
「えっ!私 結構アルフリード様 触ってるよ?」
「でもそれは、仕事だとか、助けるためにでしょ?そうではなくて純粋に好意でよ。それで分かるわ」
「成る程… なら私やってみる!この間、腕に掴まれたんだもの。多分出きるよ!多分…」
「頑張ってみなさいな。」
『よ~し!やってやる!ついでに誤解も解けたら嬉しいな』そう思うマリーであった。




