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異世界テンプレ・ドラゴン転生  作者: あまたちばなルイ
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12.西の森



 今日は西の森の様子見に向かう。辺境の街から西の森までは徒歩で一日なので、全速走行なら一時間で行ける。全速走行しても全く疲労を感じない底なしの体力。さすがドラゴン。さすドラである。


 西の森に着くと早速探知で探る。あーいるわいるわ。強力な魔獣が出るとあって森の大きさも東の森の比ではなく、魔獣を示す光点も強く光ってるものが多い。


 いきなり強力すぎる魔獣を狩っていくのも悪目立ちしそう――今更何を、ではあるが――なので、Dランク冒険者に相応しくDランクの魔獣を狩ることにする。


 西の森でのDランク魔獣で狙い目なのは、肉が美味で高値で売れるフォレストディアと、肉の値段はフォレストディアには劣るものの肉の量がそれなりにあるフォレストボアである。

 毛皮の値段もそれなりで、肉の値段と合わせると銀貨100枚以上になる。討伐報酬は銀貨10枚とお察しなので、素材(肉+毛皮)の値段が頼みである。


 尚、フォレストディアは数が少ない上に、気配察知に優れ、敏捷性も高く、冒険者が近づくと速攻で逃げるため、狩るのが非常に難しいらしい。

 一方、フォレストボアは数はそこそこいるらしいが、非常に好戦的で突進力も高いため、並の盾役では止めることすらできず、吹き飛ばされるらしい。

 どちらも群れで行動するタイプの魔獣ではないそうで、それだけが救いとの事。


 先ずは肉が美味だというフォレストディアを探してみる。なるほど確かに数が少ない。しかも近くにはいないな。

 フォレストボアは……近くにいるな。よしフォレストボアから狩ってみよう。


 いた。フゴフゴいいながら地面を掘っている。キノコでも探してるのかな? 突進してくるというので、敢えて気配を隠さずに近づいてみる。


「フゴ!? フゴォォォー!」


 なるほど好戦的だ。すぐにこちらに向けて突進してくる。いつものように雷矢で気絶させ……って、気絶しない!? 突進してくるフォレストボアを咄嗟に躱す。

 通りすぎても暫く突進が止まらないフォレストボアだったが、Uターンすると「フゴォォォー!」と突進を再開させる。

 どうやらグレーウルフを気絶させた程度の雷矢では威力が足りない様だ。魔力を多めに流し雷矢を準備し……射出っ!


 バチッ! と音がしてフォレストボアが崩れ落ちた。

 頭部から尻尾の辺りまで焼き焦げた線のようなものが走っており、フォレストボアは完全に息絶えていた。落雷の直撃を受けると、こんな具合になるのだろうか?

 威力の上げすぎで感電死したって事か……なかなか加減が難しい。

 焼き焦げて素材として売り物になりそうになかったが、観念して亜空間に収納する。


 その後、魔力量を加減しながらの雷矢でフォレストボアを狩っていった。気絶しなかったり感電死したりを繰り返したが、5匹目辺りで漸く魔力量のいい感じのところを見つけた。

 いい感じで調整できたのが嬉しくて、討伐数が20匹になるまで狩り続けてしまった。


 途中でフォレストディアも2匹狩れた。いかに気配察知に優れようが、敏捷性が高かろうが、察知できない遠方からの攻撃に抗う術もなく、雷矢の餌食となった。


 まだ日が落ちるまでには大分あったが、血抜きの手間もあるし、西の森初日という事で、引き上げることにした。


 街に戻り、素材を買い取って貰うため冒険者ギルドに向おうとして、はたと気づく。亜空間に収納した獲物をじか出しするのはマズい……という事を。どうしよう……。


 結局、街で大型の荷馬車を3台借りて連結。一旦街の外に出て亜空間の獲物を3台分に分けて取り出し、冒険者ギルドへ向かった。さすがに重すぎたせいかなかなか動かなかったので、こっそり飛行魔法で浮かせておいた。


 冒険者ギルドで解体と買い取りの申請をしたら、受付嬢のステラさんが卒倒した。

 ギャラリーの冒険者たちは「<鉄塊てっかい>さんだしねえ」「<鉄塊>さんならしょうがないよ」と謎の納得を見せていた。


 解体担当のジャックさんは頬をひきつらせていたが、解体担当の作業員たちが休暇から戻っているらしく、今日中には解体しておくので明日また来てくれ、との事だった。



 ――――――――――――――――――――――――――――



 そんな感じで西の森で狩りを続け5日ほどしたら、Cランクへの昇格条件をクリアし、無事Cランクに昇格した。


 トマからは、さすアニの賞賛を受け、ギャラリーの冒険者たちからは例によって謎の納得をされた。得意げさんは、相変わらず得意げだった。全く謎である。


 蓄えも、一千万円相当を大幅に超え、一千数百万円相当近くとなった。

 支出が、宿代と荷馬車代ぐらいしかないので、貯まる一方である。


 当面の金を稼ぐために始めた冒険者稼業だったが、正直狩りばっかしてるな俺。まあ、楽しいから別にいいんだけど。

 そういや、俺って何か使命みたいな物、持ってたっけ……?


 神……、管理者……、救済……、転生……、うっ、頭が……。


 あ、使命とかなんもなかったわ。


 どうしようか? Cランクへの昇格も済ませたし、お金も充分貯まったし、一旦狩りはお休みして、王都辺りに観光にでも行ってみようかね。


 思い立ったら吉日ともいうし、早速情報収集してみるか……。という事で冒険者ギルドの受付嬢ステラさんに質問。


「すいません、ステラさん」

「はい。買い取りですか?」

「あ、いえいえ。普通に質問なんですが、ここから王都までってどのぐらいかかるんですかね?」

「徒歩で約20日です。馬車だとその半分ぐらいですね」


 あら、意外と近い。


「アマノさん、ひょっとして王都に行くんですか?」

「ええ、まあ、なんとなく観光がてらって感じで」

「それだったら、商隊の護衛の依頼を受けてみる気はありませんか?」


 ん? 護衛任務か……、ちょっと面倒くさいな。


「アマノさんはCランクへ昇格したばかりなので、まだ先の事だと思いますが、Bランクへの昇格条件って知ってますか?」


 あれ? 護衛任務の話はどこ行った?


「いえ、知りません」

「Bランクへの昇格条件はCランクの依頼達成件数が300回と昇格試験をクリアする事なんですが……」


 依頼達成件数が300回とか結構きついな。


「徒歩で10日以上かかる商隊護衛任務をこなした場合、昇格試験が免除になるんです」


 ほう、それは魅力的かも。


「ちなみに昇格試験を受けた場合の内容は?」

「冒険者に必要な関連知識についての筆記試験と、実技試験だそうです」


 ふむ……、冒険者に必要な関連知識とやらはサッパリだし、それが免除になるなら割りといいな。


「護衛任務の方は他の冒険者たちとの合同になりますよね?」

「勿論です。さすがに商隊の護衛がソロとかあり得ません」

「それじゃあ、護衛任務を受ける方向で……、ただ他の冒険者たちとの顔合わせで問題がありそうな場合は断るという事でもいいですか?」

「え? はい、まあ、それでも構いませんが、何か懸念でもあるんですか?」

「いやほら、Cランクになったとは言え、俺はまだまだ駆け出し冒険者だし、なのに妙に二つ名とか付いてたりで反感買いそうかなー、と」

「あはは、そんなの全然問題なしですよ! だって<鉄塊>さんですよ<鉄塊>さん」


 なんか意味不明な請け負い方で太鼓判を押された。


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