27.七番隊と事の次第
「そこまでだ!」
その大音声と共に、ガチャガチャという甲冑の音を響かせて完全武装した騎士たちが地下室へと雪崩れ込んできた。
「我々は王国騎士団第七番隊である! 商会の周囲は包囲してある。店長および支配人も既に捕縛済みである。この上は貴様らも無駄な抵抗は諦め、大人しく縛につけぇええい!」
火付盗賊改の長官も、かくやと言わんばかりの大見得である。
完全武装した騎士たち相手に破落戸どもが敵おう筈もなく、手勢の男どもはすぐさま武器を捨ててホールドアップとなった。
隊員たちが手早く縄で捕縛していく。
隊長さんが俺の下にやってくる。
「アマノ殿ですな。私は、騎士団第七番隊の隊長を務めるエモン=ナムラクと申します。お怪我はありませんかな?」
「ええ、頑丈な生まれなもので。それよりなんでまた俺の事をご存知で?」
名前を呼ばれて驚いた。騎士様なんぞに知り合いはいないからだ。
「今回、我々は聖女ホーリア様の命にて動いております故」
ああ、なるほど。ホーリアさん案件なら納得だ。
「それで、そちらの御二方と、牢に囚われている獣人族の方々も、事情をお聞きしたいので、王城の方に来ていただきたい。もちろんアマノ殿にも」
俺の方に否やはない。もちろんアシモフさんもだ。
「俺が王城に報告にいった時には、けんもほろろな対応だったけどな」
ドルグさんが憎まれ口を叩く。王城の対応に相当腹を立てていたせいだ。
「なるほどペスロー男爵ですな。いや、もうすぐ元男爵ですかな?」
その言葉に驚くドルグさん。
「それは一体?」
「それは王城の方で。事情をお聞きすると同時にこちらからも色々と報告させて頂きます」
牢内の獣人族は囚えられていた不安で精神的に参っていた者もいたが、無事解放された事で安堵したようだ。王国騎士団が獣人族に対し丁寧な対応をしたのも良かったようで、騎士たちに頻りに感謝の言葉を告げていた。
獣人族一行は騎士たちに守られ王城に向かった。今回は城門前で止められなかったドルグさんはホッと一息ついていた。
王城ではホーリアさんが待っていた。
大会議室という広い部屋に通され、先ずは食事を饗された。貴族が食べるような豪華な物ではなく、一見、質素だが栄養価が高い物が充分に用意された。味についても素晴らしく、獣人の子供たちは「うめえええっ!」っと大騒ぎして親たちに叱られていた。
食事が一段落すると、事情聴取が始まった。主に村長が、たまにドルグさんが補足して事情を話していく。
「そうして儂らは、ドルグを除く全員が馬車に詰め込まれて運ばれていったのじゃが、途中で出された食べ物を口にすると意識を失ったのですじゃ。あれは恐らく眠り薬でも入ってたのじゃろう」
なるほど、変に騒がれるのを嫌ったのか。
「俺については、さっきいった通りだ」
と、ドルグさん。
「では、こちらから、ここまでで判明している事実を報告します」
なんと、ホーリアさん自らが報告するらしい。
「先ず、貴方たち獣人族を奴隷狩りしたのはアゴラ商会といいます。王都にある店は支店であり、本店はゴルガニア王国にあります」
ゴルガニア王国も、獣人族を奴隷とする国家である。
今回の絵図面はこうである。
表向きは人族の奴隷を扱いながら、クレメンツ王国において自由を謳歌している獣人族を秘密裏に拉致し、奴隷として本国に送る。
どうやらゴルガニア王国の近郊では獣人族を狩り尽くしているらしく、需要と供給のバランスが取れてなかったようである。
そこでクレメンツ王国のフリーな獣人族をターゲットにした訳である。完全に国家紛争の元となる事案だが、一商会が勝手にやった事だとしてトカゲの尻尾きりをされる事が先ず間違いないらしい。
これまで発覚しなかったのは、様子を見ながら少人数の拉致に留めていたせいらしい。少人数であれば、行方不明や不意の失踪などで片付けられるからだ。
だがアゴラ商会はそれで満足しなかった。少人数の拉致が成功すると、今度は村単位での拉致を狙った。その対象となったのがミレの村だった訳である。
それにしてはドルグを囚え漏らすなど、随分杜撰ではないのか?
だが、それには一応の備えがあった。それがドルグの報告を一蹴したペスロー男爵である。ペスローはアゴラ商会から充分な賄賂を受け取っており、ドルグの様な陳情をしてきた者を王城からシャットアウトし、かつ、商会に通報する役割を演じていた。
元々ペスローにはホーリアさんが疑惑の目を向けていたそうで、まだ取り調べの最中だが、ゴルガニア王国への内通の容疑も持たれているそうだ。恐らく黒との事。エモン隊長がペスローを元男爵扱いしたのはこうした事情による。
ペスローから報告を受けたアゴラ商会は、ドルグの口を封じるため、近々暗殺者を送る予定だったという。
だが、ドルグの対応が意外に早く、更に俺の行動が早すぎたせいで今回の仕儀と相成ったそうである。
なんか俺たちが動かなくても良かった様だ。
「いやいや、囚えられていた獣人族の方々にも、我々にも、怪我人の一人も出ず、実に楽な救出作戦でしたぞ」
と、第七番隊隊長のエモンさん。
「ひと足遅れで、アマノさんが棍棒で殴打された時は焦りました」
あら、ちゃっかり見られてたのね。
「それはもう<鉄塊>さんですから」
「<鉄塊>さん――とは?」
「鉄の塊と書いて<鉄塊>と読む。アマノさんの二つ名ですよ」
「なるほど! 得心です」
ポンっ! と手のひらに拳を落とす仕草のエモンさん。
ちょ、ちょ、ちょーっ、騎士さんに何吹き込んでるの、アシモフさん!
「「「あぉん!」」」――『ご主人様、マジ<鉄塊>!』
あ、ベル……、いたのね。
「「「うぉん」」」――『ええ、ずっと』




