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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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16.聖竜



 俺達は謁見の間を出て、待合室にと戻っていた。


 護衛依頼達成の証は既に貰ってあるので、この後は王都の冒険者ギルドに行って、依頼達成の報告とその報酬を貰い、解散である。

 王様からの褒美はやはり金貨で、冒険者ギルドで山分けする予定だ。なんと一人あたり金貨10枚、百万円相当であり、望外の収入となった。


 さて、城から退場する案内役の騎士さんはまだかいなー、と思っていたら、別の騎士さんから声がかかった。俺だけに……。


「アマノ殿ですね。アマノ殿には別途こちらにおいで願います」


 え、何? 俺、なんかヘマした?

 急いでギャバン氏とアシモフさんを見ると、二人共ぶんぶんぶんと首を横に振る。


「あのー、俺、いや、アテクシ、なにか粗相でも?」

「いえ、理由は聞かされておりませんが、くれぐれも鄭重にお連れしろ、と言われてますので、そういう事はないかと」

「あ、そうですか」


 なんかいきなりの事でビックリした――というか正直ビビったけど、よく考えれば俺はドラゴン様だい! 騎士だろうが近衛兵だろうが人間風情が何人集まろうが、どうこうできる存在じゃなかった(ちょっぴり慢心中)。


「じゃあアシモフさん。先に王都の冒険者ギルドに行ってて貰えますか」

「りょ、了解した」

「なんか、一瞬<鉄塊てっかい>さんビビってるように見えたけど、気のせいだったか」

「うん、むしろ堂々としたもんじゃないか。さすが<鉄塊てっかい>さんだ」


 はい、さす鉄さん頂きました。


「では案内の方、よろしくお願いします」


 さっきの謁見の間とは別の場所に向かっているようだ。

 おいおい随分と奥の方に向かってないか?


「こちらです。アマノ殿をお連れしました」


 案内の騎士はそう言うと、扉を開け、俺を部屋の中へと誘導する。

 品の良さそうな部屋だった。無駄にきらびやかでなく、それでいて見るからに上質と思われる調度品の数々。加えて落ち着いた雰囲気のする部屋でもあった……、のであるが。

 部屋の中にいる人達が落ち着いた雰囲気を台無しにしていた。なんで王様がいるのさ!

 厳しい顔つきをした貴族の人がいたのは、王様がいる以上、いても不思議はないけど。

 あと王妃様(推定)、なんで眼をキラキラさせてんの?


「えーと……」


 頭の中が「?」で埋め尽くされた俺は、王様を前にして跪く事すら忘れてボケーッと突っ立っていた。


 そしたら王様の傍にいた厳し顔の大臣さん(?)が話しだした。


「では、私の方から説明させて頂きます。私、この国の宰相を勤めているブノワ=エステバンと申します」


 あれ? 敬語? 平民の冒険者相手に何故に敬語?


「王国の上層部、それも極々わずかな者にしか知らされてない事ですが、我がクレメンツ王国は、最上位のドラゴン種である聖竜様に守護されているのです」


 ん? ドラゴン種の最上位?


「今回、こちらにお越し願ったのは、同じ最上位のドラゴン種であるアマノ様に、王国との友誼を結んでは戴けないものかと愚考した次第です」


 えっ? 同じ最上位のドラゴン種……だと……? 俺がドラゴンなのがバレてる!?

 つか、俺も最上位種なの? 初めて知ったんだが……。


「んもお、ブノワちゃん固い!」


 推定王妃様が横槍を入れた。てかブノワちゃんて……。


「友誼を結ぶんじゃなくてえ、アマノちゃんには私の旦那様になって貰うの!」


 へ? あんだって? 旦那様?


「あの……、失礼ながら、貴女は王妃様なのではないのですか? 旦那様って一体?」

「はっはっは、おばばが王妃様か。いやいやそうきたか」


 ビックリしたー。今まで一言も喋ってなかった王様が喋ったぞ。


「おばばはな、さっきブノワが言っておった最上位のドラゴン種、聖竜様よ」


 ナ、ナンダッテェーッ!

 とっさに探知発動。うぉっ、まぶしっ! 一際輝く光点。ついでに鑑定。


 ――――――――――――――――――――――――――――

【名前】ホーリア

【年齢】517

【種族】ドラゴン種 聖竜

   (鑑定不能)


【固有スキル】

 ・龍魔法

   (鑑定不能)


【修得スキル】

   (鑑定不能)

 ――――――――――――――――――――――――――――


 なんだか鑑定不能な項目だらけだが、ドラゴンで聖竜なのは確証が得られた。


「本当だ……、聖竜だ」


 聖竜でホーリアて、そのまんまだな。


「見たわね、エッチ!」


 エッチて……。


「いや、ステータスとかスキルとか鑑定不能で全然見えてないから」

「隠蔽魔法でバッチリ隠してるからね」


 エッヘン! と胸を張る美人さん。


 あ、そうか。相手も探知と鑑定をもっているとすれば、俺の事もバレバレって訳か……。

 そもそも隠蔽魔法とか、俺持ってないしなー。色々納得。


「それで王国と友誼を、との事ですが……」

「そうじゃなくて、私と婚姻――」


 ややこしくなることが間違いなさそうなので、美人さんはスルーして宰相さんと王様に語りかける。


「元々、俺はこの国の冒険者として活動してます。今回の王都来訪は、王都を観光してみようと思い立ったせいで他意はありません。

 この国が俺の事をドラゴンであると殊更に喧伝したり、利用してやろう、とかしない限り、この国の不利益になる様な事はしないと約束できますよ。

 ひょっとすると国外に出かける事はあるかもですが、まだ他にどんな国があるのかさえも知らないし、特定の国を贔屓するつもりもありません」

「さすがドラゴン種の最上位にいるお方だ、慈悲深く、聡明でいらっしゃる。我々も決してアマノ様のお邪魔をするような事はいたしませんので、何卒よろしくお願い申し上げます」


 宰相さんから、さすドラ頂きました。


「それでは、後はドラゴン様同士、よろしく致して下さい」

「では、おばば、健闘を期待しておるぞ」


 え? なにそれ……、どゆこと? 王様と宰相さんが部屋を出て行く。


 ギラリ! 後ろから獰猛な肉食獣の気配がした。


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