1話 ある日、雨の中、狼に、出会った
この作品は東方rojectの二次創作です。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
「ハァッハァッ・・・」
少年は雨降る竹林の中を走っていた。
(こんなに早く降るとは思ってなかったのに…!)
ここは幻想郷。
妖怪と人間が共存し、妖怪に人間が管理されることで均衡を保っている日本の隠れ里である。
そして、その一角にある「迷いの竹林」の中を、足を取られないように、妖怪に襲われないように警戒しながら「竹取 結」(たけとり むすび)は走っていた。
(雨のせいで視界が悪くて道がわからない・・・!)
竹取結は幻想郷にて竹細工や竹炭など、竹を用いた産業を一手に担っている商家の次男である。
そんな彼にとって通い慣れたこの竹林は庭同然の場所のはずだった。
(せめてどこかで雨宿りができれば…!)
だが、幻想郷には今、春特有の急な雨が降っていた。
この雨では、ただでさえ悪い竹林の見通しはより悪くなり、妖怪の足音や気配も感じづらくなり、人里に帰ることをより困難としていた。
それでも動かないわけにもいかず、しばらく竹林の中を進んでいたが、行く先に、古びた家屋があることに気づいた。
「こんなところに家屋が…?だいぶ古びているし、幻想入りしたか昔捨てられた建物なのかな?」
ひとまず結は周囲と家屋内に妖怪の気配や痕跡がないかを確認し、無いことを確認すると家屋内に入り、雨宿りをすることにした。
「だいぶ古くなっているけど中はそこまで朽ちてないな、囲炉裏もまだ使えそうだし助かった」
結は囲炉裏に火をつけ、服を乾かしながら取れた筍や採掘道具の手入れをしながら雨が止むのを待っていると
「よかった!こんなところに民家なんてあったんだ!助かったぁ」
という声が聞こえ、戸が開く音に慌てて鎌を持ちながら戸の方を見ると
「ひえっ人間!?」
という声とともに
全身びしょ濡れの、腰まで届くぐらいの長い赤茶色の髪から水滴が滴る
頭の上に大きな二つの獣の耳がついた妖怪が驚いた顔で佇んでいた。
その姿を見た結は、高鳴る胸や赤くなる顔を隠すこともできず、ただ茫然としていた。
<竹取少年は、狼少女に恋をした。>
世界観としては輝針城異変の最中、具体的に言うと3面が終わって4面道中あたりを想定しながら書いています。