51.王都のお屋敷
王都のギルドマスターの推薦状も手に入れて、晴れてAランク冒険者になった俺は王城へと向かっていた。
ホントは来たくなかったんだが、王都の屋敷の場所も知らなかったので渋々である。
例によって王家の紋章付きの短剣を見せると、案内の騎士さんがすっ飛んできたので、ホーリアさんの部屋へ案内を頼む。
「あら、首尾はどうでした、アマノ様?」
「ホーリアさんの推薦状と辺境の街の冒険者ギルドマスターの推薦状を見せたんだけど、正直あんまり役に立たなかったね」
「あらまあ。どうしてかしら?」
「王都のギルドマスター曰く、頭で分かっていても信じられない、との事で」
「あー、あの人、そういうところがあったわね。常識に捉われすぎと言うか、頑なと言うか……。そうするとダメでしたの?」
「いや、こっちもいい加減面倒くさくなったんで、ちゃちゃっとBランク魔獣を10匹狩って、現実を突き付けてやったよ。受付嬢のナイスアシストもあったしね」
「それは重畳ですこと。では首尾よくAランクに?」
「お陰様でね」
「おめでとうございます」
「ありがとう。……、それでホーリアさん、早速で悪いんだけど」
「はいはい、王都のお屋敷ですね」
「話が早くて助かるよ」
「では参りましょうか」
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王都の屋敷は、ちょっと人の往来の多い場所にあった。もっとも王都である以上、これでも人が少ない方だとの事で、これより人が少ない場所となると、治安の悪い場所になるらしい。納得である。
間取りは、辺境の街の屋敷を二回り程大きくした感じで、エントランス、居間、食堂も二回り程大きくした感じだった。厨房、風呂、洗濯場、物置も同様である。2階の寝室と客間は都合10部屋もあった。それに反して庭は少々狭い。
「うーん……、でかいな」
「貴族のお屋敷としては小さいんですけどね」
「転移魔法陣を設置するだけの屋敷と考えるとデカすぎだよ」
「こっちのお屋敷が本宅になる可能性もありますよ?」
今の所、その予定はないのだが……。なにがフラグになるか分からないので黙っておこう。
「あらあら、ウフフ」
「そ、それで、こっちのメイド隊のメンバーは?」
「はっ! こちらに」
っ!? どっから湧いた?
気がつけば、エロフもといエルフが6名。
「王都のお屋敷を担当するメイド隊はこちらの6名となります。名前は右から順番に、グロリア、ヘレン、アイリス、ジェーン、ケイト、レイラです。お前たち、挨拶を」
例によって、一人一人順番に自分の名を告げながらカーテシーで挨拶をする。
こっちの名前は、G、H、I、J、K、L、か……。
鑑定で名前を確認すると、やはり偽名だった。
「ねえ、ホーリアさん。前から思ってたんだけど、俺も鑑定スキル持ちだし、偽名にする意味ってあんの?」
「アマノ様に対する偽名だとすれば仰る通り、無意味ですよ? でもアマノ様以外に対しては意味を持つのです」
なるほど、色々あると言う訳だ。ここは納得しておこう。
「こちらでの隊長はグロリアになります。それと、ヘイグストのお屋敷でのノウハウは伝えてますので、アマノ様が改めて説明する必要はありません」
ふむ、情報は共有している、と。なら、よーし。
「面倒が省けて助かるよ」
「ウフフ、できる嫁と仰ってくださって構いませんのよ?」
「あ、それはまたいつかで」
「もうっ! イ・ケ・ズ」
例によって、ベルはメイド隊の面々に抱っこされたりモフモフされたりして、気持よさげにしていた。
「なあベル? ベルって、エルフ好きなのか?」
「「「うぉん」」」――『ううん。でも、きれいなおねーさんは好き』
こいつ……。
「さっ、王都の屋敷の場所も分かったし、とっとと辺境の街に帰るぞ」
「「もうっ! いーけーずー!」」
ホーリアさんの叫びに、ベルの叫びが重なった気がしたが、知った事ではない!
俺は、早々に王都の屋敷を辞去した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい、知ってるか<鉄塊>さんがAランクになったらしいぞ」
「ファッ? どこ情報よ?」
「いや、違うだろ! Bランクになった、の間違いだろ」
「それこそ違う。Bランクになったのは一ヶ月以上前だ!」
「馬鹿か! 一ヶ月以上前にBランクになったばかりの冒険者がなんでAランクになれるんだよ」
「だってお前、あの<鉄塊>さんだぞ! Cランクに昇格した時も、Bランクに昇格した時も、お前ら同じ事言ってたじゃねーか!」
「同じ事ってなんだよ?」
「<鉄塊>さんの事をよく知らない否定派は『馬鹿言うな、そんな事ある訳ないだろ』だ。そんで<鉄塊>さんをよく知ってる肯定派は『さすが<鉄塊>さんだ! <鉄塊>さん、マジ<鉄塊>』だ。ちなみに俺は肯定派な」
「でも、さすがにAランクだぞ。昇格条件の依頼達成件数はBランク魔獣×300だぞ! 一ヶ月程度でどうこうなる数か?」
「<鉄塊>さんって、基本ソロだったよな。とするとさすがにないんじゃ?」
「待て待て、ペットの黒いワンコがいただろ。ケルベロスの」
「うーん、でもアレまだ仔犬だぞ?」
「仔犬と言えどもケルベロスだ! 俺は<鉄塊>さんのAランク昇格に銀貨1枚賭けるぜ」
「なんだと! なら俺は誤報だったに、大銀貨1枚だ」
「はっ! お前ら馬鹿ばっかだな。俺はAランク昇格に、大銀貨1枚だ」
「俺もAランク昇格に、大銀貨1枚だ! <鉄塊>さんを舐めんなよ」
「馬鹿はお前らの方だ。一ヶ月程度でAランク昇格だ? ねーよ」
「俄はコレだから困るよ。俺もAランク昇格に、大銀貨1枚」
辺境の街の冒険者ギルドで突然起こった、<鉄塊>さんのAランク昇格を巡る賭けは、オッズが7対3で<鉄塊>さんのAランク昇格が優勢となった。




