1.ドラゴン転生とか聞いてないし!
気がつくと深い森の中だった。
だが、その森にはちょっと違和感があった。
木々が妙に細いと言うか、木の高さが低いというか……。
もちろん自分の身長よりは高いのだが、身長の1.2倍程度の高さしかない。
森というよりも、ススキの原に迷い込んだイメージと言えば分かり易いだろうか。
「どこだ、ここ? マジで異世界テンプレもの?」
慌てて身を翻して周囲を見渡す。
その瞬間、ドォォォン、ドォォォンという激しい音が鳴り響いた。
「っ! な、なんだこれ? モンスター? それか魔獣って奴か?」
ここがテンプレものの異世界であれば、その可能性は高い。
大体の異世界テンプレものは(何故か)深い森には濃厚な魔力が集まり、(何故か)モンスターや魔獣は魔力を好み、(何故か)強大なもの程、より濃厚な魔力を好む。そんな設定なのである。
とりあえず動きを止めて辺りの様子をじっと伺う……が、近くに何かがいる気配はしない。
そっと、一歩踏み出してみる。
ドォォォン!
「ひっ!」
音の鳴る方を必死で捜す。
音は、真下から響いてきていた。
というか、それは俺の足音だった。
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俺の手足は、怪物のソレだった。
いや、手足どころか全身が怪物であり、背中には羽まで生えている始末だった。
森の木々が妙に細くて低いと感じたのも、こちらが巨体だったせいらしかった。
「なにこれ? なにこれ? ゴ○ラなの? 俺ってゴジ○に転生しちゃったの? 聞いてないんですけど」
いや、冷静に考えればゴ○ラに羽は生えていない。
「異世界テンプレものなのに全然テンプレじゃないじゃん! なんなのこれ?」
誰も異世界テンプレものだとは一言も言ってない。俺がそう思ってるだけである。
一頻りギャースギャース騒いだ後、騒ぎ疲れて多少冷静になる。
「異世界テンプレものだと、とりあえず……ステータス・オープン?」
予想通りになんかそれらしいステータス画面が脳内に表示された。
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【名前】天之 竜一
【年齢】17
【種族】ドラゴン種 天竜
・生命 S
・魔力 S
・筋力 S
・敏捷 S
・器用 S
・体力 S
・知性 S
・運勢 S
【固有スキル】
・龍魔法
各種属性攻撃(火・水・氷・風・雷・光) ブレス
飛行(重力魔法)・肉体強化・治癒(傷病回復・欠損回復・解毒)
物理耐性・魔法耐性・状態異常耐性
変化・威圧・物体生成・結界・探知
鑑定・多言語理解・念話
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「…………………………」
…………………………って、おい!
ドラゴンって何だよ! ドラゴンって!
それに天竜って何だよ! 天竜って!
俺はどっかのプロレスラーかっ!!
そういやあの人、まだ現役なのかな?(現実逃避)
なにが名前に相応しい存在だよ!(合ってない事もないのが憎らしい)
つか何このステータス! 全部Sじゃねーか!
それに何この固有スキル!
龍魔法って何だよ? なんでこんなに種類があるんだよ!
それに17歳って何だよ!? おいおい! かよ。
俺って確か……、あれ? 何歳だっけ?
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全力の一人ツッコミを続ける俺が冷静さを取り戻すまでには数時間が必要だった。