ユウヤ 第二夜 4
ゆらゆら揺れそうな上体を、壁に背中を押し付けて制御しているかのような、それでも前後に軽く船を漕ぐのは止めようも無いのか、その人物はグッと上に向けた顎を突き出すような感じで三人を見下ろす仕草だ。
「ああぁ〜、気にしないで話しを続けたまえよ。何だか面白そうだ」
軽く首を傾げるが、平衡感覚さえ酔っているのだろう。そのまま壁の方へと上体が後退していく。
まるでコントに出てくる酔っ払いの仕草だ。
「あ、あの、伊藤先輩……多分に酔っていらっしゃるようですが……」
自分だって今まで酔っていただろうと言いたくなるが、熊山の態度は完全に酔いを醒ましてしまっているようだ。
ユウヤは、横目で確認はしたものの、敢えて何も口に出さず、冷やかな態度で湯呑みの中の酒を傾けている。
「酒呑んでんだ。酔わなくてどうするよ?」
熊山の一言が気に喰わなかったのか、それとも、完全に酔っているのか。その人物は、前のめりに倒れたようだったが、そのまま腕だけで身体を支えて、匍匐全身の要領で小上がりに昇ってきた。
テーブルの端で止まるかと思ったが、前進は止まらず、グイグイと進んで、ユウヤの座る膝元まで進んで、そのままユウヤの胡坐に手を掛けて乗りあがった。
今の状態で言えば、胡坐をかいたユウヤの膝の中に、頭を押し込んで膝枕状態な感じだ。
「あの…先輩……もう、お帰りになられた方が好いのでは?」
熊山の態度は、どう見ても恐れているような感じだ。言葉自体もタドタドしくて、スムーズな口調には程遠い。
「大きなお世話だよ。大体、愛美ちゃんとデートなんだろ? それが、こんなユウとなんかと一緒だなんて、愛美ちゃんに失礼だ」
矛先が自分に向いたと知って熊山の挙動は途端にアタフタとしたものになった。
愛美の方を向いたかと思うとユウヤを振り返り、何か言いたげに口を開いたかと思うと、二、三度口をパクパクさせて無言のままに眉を寄せてしまった。
「好い加減、お前も根性据えてみたらどうよ? 身を固めるのに、別段、何か障害があるわけでもないだろ? 男なんだから、そこんところ、はっきりさせなきゃなんない時期ってもん、考えろよ」
グッと奥歯を噛み締めるような顔付きになったのが、ユウヤの眼から見てもあからさまに見て取れる。
こんな態度の人物から説教をされたところで、それを素直に聞けという方が間違っているような気がしないでもないが、本心を言えば、ユウヤとてそう思っていなかったわけでは無いのが面白い。
が、このまま、酔っ払いの戯言を聞いているというのも、これで中々、ゾッとしない話だ。
「いい加減にしな。他人に説教できるほど偉くなったんなら、俺もそろそろお払い箱だろ?」
膝に乗った頭を軽く小突いて、眠そうな眼をこちらに向けさせた。このまま熊山に向けさせていたなら、言いがかりとも言えない論調を展開しかねない。
「誰のせいで、こんなことになってんだ? 偉そうにしてるのどっちだ? 少しは、あたしを労われ」
そう言われたのを薄く笑って受けながら、ユウヤは熊山に首を振って帰るよう即した。
渡りに船とは、こんなものだろう。
熊山は、ユウヤの意図を察してパッと顔色を明るくして愛美の腕を取った。
「いやぁ、伊藤先輩! すいませんがお先に失礼します!」
言うが早いか、サッサと立ち上がって愛美を引きずるように小上がりを出て行く始末だ。
「あ、あの、伊藤さん! また、今度!」
愛美の声は、引き戸のドアが閉まりかけたところでした。
「こら! ちょっと、待て! まだ、済んでない…」
「解放してやんなよ。あいつは、昔から優等生のあなたに苦手意識持ってんだ。いい加減なあいつにとって、あなたは眩しすぎるんだろうよ」
熊山の後を追うかのように起き上がりかけたのを引き戻して、再び自分の膝に戻った頭を軽く撫でた。
サラサラの髪は、辛うじて耳を隠す程度のショートヘアで、そこから丸く襟足を隠す程度。刈り上げていないというだけで、かなりギリギリの線ではある。
丸顔に近い輪郭だが、華奢な首筋がそんな印象を与えない。二重の切れ長の瞳に太い眉。鼻筋は、スッと通っているのだが、鼻自体が丸く小さいのがアンバランスに見える。
歳より幼く見えるのに、性格が生真面目のために無駄な体力を使うためだろう。近頃は、色黒だった肌が、くすんだように浅黒くなってきてる。
伊藤 加奈子。
『大城物産』の部長という肩書きだが、実質の取締役と誰もが認める人物だ。
「少し痩せたんじゃないか? 頭が軽いぜ」
頭を持ち上げて、体勢を直すように入れ替えた。今は、加奈子の上半身が胡坐をかいたユウヤの足の中に納まり、頭の部分は右足の太ももの付け根辺りにある。
「苦労してるからな。今日なんて、貫徹の挙句に誰かさんの仕事まで引き受ける始末だ。痩せもするよ」
恨めしげに見上げる瞳を、そっと顎の辺りに手を掛けることで答えた。
「まだ、部長なのか?」
見下ろす自分の眼が、細まってしまっている。
どうにも、この人と二人きりになってしまうと、意識下に埋めたはずの懐かしい感情が顔を出してしまいそうになる。
「そんなことないけど…。ただ、こうして二人切りってのも久し振りだから」
加奈子の眼が、ユウヤの顔から逸れた。気恥ずかしいような素振りではない。
きっと、細められたユウヤの視線から逃れたんだろう。
お互いに、遥か昔を懐かしんでしまう心は止められないのかもしれない。ただ、それに身を委ねるには、お互いが擦れ違ってきた年月は、一言では埋められないほどに永い。
「こうしてると、あの頃のままのユウなのに。……熊山には、今でも元に戻れない?」
瞳を閉じて、軽くユウヤの腰に顔を埋める加奈子は、所在無さげに右手を宙に浮かせた。それをユウヤは、右手に捕まえて、そっと降ろした。
「……あいつだって、全部が全部、本当の自分じゃないさ。お互いに見せられる部分だけを見せながら、中身に頷いてるんだ。悪い関係じゃないよ」
言われてみたところで、今のユウヤが変われるわけも無く、言うユウヤにとっても、熊山だけでは無く、加奈子にだって以前の通りに接しているとも思い難い。
ただ、以前のユウヤであったなら、こうしていただろうという記憶を辿っているに過ぎない。
それを、わざわざ口にしようとは思わないが…。
「…それより、どうして疲れてんのに、ここで呑んでるんだ?」
降ろされた手をユウヤの腰に巻き付けて身体を横にする加奈子は、もう片方の腕も巻き付けて抱きつくような形になっていた。
「愛美に聞いてたからね。隣で拝聴しながら呑んでたの。お蔭で予想以上に呑んじゃった」
「面白がるなって言ったぞ」
「ばっかねぇ〜。ユウのことを知るのは、あたしの役目なのよ。もう、遠い過去のことも、そしてこれからの未来も」
今では、完全に眼を閉じてしまっている加奈子は、油断するとそのまま寝入ってしまいそうな口調だ。
「変な理屈を当然のように言うな。お互い大人なんだから、個人的な生活くらい尊重しろよ」
寝てしまわれては困る…はずなのだが、ユウヤには加奈子のそんな無防備な姿が好ましくもある。自分以外にこんな痴態を見せることなど無いと知っているし、何より会社とのギャップは笑えるほど大きい。
「何言ってんの。ユウが、元のユウに戻る第一歩を踏み出したんじゃない。それだけでも貴重なことだもん。相手が、あたしじゃ無いってのが、ちょっと残念だけど」
ぎゅっと力を込めてくる腕に、なんとなく苦笑いしてる自分が、複雑な気分になっている。
そうであって欲しいと思う事も、そうであるわけがないと思う事も当然のことで、そう成り得ないことが分かっているだけに、加奈子の言葉は重くもあって、冗談のように軽くもある。
「元の俺だなんて、今更、思い出せないよ。大体、お…あなたと俺に、これからを考えるには無理があり過ぎるだろ」
「……もう、そろそろ、素直になっても良いんじゃないの?ってこと。二人の時くらい『お前』って呼ばれても怒らないよ」
「そうかも知れないけど……なんか、俺の中では許されない気がするんだよ」
ユウヤの脇腹あたりに埋めていた顔を上げた加奈子の顔は、薄く笑っているようで、それでいて半分が悲しそうな表情に見えた。
ユウヤに至っては、どんな顔をしているのかさえ、自分でも分からない。それでも、きっと同じような感じじゃないかと思える。
「で? ユウを男にしたってのは、どんな娘?」
気分を変えたのか、それとも居心地が悪くなったのか、加奈子はユウヤの右足に置いた頭を身体ごと反転して左足に持っていった。体制的には変わらないが、ユウヤの本音では、そろそろ右足が痺れてきていたところだっただけに、助かったと言える。
「あなたまで聞くの? 俺の勝手だと思うんだが」
溜め息ともいえない短い吐息が漏れた。
結局、興味本位にされてしまう。心配してくれているのか、面白がっているのか。
「どの位あたしと違うのかと思って。……ユウ、あんた、まさか那美と似てるなんて娘じゃないでしょうね?」
グッと力が込もる加奈子の眼が、真下から見詰めてきた。が、ユウヤには、ちょっと渋い顔を返すくらいで、これといった表情を作る必要性は感じられない。
「そこまで行くと懐古的というより妄執って感じだろ? まぁ、大して変わりないかもしれないけど」
「あんた! 本気で言ってる!?」
勢いで出たんだろう。加奈子の右手がスッと上がって、ユウヤの襟元を引っ掴んだ。
それでも、ユウヤの手が、軽く加奈子の顎辺りを撫でると、加奈子は手を離して、その手で拳を作ってユウヤの胸を一度軽く叩いた。
「心配しなくても、似ても似つかないよ。若いし、怒ってたかと思うと笑ってるし。普段はしっかりしてそうなくせに、変に大事なところでズボラみたいだし。それでいて、ちゃんとこっちの心の中を覗き込んできやがる。格好良く見せようとして怒られるんじゃ、こっちのペースなんて作れるもんじゃない」
「ふ〜ん。天然系? ユウが振り回されるなんて信じられないけど」
相槌を打たれて気が付いた。
結局、今朝、加奈子に言われたように報告してしまっている。酒のせいだと思いたいが、自分のどこかが、他人に言いたくて仕方ないのかもしれないと思うと、少しだけ恥ずかしく思えてきた。
「自分でも変に思うよ。何処か素朴で牧歌的な印象があるくせに、逐一、俺の内面を探ろうと必死になってるにたいで。放っておけばいいんだろうけど、下心の無い純粋さみたいなもんが、なんだか鼻に付いて…。つい、こっちもムキになっちまう。その末路としては、陳腐だろ?」
「ユウ以外ならね。あの時から、心をどっかに置き忘れてきたようなユウになら、きっと神様が齎した出会いなんじゃない? 良いチャンスだと思わなきゃ」
気だるそうになったように加奈子は、もう一度ユウヤの腰を抱くようにして眼を閉じた。
先程と違うのは、膝を丸めて小さくなるようにしている。
「神様も仏様もこの世になんかあるもんか」
吐き捨てるように言うユウヤを薄目を開けて見る加奈子は、ほんの少しだけ抱きつく腕に力を込めたようだった。
「無信心者になったんだっけ? でも、無意味に神は試練をお与えにならないって言うよ」
「幸せな人間が言ったゴタクだな。因果応報ってのは、幸せな人間にしか当てはまらない。事故や天災で死んだ人間にそれが言えるのか? ましてや戦争、内戦なんかで巻き添えになった奴等は、良い面の皮だったなんて誰が言える? 人間が蔓延った世界で生存圏を奪われた動植物も、甘んじてそれを受け入れるのか? 自分しか見えてない理屈に、正当性を持って頷けるのは、馬鹿な人間のエゴだ」
仕方ないわねとでも言いたげな加奈子の口元は、尖らせたように突き出している。ふうっと吐き出す吐息も、溜め息というより母親の慈愛にも似たものであったかもしれない。
「ねぇ、ユウ。ユウが言うことも確かにその通りだと思うよ。でもね、ユウが生きてることは、ユウ一人でどうにかしてきたことって少ないでしょ? 誰かと関わって、仕事も遊びも誰かと一緒だったり、手を借りたり…。自分だけが意図した通りに人生を歩いてるなんて思えないでしょ? あたしも都合よく神様なんて言うけど、本当にそうだなんて思ってないよ。ただ、そう考えてみても、誰も傷付いたりしないでしょ? もし、神の手があるんなら、都合の良いことも悪いことも、そのせいにしてしまって、自分の重荷を軽く出来るんなら容認しても良いんじゃない?」
言われたユウヤは、ほんの一瞬だけ痛々しい表情を露にした。が、すぐさま、すっと眼を細めて、そんな陰りさえ無かったように表情を変えた。
「俺には、神様なんかより、あなたを信じた方がよっぽどマシに思えるよ」
「その言葉の割には、あたしの距離は一向に縮まらないんじゃないの?」
お腹辺りの肉を捻る加奈子の指は、それほど力のこもったものでは無い。どちらかと言えば、じゃれあう程度の甘噛み程度のものだ。
「拒んだのは、そっちが先だろ? まぁ、俺も辛抱できなかったんだから、あなたを責めることなんて出来ないけど。……若いって怖いな」
「……お互い、初めてだったんだから、仕方ないって言えばそれまでよね。あたしも後悔することはあるよ。ユウが初めての人だったら、きっと今は、お互いに幸せなんじゃないかってね」
そっと背中に回された手を暖かく感じるユウヤだったが、既に答える言葉があるようには思えない。
ずっとずっと、昔のことに思えるのは、経験や時間なんかじゃなく、きっと、ユウヤの心が、あの当時より離れてしまっているからだろう。
「…一度、聞きたかったんだけど」
「なに?」
「俺とあなたで、これからの未来ってこと語ったこと無かったろ? それって、あなたには、考えられることなのかな?」
指先でそっと加奈子の顎辺りを撫でていると、くすぐったそうに首を竦める。
きっと昔ならば、そんな行為も自然だったんだろうが、今では真似事のように感じてしまうのも事実なのが、ユウヤにとっては少し悲しかった。
「どうなんだろうね? 答えたい気持ちもあるし、仕事を共にする仲間って気持ちもあるし。割り切れるほど他人じゃないし、かといって、知り過ぎてるってのもあるし…」
眠たげに眼を閉じる加奈子は、それだけ言って軽い吐息を吐き出してしまった。
そんな様子を見ながら、ユウヤは苦笑いするしかなかった。
加奈子を好きな気持ちが『今は無い』と言うには、心のどこかが否定する。が、過去と割り切ってしまっていないわけでもない。これからの未来を考えるのに、加奈子と一緒と考えることも無しだとは思わないけれど、違和感が無いとは到底言えない。
つまりは、過去を懐かしむ関係であって、これからを作り上げるには、また違った覚悟が必要な二人なんだと再認識させられるのだ。
顎の辺りに置いた手を、鎖骨辺りにまで滑らせる。
異様なほどに脈打つ鼓動が感じられて、ちょっと驚いた。
どういうわけなのか、加奈子の動脈の拍動は、皮膚に近いと以前に聞いた。
こうして皮膚に触れると、酔った身体が如実に語り掛けて来るのを感じてしまう。
ドキドキという、確かに打ち付ける鼓動は、ユウヤの手の平に切ない程の命の有り様を伝えてくる。
そう考えると、無邪気に眠る顔付きに腹が立ちそうになる。
鼻でも摘んでやろうかと思った瞬間に、胸ポケットに入れていた携帯が震え出した。
音は出ない。バイブレーション機能にしたままだ。とはいえ、ユウヤの携帯が音を発するのは、年に数回あれば良い方なのだが。
そっと、出来るだけ悟られないように携帯を取り出したユウヤは、パネルを一瞬だけ見て通話ボタンを押した。
そのまま、何も言わずに耳に押し当てる。
「も、もしもし!! ユウさん!! 俺っす! エマージェンシーっす!!!」
分かってはいたものの、耳に痛い怒鳴り声は、ユウヤの首を少なからず竦めさせた。
「和馬…もう少し、静かに。そして、詳しく完結に用件を言え」
囁くような響きで、それでいて怖音が響くようなユウヤの声に、和馬と呼ばれた相手も、僅かながらに息を呑んだような気配がした。
「すんません…。流通系が死にました。契約してた『ネズミ便』が契約破棄を理由に、午後からの集配を拒否してきまして、夕方の分が扱われてません。このままじゃ、明後日の鹿児島物産展が飛びます。何度、抗議しても、今後の取引は受け入れてもらえないってことで…。理由も言わないんですよ。どうしたら良いものだか…」
言葉を選んではいるものの、和馬の心境は限界に近いのだろう。
何度も苦心の末を試みて、粗末な結果になってしまったのを恥じてもいるんだろうが、取引き先の営業ならば無理を承知で赤字でも纏めてきたろうが、流通となってはそうはいかなかったのかもしれない。
「…どんな具合だ?」
加奈子の寝息に合わせるように耳元に手を持っていく。
片方しか塞げないが、会話のやり取りを聞き取れるとは思えない。
完全に塞いでしまうと耳鳴りに違和感を覚えてしまうし、自分の吐息すら反響してうるさく聞こえてしまう。
優しく撫でるように、髪を弄りながら、ユウヤの意識は酔いを醒ますように携帯に集中し始めていた。
「代替も無理でした。大手の運送屋は、どういうわけか動いてくれません。色んな理由を付けて断ってきます」
「時間的余裕は?」
「あと四時間でフェリーの最終が出ます。これを逃すと明日の朝になって、どう頑張っても鹿児島着が昼過ぎになります。関西以降の皮切りに、出店出来ないなんて不祥事になったら、億の契約が飛びかねません…」
「………。」
「ユウさん……」
黙っていたのは、加奈子がくすぐったそうに首を竦めたからだが、和馬には分からなかったのだろう。
「和馬。これから出られる奴等集めて、出荷待ちの会社行け。配送されてないのは、こっちでピックアップするから、そのリストと荷物の集配基地を調べておいてくれ。二時間で用意する。それまでに間違いなく、段取り付けとけ。いいな?」
「ユウさん? あの…」
信じられないとでも言いたげな和馬の声を最後まで聞かずに携帯を切った。
慌てたところで、現状が切羽詰まっている事に変わりは無い。となれば、慌てて仕損じるより、考え抜いて仕損じた方が気持ちが良い。
「さて…」
膝枕に寝息をたてる眠り姫をどうしたものか?
それに、久し振り過ぎる相手と交渉しなくてはならない。
気分は多少なりと重たくなってしまったが、加奈子が昨夜を頑張ったのならば、自分も少しは見習わなくては…とユウヤは、湯呑みを手に取って残りの酒を一気に煽った。
つづく