2話
「や、やりましたわ!合格しました」
「よくやった!マリー、流石我が子」
「お父様、ありがとうございます。一つお願いがあるのですが…」
「なんだ?言ってみろ」
「はいっ!学園の寮に入りたいのです。許可して頂けますか?」
「う~んっ、マリーは良く頑張ったからなぁ~、よし!許可しよう!その代わり異性交遊は禁止だからな?」
「分かっております。ありがとうございます!お父様」
『やったー、これで夕方以降にある2人のイベントを覗きに行けるぞ!王子居るところにリード様有り!だもんね。それと、悪役令嬢であるマルクス・オゼット公爵令嬢…彼女を助けられないかな?卒業パーティーでアンソニー王子に断罪婚約破棄されちゃうんだけど、ほとんどが無実の罪…オゼット様の取り巻きの令嬢達が勝手にやったことなのに全てオゼット様のせいになってしまう…実は他に好きな人が居て、断罪されると修道院送りにされちゃうんだよね… どうせなら好きな人と結ばれてほしい。あのシーンは何度見ても泣けちゃうのよね~』
期待とちょっぴり恋心を膨らませ、荷造りをするのだった…
◆◆◆
『そろそろ時間だわ…』
入学式当日、今日は朝早く起きて誰よりも早く学園の校門前で待機中。だって今日は待ちに待った主人公ローズとアンソニー王子の出会いイベントの日!!
緊張して眠れなかったローズは時間より早めに学園に向かい、校門前で目眩をおこし、倒れそうになる所を首席入学で代表挨拶をするため早く来たアンソニー王子に助けられるのよね~ くっー楽しみ~。
『き、きたー!』
「はぁー、お父様に命令されて仕方なく王立学園を受けたけれど…私みたいな市井で育った者がくるところじゃないわよね…」
ストロベリーブロンドに青い瞳、くりくりした大きな目には影を作る程に長い睫毛がはえている。プクッと膨らんだ唇と胸は何とも魅惑的だ。
ローズは10歳まで市井で育った。ローズの実の父親は市井出身でローズの母親はハイアーン家の娘だった。2人は駆け落ちの末、ローズを出産し、順風満帆に暮らしていたが、ローズが10歳になる時、交通事故で2人とも亡くなってしまう。そんなローズを引き取ったのがハイアーン男爵家当主 ローズの母の兄だった。
「まだ、誰もいない… 私、早く来すぎたのかしら?うっ、なんだか気持ち悪い…あっ…… 」
「大丈夫ですか?」
後ろから抱き止める形でアンソニー王子が現れる。
「あ、ありがとうございます」
「気分が悪いのかな?保健室まで付き添うよ」
「い、いえ… 一人で大丈夫です。本当にありがとうございます。では、失礼いたします」
ローズは素早くお辞儀をすると、走って校内へと消えていく。
「あれだけ元気なら大丈夫だね、では急ごうかアルフリード」
「はい」
『きた、きた、きたーーっ!!愛しのリード様~
ああ~遠くからでも分かるオーラと気品!!もう素敵~ あれ?今、一瞬リード様こっち見た?訳ないか… 頑張ったかい有ったわ~』
余韻に浸り、しばらくその場を動けなかった。
◆◆◆
「おいっ」
「はい、ドラグン隊長。お呼びですか?」
「あそこの影にいる女子生徒を調べておけ」
「はっ!」
「アルフリード、何かあったのかい?」
「いえ、何でもありません。アンソニー様 急ぎましょう」
「そうだね。所で先程のストロベリーブロンドの女性の事、調べておいてくれるかい?」
「はいっ、すぐにでも」
「ありがとう。頼んだよ」
◆◆◆
『はっ!いつの間にかこんな時間に…リード様かっこよかったなぁ~って遅刻しちゃう!?急がなくっちゃ』体育館にはもうたくさんの人が集まっている。
『私の席はAクラスの… あった!あの席だ。今日からアンソニー王子とローズと同じクラス。クラスは成績順。頑張ってよかったぁ、後このクラスにはオゼットも居るんだっけ』
席に着くと同時に入学式が始まる。
着々と進んでいき、次は新入生代表挨拶。
『このシーンはローズがさっき助けてくれた人が王子だと知り、あたふたするシーンなんだよね。ちょうど私の斜め前にいるから間近で見放題 ひゃほー 流石ヒロイン可愛いなぁ~』
◆◆◆
クラスに別れ、自己紹介が始まる。
『オゼット発見!ストレートロングの赤髪に紫色の瞳。少しつり上がった切れ長の目の横にはほくろが一つ。大きな胸に引き締まった細いウエスト。まさに悪役令嬢!魅惑のボディー この後 自由時間にアンソニー王子がローズに話し掛ける事でローズは令嬢達に目をつけられる事になる…』
ローズは私の席の斜め後ろ。耳を立ててその時を今か今かと待つ。
「やぁ、今朝は大丈夫だったかい?」
『きたーっ!』
「はい、ありがとうございます。殿下とは知らず、失礼致しました」
「やはりな、君は私の事を知らないようだったから新鮮だったよ」
「世間知らずで申し訳ありません… どうか、お許しを…」
「学園では全ての者が平等だよ。君も私を王子だと思わず、クラスメイトとして気楽に接して欲しい」
「ありがとうございます」
『仲良さそうに話している2人。漫画では分からなかったけど…周りの女子コワッ!!顔が… これでローズへのいじめが始まるのか… どうやって阻止しよう…』
「貴女…」
「へっ?」
急に話し掛けられ、話し掛けてきた人物に目を向けると… 『オ、オゼット!』ローズに意識を向けてたからぜんぜん気付かなかった…
「貴女一人?良かったらわたくしの話し相手になってくださる?」
『ま、まさか公爵令嬢のオゼットの方から話しかけてくるなんて… 私、この後どうなっちゃうの!?』