9.できてしまった異世界チート
解体作業があと2日程かかるそうなので、今日は狩りをしない事にした。
狩りをしたところで、解体ができないまま放っておく事になるので獲物を腐らせる事になる。
あ、でも肉ってすぐ食べないで何日か熟成させるんだっけ? だったら何日か放置しててもいいのかな。いや、だめだだめだ、半端な素人知識による判断は、正に生兵法は大怪我のもとだ。
やっぱり今日は休んでおこう。
しかし、獲物を腐らせる云々もそうだけど、狩った獲物を保管しておくのに、やっぱりアイテム袋とか収納魔法とかが欲しいなあ。雑貨屋さんの話だと、メチャクチャ高価だし、今の俺には手が出ないんだよな。自力でなんとかなんないものか……。
「えーと、ステータス・オープン」
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【名前】天之 竜一
【年齢】17
【種族】ドラゴン種 天竜
・生命 S
・魔力 S
・筋力 S
・敏捷 S
・器用 S
・体力 S
・知性 S
・運勢 S
【固有スキル】
・龍魔法
各種属性攻撃(火・水・氷・風・雷・光) ブレス
飛行(重力魔法)・肉体強化・治癒(傷病回復・欠損回復・解毒)
物理耐性・魔法耐性・状態異常耐性
変化・威圧・物体生成・結界・探知
鑑定・多言語理解・念話
【修得スキル】
・魔力操作
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「あれ?」
なんかスキルが増えてる?
【修得スキル】魔力操作? 修得スキル……、修得スキルだって!?
やった、やっぱスキルって覚えられるんだ!
魔力操作、魔力操作か……、これって色々魔法の実験やって、魔力の込め方を調整したり工夫しながら魔法を使ったから修得できた気がする。
って事は、新たな魔法も覚えられたりするのかな? えーと異世界テンプレものだとどうだったっけ? アレか! イメージか? イメージで万能魔法か!?
取り敢えず試してみよう。頭陀袋(小)を用意して。そうだな……、亜空間、時間の停止した亜空間をイメージ。そこに頭陀袋(小)をしまうイメージを描いてみる。
「広さ100m四方の時間の停止した亜空間、その中に頭陀袋(小)を収納……」
目を瞑り、イメージを言葉にして何度も何度も呟く。呟きながら頭の中にイメージ。
ぐぬぬぬぬぬ…………、おっ!? 頭の中にイメージした空間に頭陀袋(小)が現れた。
ぱっと目を開ける。そこには用意してあった頭陀袋(小)は存在しなかった。
「まじか!?」
再び目を瞑り、頭の中にイメージを確かめると、頭陀袋(小)が存在している。
「じゃあ、今度はその逆だ!」
頭の中の頭陀袋(小)を取り出すイメージだ。すると「するっ」といった感じで簡単にイメージの中から頭陀袋(小)が消える。
目を開けるとそこには頭陀袋(小)があった。
「できてしまった……」
まじかー……と暫し茫然としてしまう。
「そうだステータス画面!」
ステータスを開くと、そこには……。
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【修得スキル】
・魔力操作
・亜空間収納
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「やった! ふえてる」
めでたく収納魔法を手に入れたようだ。
嬉しくなった俺は色々試してみることにした。先ず、本当に時間が停止しているかどうかの確認だ。
宿屋の肝っ玉オバちゃんからお湯を貰う。桶に入った熱々のお湯だ。それを収納。
次に氷系魔法の氷玉を射出しないように用意し収納。
時間経過によってお湯が冷めないか、氷塊が溶けないかと検証する。
次に、辺境の街を出て東の森近くの岩山に向かう。ここには人の背丈程もある岩石がゴロゴロ落ちている。それをどんどん収納していく。頭の中の空間には次々と岩石が収納されていき、やがて100m四方の空間が満杯になるとそれ以上は収納されなくなった。
「なるほど……、では」
次に俺は頭の中の空間を拡張するようイメージする。今度は200m四方で。
その後、再度岩石を収納するイメージを描くと、案の定岩石が収納されていく。
「拡張も可能かー、なるほど、なるほど」
満足した俺は収納した岩石を半分ほど取り出して捨てた。半分ほど残したのは、実験のためである。それは収納したものを、どこに取り出せるかの実験である。
頭の中の岩石を1個取り出してみる。その際、自分の前方50m、上空50mに取り出すイメージを描く。果たして岩石は、そこから落下してきた。
「おおおおお! これって擬似メテオができそうだな」
予想した通りの結果に大満足である。
「ん? 待てよ、取り出し先が思いのままって事は、取り込み先も思いのままだったり!?」
俺は前方50mに落下した岩石を収納するイメージを描くと……、岩石は普通に収納された。
「ちょっと待て! これじゃあ万引きし放題って事じゃあ……ゲフンゲフン」
さすがにそれは人としてどうなの――ドラゴンだけれども――と思い、今の実験結果については見なかった事にする。
その後も色々と収納の実験を繰り返した。といっても、特に新しい事を試した訳ではなく、嬉しかったので、色んなものを入れたり出したりしただけである。
そうそう、追加事項で、収納物のリスト化とかできないかなーとか、収納物の鑑定とかできたらいいなーと思ってたら、普通にできました。さすが異世界テンプレもの(誰も異世界テンプレものだとは言ってない)。
日が落ちそうになってから宿屋に帰り、時間停止実験の結果を検証。お湯は熱々のままで、氷塊は表面さえ溶けていなかった。
やったね。




