78.また別の悲喜こもごも
一話投稿漏れがあったので上げておきます。
文字数が少ないので「え、こんだけ?」と思われるでしょうが、こんだけなんです。
準Sランクの新設とアマノの準Sランクへの特例昇格の件はすぐさま各国の各地冒険者ギルドで公表された。
勿論、アマノの根拠地である辺境の街ヘイグストでも同様である。
「アシモフさん、アシモフさん、アシモフさん、き、き、き、き、聞きましたか? て、て、て、て、<鉄塊>のアニキが、え、え、え、え、エス、エス、エス、エス、エスランクに、に、に」
「落ち着けトマ! Sランクじゃなくて準Sランクだ。Bランク冒険者たるお前が、そんな事でどうする」
「そ、そ、そ、そ、そんな事言っても・・・」
「ほーら、アシモフさんに怒られたー」
と、おちょくってるのは同じくBランクの女性冒険者ルカである。
「なに嫁さんにおちょくられてんだよトマ」
「「まだ嫁じゃないっ!」」
からかうディックにシンクロして返すトマとルカである。
この二人、同ランクで歳も近いことから意気投合して、お互いに惹かれ合う仲になっていた。互いにキマジメな性格も相まっていい付き合い方をしてるようだった。
「俺は<鉄塊>さんが、いずれSランクになる事は確信してるんだが準Sランクとはな。Sランクになるのもあっという間だろう」
「俺もそう思うよアシモフ。ちょっと早過ぎだけどな」
「早過ぎですよ、<鉄塊>のアニキは・・・冒険者登録してからまだ1年も経ってないでしょうが」
「んむ。でも<鉄塊>さんは昔から早かったからな」
「おいアシモフ。お前さんがセクハラ発言とは珍しいな」
「そういう意味じゃねーよっ」
「アシモフさん、冗談だそうですよ」
「分かってるよ、ルカ・・・。何にせよ<鉄塊>さんが顔見せたら祝賀会を盛大にやらんといかんな」
「ついでにお前ら二人の結婚祝賀会も兼ねるか?」
「な、な、な、な、何言ってんすかディ、ディ、ディ、ディ、ディックさん」
「だから落ち着けよ! ディックもあんまりマジメな若人をからかうな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それでトラヴィス王国に送った密使からの報告はどうなってる?」
「冒険者ギルドが公表してる事実の裏取りができた程度で、新たな情報は入手できておりません」
「ちっ、魔族の国に送った間諜の方はどうだ?」
「それがトラヴィス王国との国交が回復した今でも、厳しい入国審査が続いており、間諜だと看破され次々と捕縛されている次第で」
「つくづく使えん連中だな」
ガルガン帝国皇帝ゴンザヌスは不甲斐ない報告に不快感を露わにする。
「なんとしてもアマノとか言う冒険者を我が帝国に招聘しろ! 金でも女でも注ぎ込め、弱点があれば一番だがな」
「それが、冒険者ギルドの履歴によると、討伐報酬と素材の買取額で白金貨50枚以上の蓄財があり、また女性に関しても、眉目秀麗で知られるあの聖女から言い寄られても尚、袖にしているらしく・・・」
「な・・・んだと? 男が好きなんじゃねーのか?」
「その様な情報は入ってきておらず・・・」
「冗談だよ馬鹿野郎」
ゴンザヌスは何の成果も得られていない報告書を側近の顔に叩きつけ玉座の間から追い出した。




