12話
あっと言う間に一年が立ち、無事進級テストにも合格した。2年になったのだ。またみんな同じクラスになれてホッとしている。
「もうすぐ一大イベント【学園祭】の季節ね。2年に一度だからいつも盛大にやっているそうよ」
『はいっ、お決まりの学園祭イベント来ました~。確かオゼットにいじめられてクラス出し物から追い出されたローズは1人で学園祭を回る。そこに偶然を装ったアンソニーが現れて一緒に回るのよねぇ~ 一緒にわたあめ食べたりして、アンソニーがあーんってローズに食べさせてあげるんだよ!キャー見たいわぁ』
「ちょっとマリー聞いてる?何ニヤニヤしてるのよ」
「あ、ごめん。聞いてなかった」
「やっぱりね…クラス出し物を決めなくちゃいけないんだけど、クラス総意でわたくしとアンソニーで決めて欲しいって事になったみたいなのよ…」
「いつそんな話出たっけ?」
「昨日よ!貴女大丈夫?」
「マリーは何か考え事をしていたようです。ボーッとしてました」
『ローズ、段々とオゼットに似てきたな… 昨日か…あっ、今度売り出すコスプレのデザイン考えてた時かも』
「全く… それで、貴女達にも意見を聞きたいのよ。わたくしは劇がいいかなぁと思っているのよ」
「劇ねぇ~」
『確かに、劇なら言わばコスプレ。王立学園祭は多くの貴族がいっぺんに集まるかっこうの宣伝場!!チャンスはいかさないと』
「クラスでカフェなんてどうですか?手作りのお菓子を作ってお出しするのです」
「それもいいわね~でも、誰かお菓子を作れる人がいるのかしら?」
「私が… 少しなら作れます」
「まあ、ローズが!なら、カフェに決まりね!アンソニーにも伝えなくっちゃ」
「ちょっと待って!!そのカフェに使用するもの全てを我がアリア商会に任せて貰えない?私、自分では作れないけどお菓子のレシピ沢山知ってるのよ。それをここで作って売り出すのはどうかな?好評なら商会から売り出せるし、是非やらせて欲しいの。あと、厳選したコーヒーや紅茶、100パーセントフルーツジュースなんかも用意するわ。欲しい人には買っていけるようにコーヒー豆や茶葉も用意する。どうかな?」
「貴女やり手ね。乗ったわ!完璧よ」
「後、みんなが着る服もこちらで用意するから任せて!名付けて【コスプレ喫茶】よ!」
「コスプレ?なんか怪しいわね…貴女、何か企んでない?」
「フフフッ!金のにおいがプンプンしてるわ」
「…… 」
「マリー、頼もしいです」
「まあ、いいわ。貴女に任せるわよ。アンソニーにはわたくしから伝えとくわ」
「ありがとうございまーす」
◆◆◆
「アンソニー様、これが調査報告になります」
「ありがとう、アルフリード。どれどれ?私の部屋には異常無し、メイドとスカーレット家の繋がりも無しと。な、何!?アリア商会とスカーレット家が共同経営をしているだと!しかも、ヒット商品全てがスカーレット家から発案されたものだったとは…と、いうことはカメラもか…」
「こちらが関係してくるのではないかと…これは凄い人気でやっと手に入ったものです」
アルフリードは一冊の本をアンソニーに手渡す。
「こ、これは…」
「今、大流行中のミニスカートなるものが載っている雑誌と呼ばれている本です」
「か、可愛い… あ、ごほんっ!これは私が貰っても?」
「勿論です」
「成る程、こうなるとマリー嬢の関与は免れないな。しかし、オゼットもひどいな、こんな秘密を私に隠すなんて…」
◆◆◆
「アンソニー、今時間ある?」
「おや、珍しい。王太子妃修行の帰りに君が私の所に寄るなんて。ちょうどいい。私も君に用があったのだよ。休憩にする。お茶の用意を」
アンソニーとオゼットは向かい合う形でソファーに座る。
「君の話はなんだい?」
「ええ、学園祭のクラス出し物の話なの。貴方わたくしに全部決めていいって言ったじゃない?それで、マリーとローズに相談したのよ。そしたら、ローズがカフェがいいんじゃないかって。わたくしもマリーもその意見に賛成して決まったのだけれど…マリーが名前は【コスプレ喫茶】に決めちゃったのよね」
「コスプレ?喫茶?両方聞かない名前だね」
「そうなのよ!喫茶はまあカフェみたいなものらしいんだけど、問題はコスプレよ!どうも怪しいのよね。しかも、全ての準備はマリーが1人でするらしいわ」
「1人で!?それは可能なのか?」
「う~ん。結論から言うと可能ね。彼女なら完璧に仕上げてくるわ」
「それはこの雑誌に関係してくるかな?」
アンソニーは一冊の雑誌を大切そうに机の上に置いた。
「貴方!それどこで手に入れたの!?はぁー見られてしまったらな仕方ないわね。全て話すわ」
オゼットはアリア商会とマリーの繋がりの事、撮影の事、そして今回の学園祭の事を話した。
「成る程、それで君達は揃ってカメラを持っていた訳だ」
「そうなのよ。ホントマリーは凄いわね」
「なら、学園祭はマリー嬢に任せてみよう。お手並み拝見としましょうか」
アンソニーは緩やかに口先を吊り上げた。