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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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23.奴隷について、その1



 今日は王城にいる聖竜のホーリアさんに会いにきた。

 奴隷についての詳細を聞くためだ。


 王城の入り口で、貰っていた紋章付きの短剣を見せたら、即行で担当らしき案内の騎士さんがすっ飛んできた。

 凄い効き目だなこの短剣。まあすぐに亜空間にしまったけど。


 担当の騎士さんに案内される道々で色々聞いたところ、ホーリアさんは聖女という扱いらしい。守護竜である事はこの騎士さんも知らないらしかった。

 代々の国王を補佐する不老の聖女、と言うのが表向きの立場であり、宰相どころか皇太子よりも上の位置づけとの事だ。


「ようこそいらっしゃい。旦那様」

「今日は、ホーリアさん。まだ旦那様ではありませんよ」

「もう、いけずなお方」


 念のためベルも連れてきてる。


「今日はちょっとホーリアさんにお聞きしたい事があって伺いました」

「はい。好きな色は白で、好きな食べ物はレッドドラゴンのヒレ肉で、スリーサイズは――」

「いえ、そういう事ではありません」


 てか、ホーリアさん、レッドドラゴン食べちゃうの? それって共喰いじゃ?


「この世界の奴隷事情について教えて下さい。ここクレメンツ王国での扱いと他国での扱いの違いとかも教えて下さい」


 ホーリアさんの説明によると、こうらしい。


 クレメンツ王国を除いた大多数の国において、奴隷は犯罪奴隷と一般奴隷の2種類で、犯罪奴隷は文字通り犯罪を犯した罪で奴隷に落とされるケースで政治犯も対象となる。一方、一般奴隷は借金のカタに奴隷となる借金奴隷や、国を滅ぼされ捕虜となった挙句に奴隷に落とされるものや、何の罪もないのに奴隷狩りに遭い奴隷にされるものがいる。


 次に、奴隷には基本的に給金は支払われない。よって、奴隷本人による解放は先ず不可能である。奴隷の解放は原則所有者によってのみ行われる。


 所有者が死亡した場合は相続人が所有権を受け継ぐが、所有者が迷宮や街の外で死亡し、所有者の関係者に類する保護者がいない場合は、これを保護したものに所有権が移る。保護者が現れない場合は奴隷の逃亡もありうる。


 奴隷は隷属の首輪という魔法具で拘束される。これによって命令への隷属を強いられ、反抗する事を禁じられる。このため過酷な労働や性的奉仕、快楽目的による虐待行為までもが普通に横行するらしい。


 クレメンツ王国の場合は、かなり奴隷優遇な政策をとっている。


 先ずクレメンツ王国における奴隷は犯罪奴隷と借金奴隷のみに限られる。そして奴隷に対する性的奉仕および虐待行為は禁止である。


 犯罪奴隷は隷属の首輪で拘束されるが、罪に見合った労役を果たせば解放される。但し、犯罪奴隷に落とされる者は基本的に悪質な犯罪者であるため、課せられる労役も過酷なものとなり、実際に労役を済ませて生き残れる者は凡そ2割程度である。


 借金奴隷はより隷属効果の低い奴隷の首輪で拘束されるものの、労働に見合う給金が支払われ、借金を完済すれば解放される。


 所有者が死亡した場合の扱いについては他国と同様である。


「同じ奴隷制度でも、クレメンツ王国と他国では、かなり差があるな……。あと獣人族の扱いについて教えてくれる? 獣人の扱いもクレメンツ王国と他国じゃ大分違うんでしょ?」

「ええ、ここクレメンツ王国を除いた国の場合、獣人は奴隷として扱われます」


 獣人は奴隷という労働力として重宝されるため、自国内はもちろんの事、自国外にある獣人集落へ奴隷狩りの遠征すらあると言う。


 ただ、獣人族の場合、その戦闘力を見込まれ闘技場の戦士や兵士となった者の中には、稀に給金が支払われる者がおり、自分を買い戻す機会を持てるらしい。尤も良心的な所有者に限るらしいが。


 運良くそうして解放されても、また奴隷狩りに遭えばアッサリ奴隷されてしまうので、解放された奴隷は全員国外に――大体はクレメンツ王国に――逃亡すると言う。


「このように奴隷の扱い、とりわけ獣人族の扱いを巡り、クレメンツ王国とそれ以外の国との間には軋轢が生じているのが現状です」


 と、ホーリアさんは締めくくった。


「ねえ、ホーリアさん」

「なんでしょうか、我が君よ」

「いえ、私はあなたの主君じゃありませんよ」

「い・け・ず。それで、なんでしょう?」

「この国での奴隷と獣人族の扱いって、ひょっとしてホーリアさんが関わってません? というかホーリアさんの仕業じゃ?」

「いえいえ、歴代の国王がお人好しで善良であっただけですよ」

「それって、ホーリアさんがそう仕向けているんじゃないの?」

「なんのことやら。そもそも長命種である我ら最上位のドラゴン種が、所詮、短命種にすぎない人族や獣人族がどうなろうと知った事ではないじゃありませんか」

「それはまあ……」


 そうかもしれないんだけどさ……。


「でも、俺はこの国の扱い方の方が好きだな」

「え!? 好き……ですか?」

「あくまで、『奴隷と獣人族の扱い方』、の話ね」

「え、ええ」


 あれ? なんだろう、ホーリアさんが妙にしおらしい感じだけど。


「(やっぱり、この感じ、あの人に似ている。そういえばあの人も異世界からきたっていってたし……)」


 なんか。ブツブツ言い出したんだけど……。


「やはり、貴方様は私の運命の人!」


 うぉおおおおお! 突然迫ってきたぁあああああ!


「行けっ! ベルよ! 主の身を守るのだ」

「「「あうぉおおおおおおおおん!」」」

「もうっ! いーけーずー!」


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