6.アイテム袋はお高く手が出ません
冒険者ギルドを出ると、門番に聞いていた宿屋に向かった。
1階が食堂で普通の客も利用できるという、異世界テンプレそのものな宿屋だった。
宿屋のオバちゃんは恰幅のいい肝っ玉母さんって感じで、旦那さんはガタイのいい強面なオッサンで厨房担当らしい。お手伝いの娘さん(少女)もいるらしい。
うん、色々と知ってた。
素泊まりで銀貨4枚、朝晩二食つきで銀貨5枚らしい。朝晩二食で銀貨一枚とはなかなかリーズナブルだが、俺には基本食事の必要はないのでとりあえず素泊まり二泊分にしておいた。
そういえばこの世界での貨幣についてだが、村長の話によると、鉄貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨の七種類らしい。鉄貨が10枚で銅貨に、銅貨が10枚で銀貨にと、10枚毎に次の硬貨に相当するそうだ。価値は一番安い鉄貨が10円相当、一番高い白金貨が一千万円相当らしい。庶民によく使われているのが百円相当の銅貨や千円相当の銀貨だそうだ。
さて日が落ちるまでにはまだ時間がありそうだし、街をぶらつく事にする。
街並みは中世ヨーロッパといった風情で、石造り(レンガ造り?)の家が多い。
大通り沿いの建物は大体商店であり民家は殆どない。
何の店かは店先につるされた看板の絵で大体分かる様になってる。
手前の店は武器屋だな。まあ俺には自作の剣もあるし、そもそも武器は要らないので武器屋に用はない。それを言ったら防具屋も用なしか。
治癒魔法もあるし、身体も頑強だから薬の類も用はないな。衣服も物体生成で作れるしなー。
なんか街をぶらついても無意味な気がしてきた。
あ、そうだ。明日からの冒険者生活にそなえて、鞄か頭陀袋でも買っておくか。
兎を狩った時に気づいたのだが、異世界ものならテンプレのアイテム袋とか収納魔法を持ってないんだよね。これから覚えるのかも知れないし、魔法の袋のようなものが存在するのかも知れないけど、とりあえず今はないのでその代わりとなる物が要る。
って事で、雑貨屋を覗いてみよう。
それらしい店に入り、店員に聞いてみる。
「いらっしゃい。何か入り用ですか?」
「えーと……あるかどうかは分からないんですが、鞄か袋で実際の大きさ以上に持ち物が入る物とかありますかね?」
「え? アイテム袋とか魔法の袋とか呼ばれてるものですか?」
そのまんまあるんかい!
「え、ええ。こちらで扱っていたら買いたいかなーと」
「すみません、かなり高額な商品のためうちでは取り扱ってません」
「そうですか……かなり高額という事ですが、お幾らぐらいするのか教えて貰えませんかね?」
「中に入る容量によってピンキリになりますが、最低でも大金貨数枚はしますね」
大金貨って一枚で百万円相当だから、最低でも5、6百万円ですかっ!
「最低のものだと容量はどのぐらいなんです?」
「そうですねえ、小さめの荷馬車1台分といったところでしょうか」
うーん、値段の割りに微妙なサイズかな。
「ちなみに生モノを入れておくと腐ったりしますか?」
「腐りますね。まあ最高級の物だと別らしいですが」
「ハウマッチ?」
「はうまち? え?」
しまった、テンション上がりすぎた。
「ああ、すいません。最高級の物はいかほどで?」
「白金貨百枚と言ったところですね」
白金貨って一枚で一千万万円相当だから、百枚って事は十億円!
「はあああああ……あ、教えて頂きありがとうございました」
まあ、最高のチートアイテムだしねえ。普通に買うとなればそのぐらいの価値はするよね。
とりあえず頭陀袋で我慢しておこう。
「えーと、頭陀袋で一番大きい物と中ぐらいの物と小さめの物を二枚ずつ下さい」
「はい、毎度ありがとうございます」