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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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15.何故か軟禁、そして謁見



 襲撃者のリーダー格を尋問――拷問じゃないよ、ちょっと「アバババババ」させただけだよ――したところ、事実は小説よりもくだらなく、要するに中間の街の支店長が、王都本店の店長に下克上して、立場を逆転させようとした犯行らしい。


 辺境の街からの貴重な素材を強奪されてアラ大変! ちょっと本店店長さん、どう責任取るのつもり? 私が代わりに取り戻してあげるわ。ほら見て、辺境の街の貴重な素材よ(ドヤァー) キャー、支店長さん素敵、抱いて! ついでに本店店長になってぇん☆


 なんで、こんな脳内お花畑な計画が成功すると思えるんだろうか?

 そんなご都合主義、異世界テンプレものじゃ、主人公(・・・)にしか発生しないんだよ! あれ、そうでもなかったりするか? まあいいや。


 襲撃者たちは十人ずつ四列縦隊で数珠つなぎで連行。歩みが遅くなるが、仕方がない。

 お陰で11日目で一日遅れの王都到着である。


 王都でかっ! 防壁高っ! 大体10m? さすがに人口も多そうだな……。


 門の前には入門審査待ちの人々が長蛇の列をなしており、こりゃあ暫く待たされそうだな……、と、思ってたらまさかの待ち行列すっ飛ばし。なんだろ門番に袖の下でも握らせたんだろうか?

 ギャバン氏が門番とゴニョゴニョ話していると、衛兵隊登場。

 襲撃犯約40名を連行していく。あら、さようならー。

 その後は入門審査となったが、冒険者ギルド登録証を提示するだけで許可された。


 商隊はそのままギャバン氏の所属する商会の本店に向かう。

 そこで護衛依頼達成の証を貰えば冒険者ギルドで報酬を受け取って解散だ。

 その後は基本王都観光のつもりだし、ノンビリしよう。


 ……って思ってたのにどうしてこうなった?



 ――――――――――――――――――――――――――――



 商隊を巡る本店と支店のいざこざは、衛兵に連行された行った襲撃者の存在もあり、速やかに処理された。

 尤も襲撃者に加わった者達や支店長やその幹部とかの末路については知ったことではない。


 こっちとしては護衛依頼達成の証を貰えばそれでいいのである。


「ギャバン殿、いつまで我々はここで留め置かれるのですか?」


 冒険者たちを代表してアシモフが問い詰める。

 我々は現在、商会の来賓用の宿泊施設での寝泊まりを余儀なくされている。

 依頼達成の証を貰えないまま。


「申し訳ない、もう少々お待ち願いたい」

「そう言われてから既に3日ですぞ!」

「私としても、申し訳ないとしか言い様がないのです」


 ギャバン氏自体の困惑はみてとれる。


「どうも王城絡みの案件らしく……」

「王城ですと? 我々の様な冒険者風情に王城が何の用ですか? Sランク冒険者ならいざ知らず、我々はBランクやCランクの冒険者ですぞ」

「それは重々承知しておりますが、今暫く王城の指示を承りたく……」

「……承知しました」


 なんか王城の方から、待ったがかかってるようだ。待ったがかかった理由は翌日わかった。

 街道を荒らす40名もの盗賊集団を全員捕縛したとは実にアッパレ。王城にて褒美を取らす故、出頭せよ。めでたくも国王陛下もその場に同席なさる……、だそうだ。


 盗賊集団って言うか、単なる商会の内輪もめによる武装集団だった訳なんだけど、王城ではそういう風に捉えたらしい。


 それにしても国王陛下もその場に同席って、要は国王陛下に謁見って事だよね……、欠席してもいいですか?


 などと言う間もなく、翌日の謁見となった。

 謁見するのは商隊の責任者のギャバン氏、副責任者の某氏、そして我々冒険者たち10名である。


 謁見の待合室に通される。かなり広い部屋だ。

 商隊のギャバン氏と某氏は割りと平気な顔をしているが、冒険者たちの顔色が軒並み悪い。壮年でいつもは泰然としてるアシモフさんやディックさんも青い顔をしている。

 やはり国王陛下に謁見と言うので緊張してるのだろうか?


「アシモフさん、アシモフさん、国王陛下に謁見するのは初めてですか?」

「あ、あ、当たり前だ。王城に入るのすら初めてだ」

「あ、そうですか。ディックさんはどうなんです?」

「ひぃっ! えっ? あ、ああ」


 ひぃって……、どんだけ緊張してるんですか。


「アマノは妙に落ち着いてるな」

「まあ<鉄塊てっかい>さんだしな」

「そうだな<鉄塊>さんだし、仕方がないか」


 ちょっとそこ<鉄塊>さんで落ち着きを取り戻すって、どういうことさ? 全く心外な。


 そうこうするうちに案内の騎士? 近衛兵らしき人がやってくる。


「それではお時間となりましたので、こちらにどうぞ」


 いよいよ謁見の時間らしい。

 謁見の間に通されると、見るからに貴族といった格好の人達が大勢集まっていた。

 壮年から年配の人が多く、若い人は殆どいない。重臣の方々といった所なのかもしれない。


 前方にいた厳しい顔つきの貴族が、近衛兵と思しき騎士から耳打ちされると大音声で国王陛下の入室を告げる。


「国王陛下の御入来である!」


 一斉に片膝を付いて跪きこうべを垂れる貴族たち。おっとギャバン氏やアシモフさんも跪いている。俺も真似して急いで跪く。ちゃんと頭を下げるのがポイントだな。

 赦しも得ずに国王陛下を直接見るのは畏れ多いとか何とか。


「一同、頭を上げよ」


 念のため、そろりそろりと頭を上げると、正面中央の玉座に、これこそ王様であるといった格好をしたナイスミドルが腰掛けていた。

 いかにも人の良さそうな感じで、ニコニコと微笑んでいる。なにか良いことでもあったのかな?


 前方にいた厳しい顔つきの貴族は、今は王様の隣に控えている。何かの大臣か、はたまた宰相か。

 そして王様の斜め後ろには、とんでもない美人さんがいた。王妃様なのかな?


 あれ? なんかこっちを見てるような……、気のせいか?


「此度の王都街道における盗賊集団の討伐、実にあっ晴れであった。その数、4倍にも及ぶ盗賊相手に殆ど無傷で制圧し、しかも命を奪わず全員を捕縛するとは実に見事な手腕である」

「ほー、4倍を相手に無傷で討伐とは」

「なかなか騎士団に勝るとも劣らない戦果では?」

「何を申すか。単なる荒くれ者の盗賊集団。騎士団ならば10倍相手でも蹴散らしてやるわ」

「ですが、近頃王都近郊の街道に頻繁に出没する盗賊集団を相手に、騎士団が討伐しあぐねているという話も聞きますが?」

「何の、盗賊どもが騎士団の接近を察知すると逃げ出すせいじゃわい。あの卑怯者の腰抜けどもが!」


 なんか、外野の貴族たちが妙に盛り上がってるが、騎士団と俺たち冒険者を比べるのはやめて。大体、俺達は討伐しに行った訳じゃなくて、襲われた訳だし、前提がちがう。しかも商会内部の内輪揉めだった訳で。


「王都近郊の街道を不埒者共が横行する昨今、なかなかの快挙である。よって国王陛下より褒美を下賜する。商隊責任者ギャバン、冒険者代表アシモフ、前に出よ」

「ハハァー!」


 あちゃー、アシモフさん、顔色が青黒くなってるぞ。


 褒美は豪華絢爛な袋に包まれており、中身は恐らく金貨だろう。


「これにて謁見を終了とする。国王陛下、御退場!」


 国王の入室時と同様に、全員跪く。

 謁見の間から退場していく王様。結局一言も喋らなかったな……。


 ん? 視線を感じて、ちょっとだけ顔を上げる。


 王妃様(推定)が、退場しながらこちらを「じーっ」と見てる。

 こちらというか、俺の方……いや、はっきりと俺だ。俺を見てる。なぜだっ?

 結局、暫く俺を「じーっ」と見ていた王妃様(推定)は、そのまま退場していった。


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