46.メイド隊
「こちらの6名がメイド隊としてお屋敷の維持、管理、防衛を担当します。名前は右から順番に、アリス、バーバラ、クリス、ダイアナ、エルザ、フェリスと言います。お前たち、アマノ様にご挨拶なさい」
ホーリアさんが告げると、一人一人順番に自分の名を告げカーテシーで挨拶をしていく。
しっかし見事に、A、B、C、D、E、Fだな……。
そう言えば、この世界の言語は英語と言う訳ではないのだが、文字自体は英語アルファベットによく似た文字を使う。
こっそり鑑定で名前を確認してみる。あー……偽名ですか、そうですか。
しかしステータス高いな、このメイド隊のメンバー。
そしてスキルがやや物騒。「隠形」だの「盗聴」だの、果ては「暗殺」とか……これ諜報・隠密部隊だわ。あるいは暗殺部隊。
「えー、私がこの屋敷の持ち主で冒険者をやっているアマノと申します。ホーリアさんのご好意により、皆さんにこの屋敷の維持管理をお願いすることになりました」
「あと、防衛」
ちょっとホーリアさん、うるさい。
「基本的には、お屋敷の掃除とかをお願いします。それと……」
あっ、そうだ、忘れてた。ちょっと離れた場所に移動してホーリアさんを手招きする。
「ちょっとホーリアさん、こっちに」
「なんです?」
「メイド隊のメンバーって、ホーリアさんが実はドラゴンだって事しってんの?」
「いえ。私が聖竜である事を知ってるのは国王と宰相、あとヤーズだけですわ。まあヤーズもドラゴンですけど」
「だとするとホーリアさん、食事ってどうしてるんですか? ドラゴンって別に食事しなくてもいいけど、人からすれば不自然ですよね」
そうなのだ、ドラゴンになってから食事が不要になっているのだ。別に食事ができない訳ではないが、あくまで嗜好品扱いになる。
なので特に必要のない食事をメイド隊に毎日用意して貰うのは申し訳ないのである。
「私は特に食事の用意はさせてませんよ。ほら、私は『不老の聖女』という事になっているので、多少人間の枠を外れていたとしても問題はないのです。ああ、お茶やお菓子は用意させますね」
なにそれ、ずるい! さすが聖女ずるい!
しょうがない、ちょっと言い訳を考えてみよう――よし、こうしよう。
メイド隊の前に戻り説明。
「ああ、失礼。お屋敷の掃除もそんなにきっちりやらないでも構いません。それと食事の方ですが、さっき言った通り、私は冒険者を仕事にしてるので、非常に不規則な生活になる事が多いです。なので基本的に食事の用意はしなくていいです。まあ稀にいきなり食事の用意をお願いする事があったとしても皆さんの食事と同じもので構いません」
言い訳終了。
「あとはそうですね……、庭の手入れぐらいでしょうか。折角、6人もきて頂いたのにロクに仕事もなくて申し訳ありません」
「何を仰います。お屋敷の防衛と言う重大な任務を任されるのです。我ら一同、粉骨砕身して任務を全うする所存です」
アリスさん……、屋敷の防衛が最優先事項なのね。
「それとアマノ様、こちらから質問宜しいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「我々はアマノ様をなんとお呼びすれば宜しいでしょうか? 我らはあくまでホーリア様の配下なので『ご主人様』呼びはご容赦願いたいのです。そうなりますと……『旦那様』呼びとかでしょうか?」
「それは赦しません」
即座にピシャリとホーリアさんが厳命する。ちょっと怖いんですけど……。
「えーと、アマノさんでいいんじゃないですか?」
「分かりました。アマノ様ですね」
「『様』じゃなくて『さん』で良いですよ?」
「ホーリア様が『様』呼びしている方を『さん』呼びする訳には参りません」
そ、そうですか、そうですね……。
「では、それで。後、なにか質問等ありますか?」
「今は特に御座いません」
「それじゃあ、なんか分からない事があれば、その都度聞いて下さい」
こうして俺とメイド隊との顔合わせは終了した。
ベルは、王城に住んでた頃にメイド隊の面々と面識が会ったのか、抱っこされたり、モフモフされたりして、気持よさげにしていた。
「「「うぉん」」」――『ううん、全然知らないおねーさんたち』
うぉい!




