28.ミレ村の獣人族、帰宅する
獣人族の救出から3日ほど経った。
村人からの申し出でにより、獣人族はミレの村へと帰る事になった。
帰りは王城が用意した幌馬車4台に分乗していくそうだ。
狭くて窮屈な奴隷運搬車と違い、ここでも獣人族の子供たちがはしゃいでいた。
護衛はなんと騎士団第七番隊である。もちろんエモン隊長の姿もある。
「最後まで面倒を見よと、ホーリア様からのご命令ですので」
縁のあった、俺とアシモフさんはお見送りである。
「本当に、本当にありがとうございました」
ドルグさんが何度も何度も頭を下げてくる。
「ドルグさん。だから何度も言ったようにですね、俺達が出張らなくても王城の方で対応していた訳で――」
「いえ、それでもです。アマノさんとアシモフさんは迷いもなくアゴラ商会に向かい、妻と娘に会わせてくれました」
「あ、俺は<鉄塊>さんに付いて行っただけな。マジでなんもしてないから」
「いやあ、お礼に娘さんの頭もなでさせて貰いましたし」
娘さんのナナちゃんと、奥さんのミーナさんは猫獣人だった。
猫耳娘ではなく――いや、ちゃんと猫耳はあるけれども――まんま猫だった。
猫が服を着て直立した感じ。
「にゃめんなよ!」とか言わせてみたい。
クリクリッとした眼が可愛い……けど、瞳孔が閉じてるとちょっと怖い。
まあドルグさん見たら分かるだろってもんだ。まんま狼男だし。
どうやら獣人族にハーフという存在はいないらしい。子供は、夫か妻の何れかの種族となるそうだ。何れかの種族になるのかは産まれてくるまでは分からないらしい。
「ドルグさんもお元気で! 奥さんと娘さんを大切に……は、言わずもがなでしたね」
俺とアシモフさんは獣人族のみなさんに手を振る。
子供たちや男たちは力強くブンブンと、娘さんや奥さん方は控えめに手を振り返す。
「ははっ、ドルグさん、まだ頭下げてるし」
そうしてミレの村人たちは帰っていった。
「全く、アマノ様には驚かされちゃったわよ」
七番隊の見送りも兼ねていたらしいホーリアさんが愚痴を言う。
「内偵中だったアゴラ商会に、脇目も振らずにズンズン突入するし、慌てて七番隊に出動要請しちゃったわよ」
「あれ? アレって、丁度七番隊の出動と被ったんじゃないの?」
「違うわよ。きっと大騒ぎになるに違いないと思って出動させたのよ」
「じゃあ、本来の救出作戦はもっと後日になってたの?」
「そう。囚えられていた獣人族の数が数だったから、より慎重な策を講じる必要があったのよ」
「ああ、なるほど」
「なるほど、じゃないわよ、もーっ」
お、拗ねたモーリアさん可愛い。
「聞こえてますからね」
あ、ヤベっ、そうだった。半目のジト目をしてくるホーリアさん。
「でもさ、そこまで慎重になる必要もなかったんじゃないの?」
「それはアマノ様が、冒険者という身軽な立ち位置で動けたからですし、それに相手を一網打尽にする自信もあったんでしょう?」
基本ノープランだったけど、相手の喉元――獣人族が囚えられていた地下室――に飛び込みさえすれば、後はどうとでもなった自信は確かに持ってた。
雷矢で感電させて麻痺らせてしまえば、そこで試合終了ですよ……? え、用法が違う? はてさて、一体何の事やら。
「まあでもお陰でスピード解決できた訳ですし、プラスマイナスで言ったらプラスなんで良いですけどね」
なんか開き直ったっぽい。
「そう言えば今回の手柄で、国王陛下からアマノ様に勲章を授与しようかって相談されたんですけど」
「悪目立ちしたくないから、辞退の方向でひとつ」
「デスワヨネー」
棒読みになってますよ、ホーリアさん
「しかし凄いね、ホーリアさんは」
「なにがです?」
「ちゃんと守護竜してるじゃん」
「え? そんな事……」
あ、照れてる、照れてる。
「だから聞こえてますってば、もうっ」
一頻りホーリアさん弄りをしていたら、アシモフさんが愕然とした顔をして、口を半開きにしていた。
「ちょっ、アシモフさんどうしたの?」
「<鉄塊>さんが……、聖女様と痴話喧嘩を……、いつの間にそんな仲に……? <鉄塊>さんだから? <鉄塊>さんだからしょうがないの?」
「「「うぉん!」」」――『ご主人様だから、しょうがないのだ!』
そんなアシモフさんの足元を、ベルが前足でポンポンと叩いていた。
今日もいい天気だなっ!(現実逃避)
ある程度、書き貯めてはいるのですが
次回からは1日1話の投稿になります
まとめて読みたい気持ちはもの凄く分かるのですが
執筆の都合とか、作者のリアル都合とかもあるものですから
その辺を配慮戴けるとありがたいです。
毎日2時を目処に投稿する予定ですので
よろしくお願い致します




