31.お久しぶりです、ホーリアさん
観光目的で王都に来てみたけど、王城ぐらいしか観光名所がなかったし、そろそろ辺境の街に戻ろうかなー。
宿屋のベッドでベルの頭をモフモフしながら、そんな事を考える。
すると宿屋の店員から来客を告げられる。なんか騎士様らしい。
というか王国騎士団第七番隊・隊長のエモンさんだった。
「アマノ殿、お久しぶりです」
「これはエモン隊長。王国騎士団隊長たる方がこのような場所まで何用ですか?」
「実は聖女様より、アマノ殿をお連れするように言われまして。お急ぎの用がなければ是非にとの事で」
騎士団の隊長を使い走りにするなよホーリアさん。
「ええ、まあ、特にこれといった用はないので、吝かではありませんが、何か問題でも?」
「いえいえ、単に最近お見えにならなかったので、痺れを切らしたといった所でしょう」
確かに、最近ずっと狩りに勤しんでたしなあ。
「なるほど。では参るといたしますか」
ベルを抱き上げると宿の外へと向かう。
「かたじけない。馬車を用意してますので、こちらへ」
正直、王城までは馬車を使うほどの距離もないのだが、体裁という奴なのであろう。エモンさんと馬車で王城に向かう。
馬車での入場となると、大仰な紋章付きの短剣を見せないで済むのでありがたい。
「おお、アマノ様お久しゅうございます」
「お久しぶりです、ホーリアさん」
部屋にはホーリアさんの他に執事のような格好をしたイケメンさんがいた。
「もっと足繁くお越しになっても構いませんのに」
「いやあ、狩りで忙しかったもので、すみません」
「そういえば、Bランク冒険者に昇格なされたとの事。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
こちらの状況はしっかり把握してんのね。
「こちらも一先ず仕置きが済んだところです」
「仕置きとは?」
なんのこっちゃ?
「獣人族の件ですわ。先方の王国には反省を促しましたのよ」
「ああ、その事ですか。んー、でも他国から抗議されたからと言ってちゃんと反省しますかねえ?」
「ええ、一歩踏み込んで抗議しましたから。今頃は膝を抱えながら反省している事でしょう。それとも頭を抱えてかしら」
うーん、いかにも意味ありげな……、でもそっとしておこう。
「えーと、ところでそちらの方は? 初対面だと思いますが」
話題そらし、話題そらし、と。
「ああ、ヤーズ。自己紹介なさい」
「はっ。私は聖竜ホーリア様、直属の配下、ヤーズと申します。正式な爵位はありませんが、表向きには侯爵の扱いとなっています」
ん? 聖女様ではなく聖竜様と言ったな。ひょっとしてこの男……。直感的に鑑定を使う。
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【名前】ヤーズ
【年齢】389
【種族】ドラゴン種 闇竜
・生命 A
・魔力 S
・筋力 A
・敏捷 A
・器用 A
・体力 A
・知性 S
・運勢 B
【固有スキル】
・龍魔法
(鑑定不能)
・闇ブレス
【修得スキル】
(鑑定不能)
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やはりドラゴン! しかも強いぞこいつ。ステータス的には最低でもA+ランク。いや、S-ランクと言った所か?
「最上位のドラゴン種か?」
「いえ、めっそうもない。上位竜である事は自負しておりますが、最上位とはとてもとても。ですが、さすがアマノ様、アッサリと看破されてしまいましたね」
「当たり前じゃないの。アマノ様は、私に勝るとも劣らない力の持ち主ですもの」
「それは失礼を」
「しかし驚いたな。ホーリアさんの配下には他にも上位竜とかいたりするの?」
「いえ。上位竜はヤーズだけですよ。それに直属の配下は後はエルフ部隊とかですね」
「え? エロフ、ゲフンゲフン、エルフいるのっ?」
いかん、食いつきすぎて咽てしまった。
「なんかその食いつき方、釈然としませんわね。いますけど、全員魔道具で外見を変えてますから、見てもエルフとは気づきませんよ」
おうふ、残念。
なんでも諜報部隊らしく、国内外に広く展開し監視活動をしているらしい。その数、千人規模というから恐れ入る。
基本は情報収集だが時に暗殺も辞さないらしい。違う意味でも恐ろしい。
「ところでアマノ様。そろそろ辺境の街へ帰ろうかなー、とか考えてませんか?」
貴方はエスパーかっ!?




