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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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62.竜族会議



 辺境の街の屋敷にホーリアさんがやってきた。ヤーズさんを連れて。


「アマノ様、竜族会議の準備が整いましたので、お誘いに参りました」


 ああ、なんかそんな話もあったね。すっかり忘れてたよ。ああ、それでヤーズさんを連れてきてるのか。


「そういや、どこで開催するの? 上位以上の竜が集まるとなると、半端な場所じゃできないでしょ?」

「ええ、北海の孤島で開催します」

「孤島って、狭くない?」

「孤島と言っても、人間換算で一千万人は住めます」


 ……と言われても、サッパリ分からん。この世界の人口密度も分からんしなー。仮に九州ぐらいと考えておくか……。そう考えるとメッチャでかいな、孤島。


「どうやって行くの? 竜形態に戻って飛んで行くとか?」

「他の竜たちはそうなります。でも我々の場合は転移魔法陣がありますから」


 そう言うとホーリアさんはどこからか金属の板を取り出す。


「えっと、俺、普段着のままなんだけど、失礼にならない?」

「何を仰るやら、相手は竜ですよ」


 ああ、そうだった。


「えーと、ベルは……、置いて行った方が良いよね?」

「うーん……、できればその方が無難じゃないかと」


 俺もそう思う。ベルや、今回は大人しく留守番しててくれな。


「「「くぉん」」」――『うん、わかったー』


 よしよし、いい子だ。よく聞き分けたな。

 俺はベルの頭をモフモフと撫でくり回してやる。


「では参りましょう」


 俺はホーリアさんの隣にならんで歩いていく。ヤーズさんは、一歩後ろから着いて来る。

 転移魔法陣を潜り抜けると、そこは古びた遺跡の地下の様な場所だった。ホーリアさんは地下の階段を昇って行き外にでる。

 外に出ると、巨大な古代の円形劇場があり、4体のドラゴンが立ち並んでいた。

 何れも威風堂々としたドラゴン姿であり、上位以上の竜である事がひと目で理解できた。


 4体の竜は、最上位竜である冥竜ハルデヌス、上位竜である炎竜ゲルラ、水竜ハルワタート、大地竜ゲブであった。

 それぞれの体色が、冥竜は黒に近いダークグレーと渋く、炎竜は真っ赤な派手派手で、水竜は淡いブルーと美しく、大地竜は明るい黄土色といかにもな感じで、実にカラフルであった。


 一緒に来たヤーズさんがドラゴン姿に戻り、その中に加わる。ヤーズさんのドラゴン姿は初めて見たけど真っ黒な竜だった。実に闇竜らしい。


 ヤーズさんを加えた5体の立ち位置は、冥竜ハルデヌスが上座を開けた斜め右下の位置に。その下座にヤーズさん。ヤーズさんの対面に炎竜ゲルラ。ヤーズさんの下座に水竜ハルワタート。その対面に大地竜ゲブ。

 上座と冥竜ハルデヌスの対面は空席である。どうやら、この立ち位置が所謂格付けされた順番を意味する様だ。


「ようやく着いたかホーリアよ」


 冥竜ハルデヌスがホーリアさんに声を掛ける。


「ごめんなさいね、無理を言って呼び出したのに遅刻しちゃって」

「全くだぜ! 前回の竜族会議からまだ2年も経ってないってのに」


 答えたのは冥竜ではなく炎竜ゲルラだった。


「止さぬかゲルラ。最上位竜たるホーリア様とハルデヌス様の会話に口を挟むとは、不遜の極みである」

「ちっ! (ヤーズの点取り野郎がっ!)」


 おやおやー、丸っと聞こえてますよー。


「皆さんを臨時に招集したのは確かなので、先ずは第一の要件をお伝えしましょう。私は筆頭ドラゴンの座をここにいる天竜アマノに譲り渡します」


 はあっ? 何言い出しちゃってんのホーリアさん? てか、ホーリアさんって筆頭ドラゴンだったの?


「はあああああ? そんな人族の姿を真似した、そんなチンケな奴を筆頭として認める訳にはいかねえよ!」


 炎竜ゲルラが激高する。


「人族の姿を真似したチンケな奴と言うのは、私の事をも指すのでしょうか?」


 ホーリアさんがビキビキっと青筋を立てそうな雰囲気でゲルラに問い質す。


「うっ! それはその……、アンタの事は別にその……」


 答えに窮するゲルラ。あー、でもまあ竜族会議なんだし、人間の姿のままって言うのは却って失礼に当たるのかもな。そう考えて俺は人化を解除し、ドラゴンの姿に戻る。


「「「っ!」」」


 その瞬間に、水竜ハルワタートと大地竜ゲブが即座に平伏。ヤーズさんは余裕を持って恭しく平伏。

 上位竜の中では唯一体、平伏しなかった炎竜ゲルラだったが、実は衝撃を受けて身体が竦んで動けないだけだった模様。まあ文句を言った手前、今更引き下がる訳には行かないと言うプライドの問題もあったのだろう。


「ほっほっほ。これ程とはの。ホーリアが執心するのも得心よの」


 冥竜ハルデヌスが好々爺の様になってるし……。

 俺がドラゴンの姿に戻るのに併せて、ホーリアさんもドラゴンの姿になり、空席だった冥竜ハルデヌスの対面に位置取る。


「どうやら、格の違いをその身を持って受けないと、分からない様ですね」


 だが既にゲルラは涙目になってブンブンブンと首を左右に振っている。


「アマノ様、全力でやっておしまいなさい!」


 って、俺が手下の様になってんじゃねーか!

 さすがに全力だとヤバそうな気がしたんで、小手調べと言う事もあり、全力の半分ぐらいの力で雷矢を浴びせる。


 ビッシャァァァアアアアアン! と言う轟音が鳴り響いた。


 そしてそこには、正に落雷を浴びた立木の如く、ボロボロになって白目を剥いてる炎竜ゲルラの姿があった。他の上位竜たちも余波を浴びてアバババババ状態になってた。


 やっべ、半分の力でもアカンやん!


「すみません、全力なんて言って。半分の力で良かった様です」


 いやいや、ホーリアさん、今ので全力の半分です。

 ホーリアさんは一応、ボロボロになった炎竜ゲルラを癒やしてやり、目覚めたゲルラに告げる。


「アマノ様のお力、その身に刻みましたね?」


 完敗の炎竜、平伏である。


 その後、ホーリアさんに促された俺は、渋々ながら上座の位置に。


「ささ、アマノ様。皆にお言葉を」

「いや、お言葉をって言われても……。えーと、初めまして、天竜のアマノと言います。色々あって、この世界に来ましたが、ドラゴンとしては皆さんの後輩になります。なんかホーリアさんから筆頭ドラゴンの座を押し付けられましたが、特に皆さん方に指図をするとか、あれこれするつもりはありませんので、宜しくお願いします。あ、一点だけあった、ホーリアさん宜しく」

「はい、その件ですが、アマノ様は故あって、下位竜ないしは中位竜を300体程狩る必要があるのですが、眷属やペットにしているなどで狩られては不都合がある者はいますか?」


 ホーリアさんがそう問い合わせるが、特に不都合がある者はいなかった。


「では、私の方で狩場を選定し、皆さんにも伝える事にしますが、不都合があれば都度申し出てください。私の方からは以上ですが、なにか議題のある方はおりますか?」

「では儂からじゃ。ホーリアよ。そろそろ暴竜が転生する時期を迎えた。警戒せねばなるまいよ」

 冥竜ハルデヌスがそう告げてきた。



     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 最上位のドラゴン種たる聖竜ホーリア、冥竜ハルデヌス、天竜アマノの3体は、暴竜への対策を協議すると言う事で、竜族会議の孤島から立ち去った。上位竜である闇竜ヤーズも急用があるとの事で既にいない。

 現在、竜族会議の会場に残っているのは、上位竜である炎竜ゲルラ、水竜ハルワタート、大地竜ゲブの3体であった。


「もーっ! ゲルラのお馬鹿! こっちまで危うく死んじゃうとこだったじゃないの!」

「そうだぞ、ゲルラ。その短慮な性格をなんとかしろ」


 ハルワタートとゲブがゲルラをなじる。

 立ち位置的には上位に座る炎龍ゲルラであったが、実際の扱い的には下の様である。


「うっせーなー、天竜様があれ程強大な力を持ってたなんて思わなかったんだよ。全然そんな気配しなかったし」

「はーっ……、あのねゲルラ。人化した状態だったんだからドラゴンの気配なんてする訳がないじゃない!」

「あ……」

「あ、ではない! 少なくともお前はアマノ様が人化を解くまで大人しくしておくべきだったのだ」

「それをチンケだのなんだのと……」

「わぁーるかったって。俺だって、反省してるよ」


 脳筋で粗暴な性格の炎竜ゲルラではあったが、一応は反省しているらしい。


「ホントよ! アマノ様が温厚な方で良かったわよ。もし、アマノ様が激怒していたら、アンタ確実に死んでたわよ」

「なんだと? 俺は天竜様の一撃を受けきったんだぞ!」


 かと思ったら、そうでもないようだ。


「ゲルラよ、お前は何も分かっていない」

「そうよ! アマノ様の一撃を受けきったですって? 白目を剥いて気絶した癖に!」

「ぐっ、それは……そうだが……」

「アマノ様が激怒していたとしたら、あの一発で済んだ訳がないでしょう」

「ぐぬぬ。だが、いくら天竜様でも、あの全力の一撃を連発はできない筈だ」

「だからお前は何も分かっていないと言うのだ。あの一撃が全力だとどうして言える」

「っ! なん……だと?」

「あの一撃。我には手加減した小手調べの一撃に見えた」

「そうよ。あの一発の後、アマノ様は『やっべー! ちょっと力込め過ぎちゃったかなー』って顔してたし、全然余裕そうだったし」

「マジか……」

「それにあの後、ホーリア様がアンタを癒してなかっとしたら、やっぱり死んでたわね」

「死んでも転生する最上位のドラゴン様方と違って、我ら上位竜は死んだらそれまでなのだ。よくよく気をつける事だ」


 さすがに、ショボーンとするゲルラであった。


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