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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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21.ベルの戦闘力



 そういや、ベルは散歩に出かけた頃から興奮気味と言うか、テンション高めだった。

 久々に王城の外に出たらしく、身体を動かしたかったのかもしれない。


「ベルってステータス高めだったよな。ちょっと運動を兼ねて、どの程度戦えるのか確かめてみるのも一興だな」

「「「がぅがぅがぅ」」」


 ベルもなんだかやる気満々である。


 俺は王都周辺の狩場情報を調べるべく、冒険者ギルドに向かった。


 受付嬢に確認したところ、王都から南西に徒歩2時間歩いた場所に、初心者から中級向けの魔獣が出る森があるとの事だ。


 早速、出かけることにする。王都の門を出ると、南西の方角を示しベルを走らせる。

 俺の全力走行には劣るものの、30分もかからず南西の森に到着した。


 探査してみると、森はそれなりに広く、浅めの層に初心者向けの、深めの層に中級向けの魔獣が分布している。


 先ずは、最弱のゴブリンで様子みかな。丁度近くにゴブリンが3匹いたので、ベルを仕向けてみる。

 瞬く間に駆けて行くベル、中々に速い。ゴブリンに気取らせぬまま最初の一匹の首を噛みちぎると、次の一匹に飛びつき前足で首元を薙ぐ。身を翻して最後の一匹に飛びつくとやはり前足で首元を薙いだ。どうやら爪でスッパリやっていったらしく、ゴブリン2匹の首がコロリと地面に転がった。

 そのまま俺の方に賭けてくると、お座り状態になり『どお? どお?』と言った気配をさせてくる。

 目にも留まらぬ――まあ俺には見えてたけど――速さででゴブリン3匹を瞬殺した事に感心し、素直に褒めてやる。


「凄いな、ベルは。ゴブリンなんていちコロだな」


 モフモフと三つの頭を順繰りになでてやる。モフモフモフ。

 ベルといえば、得意げでもあり、気持よさげでもある。


 その後、Eランクのグレーウルフも狩らせてみたが、数匹程度の群れ相手ならやはり瞬殺であった。


 次は、Dランク魔獣のオークを相手にさせてみる。基本群れで行動する魔獣なので若干心配だったが、いざとなれば俺が手を出せば全く問題ないだろう。


 5匹のオークが相手である。基本戦術は一緒で、奇襲戦法で最初の一匹の首を食いちぎり、次の獲物に飛びつきながら爪で首を狩っていく。奇襲を受けて動揺してるところを、目にも留まらぬ速さで的確に首を狩っていく。実に見事なもんである。


 オークはゴブリンと違い首周りがかなり太いので、まだ幼いベルの小さい爪では首を狩るのは無理だろうと思っていたが、ベルは小さい爪に黒い靄の様な物を纏わせていた。

 その黒い靄の様な物が爪の代わりとなり、オーク太い首を断ち切っていった。恐らくあれがベルの固有スキル「闇爪」なのだろう。


 感心していたら探知しそこなったようで、急に4匹のオークが乱入してきた。逆に奇襲を受けた格好のベルに助太刀しようとしたが不要であった。

 ベルが三つ頭の口を開くと、火炎を吐き出した。突然の火炎に巻かれのた打ち回るオークたち。ベルはそんなオークたちの首を食いちぎって留めを止めを刺していく。瞬く間に豚の丸焼きの出来上がりである。焼き加減はミディアムレアといったところか。


 これがもうひとつの固有スキル「冥界ブレス」か……、見た目、火炎放射器だな。


 まんま豚肉を焼いた時のような食欲をそそる匂いが立ち込め、ベルの三つ頭の口からはヨダレがダラダラ落ちている。

 さすがにこのままだと、他の魔獣が集まってきそうなので、最初の5匹共々、急いで亜空間に収納する。


「「「くぉん!?」」」――『あれっ? ボクの豚さん消えちゃった!?』


 と、ベルから驚いたような、しょんぼりしたような気配がしてきたので、


「大丈夫だよ、ちょっと『ないない』させただけだよ」


 と言って、一旦森の外にでる。


 亜空間から一匹丸焼けのオークを取り出す。時間停止の効果で熱々のホカホカで焼きたてのままである。


 ベルは目を見開く。ヨダレはダラダラである。


「「「がぅ!」」」――『豚さん!』


「運動してお腹すいたでしょ。自分で狩った獲物だし、たんとお食べ」


 そう言うと、ベルは目を輝かせながら、一心不乱にオークの丸焼きに食いついていった。


「予想以上に戦闘力があったな……」


 さっきの戦闘を振り返りながら、そう独り言ちた。

 一瞬で首を食いちぎり、延長した爪で首を狩り、複数の相手には火炎放射で消毒、あ、いや、薙ぎ払う。

 これ、魔獣のランクでCランク以上あるんじゃないか?

 いやでもCランクっていうと例えばオーガとかか……。オーガの皮って頑丈だって言うし、さすがに食いちぎったり、首を断ち切ったりは難しいんじゃないかな。


 うまい具合にソロのオーガとかいたら、対戦させてみるかな?


 ベルを見ると、食事は終えたらしく、口の周りを舌でペロペロと舐めていた。さすがにオーク丸々一匹は多いらしく、半分ほどで満腹のようだ。

 というかオーク半分もその身体のどこに入った? 明らかに容積的におかしいだろ! 亜空間か? その腹は亜空間なのか?

 と、益体もない事を考えていたら。


「「「くぉ~ん」」」――『おねむ』


 お腹がくちくなって眠くなったらしく、ベルはその場で丸まって寝始めた。


「しょうがないなー。まあまだ6歳児だしな」


 頭をモフモフしてやると、耳がピピピと動く。いや、それ猫の動きだから!


 まだ午前中という事もあり、なかなか長閑で涼しい環境だ。

 睡眠をとる必要のない身体ではあるのだが、気分的に寝てみたい雰囲気である。


 一応、森の外だから安全なんだろうけど……。

 念のため、前々から気になっていた結界魔法を使ってみる。自分を中心に半径5メートルのドーム状のバリア的な物をイメージしてみる。そうすると薄い半透明をした魔力の膜のような物が広がった。

 実際にどの程度の効果があるのかの検証ははまた今度だが、とりあえずベルを包み込むようにして眠る事にした。俺ならその辺の魔獣に集られたとしても平気だしな。


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