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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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14.襲撃者



 うーん、やっぱ付いてきてるよなーコレ。


 6日目、中間地点の街を発って暫くすると、こちらを追随するような動きをみせる集団がいた。

 街道を進んでるので、単に同じように王都行きの商隊か何かだと思っていたのだが、動きが明らかに怪しい。


 こちらが昼の休憩をとると向こうも動きを止める。こちらが動き出すと、向こうも俄に動き出す。といった具合で、常に一定の距離を付かず離れずついてくる。


「アシモフさん、気付いてます?」

「おお、さすがは<鉄塊てっかい>さん」


 いや、それはもういいですから。


「明らかにつけてきてますね」

「20名前後といったところか?」

「22名ですね。今の所は付かず離れずで一定の距離を維持してます」

「ふむ、正確だな。商隊責任者のギャバン氏にも報告しておこう」

「可能性のひとつとして、これから向かう先で待ち伏せからの挟撃という線も考えておくべきでしょう」

「<鉄塊>さんは、まだ若いのに洞察力が高いな。よし分かった。それも報告しておく」


 いや異世界テンプレものでこういう展開はよくあるもので……。心の中でそう答えておく。


 ――――――――――――――――――――――――――――


「そうですか、了解しました。ですが近づいてきてはないんですよね?」

「近づいてきてはいません。今はまだ(・・・・)


 ギャバン氏とアシモフさんの会話だ。

 ドラゴンイヤーは感度良好である。


「ではそのまま行くしかないですね」

「前方に待ち伏せがしてあり、後背との挟撃の可能性もお忘れなく」

「ええ、まあ、あくまで可能性のひとつとして……」


 ダメだな、まるで危機感が足りてない。


「アシモフさん、どうでした?」


 知っているが敢えて聞いてみる。

 アシモフさんはへの字口だ。


「芳しくないな。積み荷を王都に運ぶことに一杯一杯で、柔軟性のある思考ができてない」

「そうですか……。ならこっちが前方への警戒と後方の監視を強めておくしかないですね」

「そうなるな。冒険者全員の意思統一を図っておいた方がよさそうだな」


 アシモフさんは挟撃での襲撃に備えておくよう冒険者の面々に通達する。


 結局、6日目と翌7日目は尾行されている以外の動きはなかった。


 そして迎えた8日目の未明。


「きたっ!」


 前方に待ち伏せあり。その数20名。前後併せて42名と……4倍の人数かよ。尤も人数と戦力は必ずしもイコールじゃないけどね。

 アシモフさんに前方の伏兵の数を報告。そして自分なりの作戦を具申する。


「単純な人数で考えると4対1です。なので後方の敵を俺以外の全員で制圧してください。それなら2対1です。このメンバーなら充分可能ですよね」

「おいおい、馬鹿を言うな。後方集団については確かに制圧可能だ。だが、それならそっちは20対1になるじゃないか。無謀にも程がある。認められん」

「自分で言うのは凄く恥ずかしいんですが、俺は所謂<鉄塊てっかい>です。20人が40人であろうとも、足止めだけなら問題ないです。アシモフさんは俺が<鉄塊>と呼ばれる所以の現場を見てますよね?」


 アシモフさんは、俺が殴る蹴るの暴行を受けても一切ダメージを受けず、それどころか暴行を加えた側が逆にダメージを受けたという現場を目撃している。素手で剣先を受け止め、そのまま握りつぶすという現場も。


「それは確かに、だが……」

「それに俺には隠し玉があります。伊達に十数日でCランクになってませんよ。むしろ1人の方がやりやすいんです」

「なるほど……、ソロでグレーウルフを60匹以上だの、フォレストボアを20匹だのを狩ってくる君の事だ。その言葉に嘘はあるまい。分かった、了承しよう」


 よし、説得完了! あとは楽しい殲滅の時間だぜ(殺す訳ではありません)。



 ――――――――――――――――――――――――――――



 前方の伏兵集団と後方のストーカー集団の距離が詰まってきた。

 と、その時、空に向かって花火のような魔法が炸裂。恐らく襲撃の合図なのだろう。


「<鉄塊てっかい>さん以外の全員は後方集団の制圧に迎え! <鉄塊>さんは前方集団に向かって足止めだ! 持てる力を思う存分振るえ!」

「「「「「応っ!」」」」」


 一斉に走り出す冒険者たち。

 後方集団、その数22人。一方向かった冒険者は9人。

 だがただの9人とはちょっと違う。上級と呼ばれるBランク冒険者が3人、中級の中でもベテランと呼ばれるCランク冒険者が6人である。生半可な相手では到底太刀打ち出来ない。

 たちまち無力化され制圧されていく後方集団の襲撃者たち。

 一部の冒険者が残って襲撃者たちを捕縛していくが、それ以外の冒険者たちは急いで前方集団と交戦中の<鉄塊>さんの下に向かい……。


「アババババババババババ」

「いやー、本当に雷矢の感電麻痺は使えるわ」


 全身を痙攣させ、涙と涎を垂れ流す前方集団の襲撃者たちを見て唖然とするのであった。


「<鉄塊てっかい>さん、マジ<鉄塊>」

「おい、ちょっと待て! それ<鉄塊>の要素ゼロだろ!」



 ――――――――――――――――――――――――――――



 こうして今回の襲撃事件は、冒険者の何人かにごく軽微な傷を受けた者が出た以外は死傷者ゼロで済んだ。商隊のメンバーは軽微な怪我さえ負ってない。

 襲撃者の側も怪我を負ったものはいるが死者はゼロ。電撃によるトラウマを負った者と髪型が大仏ヘアーになった者が約半数で済んだ。


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