22.ベルの戦闘力その2
ペロペロと頬を舐められる感触で目を醒ました。ペロペロしてたのは予想通りベルである。日の高さを見てみると、お昼をすぎた辺りだろうか。
「おはようベル」
「「「あぉん!」」」
身体を動かしてから一眠りしたベルは相変わらず元気溌剌のようだった。黄色いドリンク要らずだな。
さて、Dランク魔獣のオーク相手では全く問題なかった訳だが、果たしてCランク魔獣のオーガだとどうだろう?
「ベル、次はCランク魔獣のオーガと戦って貰おうと思ってるんだけど、今まで戦った魔獣よりも頑丈で腕力もあるんだ。どうかな、いけそうかな?」
「「「うぉん!」」」――『任せといて!』
大丈夫って気配をさせているが……、大丈夫なんだろうか?
森に戻って、ソロ活動中のオーガを探してみる。
いい感じの場所に見つかったのでそちらに向かう。
「よし、行けっ」
オーガに駆け寄りいつもの奇襲戦法を仕掛ける。一気に首を食いちぎろうとするベルだったが、食いちぎるまでには至らない。ベルは食いちぎる事に固執せず、すぐに噛み付きを止め、一旦オーガとの間に距離を取る。
オーガは首からダラダラと血を流している。食いちぎるまでは行かなかったが、充分深手を負わせてるな……。
「ウガァアアアアア」
激高したオーガは手に持った棍棒でベルを殴殺しようとする。ベルはそれを軽々交わすと、再び首元に飛びつき今度は前足を振るって首を薙ぐ。
予め噛み付きで首の防御が落ちていたせいもあってか、その爪はオーガの首を断ち斬った。
ベルは、首を失い「ドォン」と仰向けに倒れたオーガの胸に飛び乗り、
「「「あぉおおおおおん!」」」――『このベルが討ち取ったりー!』
と、勝ち名乗りを上げた。
どこの戦国武将だ、お前はっ!
お陰で、四方のオーガが集まってきたので、早々に撤収する事にした。
さすがにベルでもオーガ相手の連戦は荷が重いと思ってたからである。
俺なら別に平気だろうけど、面倒だし気分の問題である。
まだ日が落ちるまでには時間があるが、今日のところは撤収である。
ベルの頭をモフモフとなでくり回して褒めておいた。
『でへへへへ』
と言った気配がしたし、充分に身体を動かせて満足だろう。
王都に戻ると、本日のベルの獲物の解体、買取りを依頼すべく冒険者ギルドに向かう。
頭陀袋(特大)に亜空間の獲物を移していく。尚、丸焼きオークは除外した。
冒険者ギルドでは、辺境の街への護衛依頼を探していたアシモフさんとバッタリ会った。
「あれ<鉄塊>? 今日は王都観光じゃなかったっけ?」
「あー、なんとなく気分の問題でー」
と、適当な言い訳をしながら受付に。
「すみません、魔獣の解体と買い取り依頼いいですか?」
「あ、はい。では解体場でお願いします」
なんかアシモフさんが付いてきた。
「アシモフさん。先に言っておきますが、期待しても無駄ですよ」
「またまたあ」
と、ニヤニヤするアシモフさん。
「では、こちらにどうぞ」
獲物を並べて置いていく。
「グレーウルフが15匹とオークが5匹!? と、オーガが1匹! ですか?」
「ですね」
「えーっと……、なんという名前のパーティーですか?」
「いや、ソロです。というか狩ったのはこの仔です」
「「「うぉん!」」」――『ボクが狩ったんだよ!』
「え?」
いや、え? って言われても。
「ハッハッハ、さすが<鉄塊>さんだ」
「いや、俺じゃなくてベルの手柄ですから」
「おお、ベル殿、すみませんな。しかし、このオーガ、綺麗に首を落とされてますな。こんな状態の良いオーガ、なかなか見ませんな。さぞかし良い値がつくんじゃないですかな」
あ、そうなの?
「あ、はい。オーガは皮が頑丈なので素材としての価値が高いのですが、逆に皮が頑丈なせいで倒しづらく、討伐しても全身が傷だらけで素材として使えない事も多いんです」
と、受付嬢。なるほど。
「買い取り査定は期待できそうですね。それじゃ解体と査定の方、よろしくお願いします」
後日、仲間内から「さす鉄」呼ばわれした。手柄をたてたのはベルなのに、何故だ!




