11話
ローズが早退してから3日が立つ。
「それでね…」
「えっー信じられない!」
「だからでしたのねぇ」
『あーいつまで続くのかなこの会話…もはや、無よ!無の状態よ!』ちらっとオゼットの方を見ると、『嘘!?オゼットめっちゃ怒ってる。顔、顔!!口は笑っているけど目付きがヤバいよ』
「ちょっと聞いていますのマリー様」
「あ、少し聞き逃してしまいましたわ」
「だからね、ローズ様は市井育ちなのよ。聞いた話だと、10歳まで市井で暮らしていたんですって!」
「だからなのねぇ~少しわたくしたちとは違うもの」
「まあ、アマンダ様もそう思いましたか!わたくしもそう思ってたんですのよ」
『あー、オゼット良く我慢してたな。それであの顔…よし、反撃してやる』
「まあ、そうだったのですね。私ますますローズのことを見直しましたわ。だって、彼女 成績学年2位なんですのよ~わたくし達みたいに小さい頃からずっと勉強していた訳じゃないのに」
「それにローズは美しいわ。この中の何人がローズの美しさに勝てるのかしら?」
「「「うっ…」」」
「も、もう行きましょう。ごきげんよう、オゼット様、マリー様」
3人は逃げるようにその場を去っていく。
「あ、思い出した!取り巻きABCだ」
「取り巻き… なんですって?」
「あ、いや、こっちの話」
3人を追い払ったし、取り巻きのことも思い出したし、なんだかスッキリした気分で食事を続けるのだった。
◆◆◆
「ご迷惑をおかけしました…」
「もう大丈夫なの?顔色は良さそうだけれど…」
「ええ、もうすっかり良くなりました」
「やっと戻ってきたー!ローズ寂しかったよ」
「まあまあ、マリーったら」
いつもの日常を取り戻した3人であった。
◆◆◆
「ねぇ、ちょっと小耳に挟んだのだけれど、マリー貴女ご実家を使って何か事業を始めたのかしら?」
「フフフッよくぞ聞いてくれました。流石オゼット、耳が早い」
「ま、まあね。オホホホッ」
『よっ!悪役令嬢~』
「実は最近アリア商会と連携して商品を売り出しているんです。その中にはこの間 2人にあげたスパッツやスポーツブラもありますよ~後、最近出来たジャガイモという野菜を使ったフライドポテトが大人気で!1年先まで予約で一杯なんです。お陰でうちの財政はウハウハですよ。あはははッ笑いが止まらない」
「もう、マリーは下品ね…所で聞きましたわ。そのフライドポテト?なるものが絶妙の塩加減でまさに止まらない美味しさだとか…」
「まさにその通りです!」
「私食べてみたいです!」
「マリー、わたくし達友達よね?少しくらい分けてくれるわよね?」
「そうくると思ってました!2人が私のお願いを聞いてくれたら考えます」
「マリーのくせに中々やるわね。で、お願いって何よ」
「2人にはモデルになって貰いたいのです。勿論、フライドポテトだけじゃなく、新商品のフライドチキンも付けちゃいます。どうですか?」
「そのモデル?って何をするんですか?」
「ローズ、いいところに気がつきましたね。私が指定した服を着てポーズを取るだけです」
「それだけ?」
「はい、後はこちらに任せて下さい!では、交渉成立で宜しいですね?」
「ちょっと貴女悪い顔してるわよ…まあ、いいわ。やるわよ」
「私もやります、フライドポテト楽しみです」
「では、オゼットはジョルズ様も誘って下さいね」
「別にいいけど、何故ジョルズが必要なの?」
「男性モデルをやって貰います。では、今週末迎えに行くので宜しくお願いしますね~」
◆◆◆
「ようこそ、お越しくださいました。わたくし、アリア商会のカーネリア・ドルゲスと申します。どうぞお見知りおきを…それにしてもマリー様、素晴らしいお友達をお持ちで。まさにモデルに相応しい」
「でしょ~モデルを頼むならこの2人しかいないと思ったのよ!ジョルズ様も凄い筋肉でしょ。どう、男性から見て」
「まさに理想の体型ですね。羨ましい」
「でしょ~はい、準備始めて!」
ドルゲスさんが連れてきた撮影スタッフがテキパキと準備を始める。
「さっ、オゼットとローズはあっちに用意してある服に着替えてきて。ジョルズ様はこっちね」
「貴女凄いわね。顔が商売人になってる」
『フフフッ何を隠そう私の前世の職業は雑誌編集者だったのよ。ファッションからグルメまで幅広く関わっていたから大体分かるし、この世界には雑誌その物がないからやりたい放題よ。とりあえず、写真を載せて使った服や食べたものをピックアップして値段をつけると… 最後にアリア商会の宣伝ね』
「な、何よ!この服、それにこの髪型に化粧!スカート短いし、口紅真っ赤よ」
「足がスウスウします」
「完璧!!まさに頼んでおいた通りね」
メイクアップスタッフにグーと親指を立てて合図を送ると向こうからも同じ合図が返ってきた。
「さっ、2人ともそこの丸いテーブルを囲うように座って。はい、ジョルズ様もボーとしてないで、座ってください」
真っ赤な顔をしてオゼットの足を見つめていたジョルズはマリーの声でハッと我に返ったようで慌てて椅子に座った。
「はい、そのままお喋りしてるかの様に…はい、撮って」
カシャカシャ
「ちょっと待って!貴女それカメラじゃないの!!貴重な魔石を使ったものだから滅多に手に入らないって…まさか!それも!」
「そうなんです!これもうちの商品なんですよ」
『良かった~一時期カメラマンに憧れて結構高いカメラ勢いで買っちゃって、分解して手入れするやつだったらそのお陰でなんとかカメラらしきものは作れたんだよね~』
「はいっ、次はフライドポテトを皆で食べて下さいね」
「んっ!これ美味しい。まさに手が止まらない…」
「ホント!いくらでも食べられます」
「んまいっ」
カシャカシャ
「次は、また着替えてきてください~」
『フフフッ今日は逃がさないよ~』
◆◆◆
「暗くなって来ましたので、おしまいにしまーす。お疲れ様でした」
「「お疲れ様でした」」
撮影スタッフはパッパと片付けていく。
「みんなありがとう!今日はいい写真が沢山撮れたよ」
「「疲れました~」」
「楽しかったな!」
後日、出来上がった雑誌一号と共にお礼にカメラをプレゼントした。オゼットとローズは「これが私!」と思っていた以上の出来前で大変喜んでくれた。ジョルズ様はカメラよりもフライドポテトが食べたかったようで、特別にフライドポテトも用意した。
雑誌は瞬く間に売れ、それと同時にミニスカートが大流行した。小金持ちから大金持ちになるまでそう遠くはないだろう…
「マリー、これあげるわ」
「えっ何?」
渡された物は一枚の写真だった。
『嘘!リード様!!格好いい』
「えっ、貰っていいの?後で、返してって言われても返さないよ?」
「言わないわよそんなこと。お礼よ…カメラ欲しかったの。ありがとう」
「ねぇ、後で3人で撮らない?」
「いいわねぇ。撮りましょう」
いつまでもこんな日が続きますように…
◆◆◆
「ねぇ、アルフリード。何故オゼットはカメラを持っているの?オゼットだけじゃない。ローズもジョルズだって持っていた。私だって欲しくて予約待ちなのに…」
「先日、オゼット様に変なものを向けられたのですが、それがカメラというものですか?」
「多分そう…」
「調べますか?」
「勿論調べてくれ…」
「はっ」
『何か見逃している気がする…』
格好つけているがアンソニーはただカメラが欲しくて堪らないだけだった。