3話
「マルクス公爵令嬢様…」
「わたくしたちはクラスメイトよ。オゼットと呼んでくださる?」
「オ、オゼット様。私はスカーレット・マリーと申します」
「宜しくね。マリー」
『まさか公爵家から身分が下な伯爵家の私に話し掛けてくるとは思ってもみなかった…モブAでいく予定が取り巻きAになりそうだ…』
オゼットは想像してたより気さくで話しやすかった。やはり、悪いのは取り巻き達なのだ…
授業が終わり、寮へ戻るとなんと隣の部屋の住人はローズだった。
「こんにちは。確か同じクラスですよね?私 ハイアーン・ローズと申します。宜しくお願いします」
「私はスカーレット・マリーよ。宜しくね。マリーと呼んでね」
「マリー様!私はローズとお呼びください」
『な、なんと!これは偶然なのかそれとも必然なのか…今度は友達Aになりそうだ…』
◆◆◆
「おはようございます。マリー様」
「お、おはようございます。ローズ様」
『あれ?今日は遅刻寸前のローズが慌てて廊下を走って、アンソニー王子とぶつかるシーンがあるはずじゃ… そのために、早起きしてスタンバイする予定だったのに…』
「マリー様、ご一緒しても宜しいですか?」
「ええっ、ローズ様今日は随分とお早い登校ですね」
「マリー様とご一緒したくて、早起きしました!ご迷惑ですか?」
「い、いえ、そういうわけでは… では行きましょう」
「はいっ!」
『どうなっているの?バグが発生した?』
◆◆◆
「おはようございます。オゼット様」
「おはよう、マリー…とローズさんであってるかしら?」
「は、はい!ハイアーン・ローズと申します。宜しくお願いします」
「マルクス・オゼットよ。宜しくね」
『この2人が挨拶し合うなんて漫画では無かった展開… 本当にどうなってるの?』
「やあ、おはよう。なんだか、面白い組み合わせだね オゼット」
「おはようございます。アンソニー様、アルフリード様 そうなんですの、お二人とも可愛らしくて話しやすいのよ」
『で、で、で、で、でたーー!油断した所にリード様!!?眩しー 目が開けられない!!』
「どうしたのですか?マリー様?」
心配そうに見つめるローズ。その声に反応し、皆がマリーに注目する。勿論アルフリードも…
「け…」
「け?」
「け、け…」
「けけ?」
「け、け、け、化粧室に行って参ります!!!」
言葉と同時に立ち上がり、淑女にあるまじきスピードでトイレへと向かったマリー。
「ねっ、可愛らしいでしょう?」
「本当だね」
アンソニーとオゼットはクスクスと笑い合う。
心配そうな顔のローズ、アルフリードは何故か眉間にシワを寄せていた。
◆◆◆
「う、リード様の前でなんたる失態…」
やっと落ち着きを取り戻し、教室がある方へと足を進めると、反対側からリードの姿が見えた。
『わ、わ、わ、わ!リード様が近付いてくる!!』
マリーはクルっと回れ右すると、早足で来た道を引き返す。チラッと後ろを確認すると何故だかアルフリードも早足で付いてくる。『嘘、嘘、嘘!?』
「おい、何故逃げる?」
「逃げてません!」
「では、止まれ!」
「止まれません!」
「何を考えている?」
「何も考えてません!失礼します」
なんとか女子トイレに逃げ込む事ができた。
『無理、無理、無理!リード様と面と向かって話すなんて絶対に無理ーー!…… でも、リード様と追い駆けっこしちゃった♡』余韻に浸り、暫くトイレから出られなかったため、遅刻し、怒られると思っていたが、教室に戻ると体調不良と言うことになっていた。『みんなありがとー!』
◆◆◆
「アンソニー様、こちらがローズ嬢に関する調査報告です」
「ありがとう。アルフリード」
「いえ、所でマリーとか言う令嬢は怪しくないですか?」
「どこら辺が?」
「行動全てです」
「そうかな?私には分からないけど?」
「念のため、お気を付け下さい!」
「アルフリードはさ… 普段は鋭いのに変に鈍いね」
「意味が分かりません」
「そのうち分かるよ… では、帰るとするか…」
アンソニーは楽しそうに馬車に乗り込むのだった…