放置
オルフェ公爵家屋敷
「帰りが遅いと思ったら、兄上はどうやら殺されたらしい。そして、娘のジュリエットは人質に取られ身代金の要求をされているぞ。弟よ。」
「そのようだな。王には報告をしたが、すぐに討伐隊を編成し、山に籠る山賊を討ってこい、とのことだ。まだ、元当主様の息子バート様もまだ10歳の若さ。ここは、私が大兄上の仇を討って参ります。」
これで功績を挙げて一気に当主になってやる。
先手を打ってきたな。ここは、次男である私が率いて出陣し、功績をあげ、兄上の後釜に座るのだ。
「こんな危ない役目。弟に任せるに兄として心が痛む。よし、私が山賊どもを討ってこよう。」
やはり兄上もこの戦いを機に功績を挙げて、そんなことさせるか。
「いやいや。兄上に任せるわけにはいきませぬ。私めが行かせていただきます。」
「何?まさか、お前三男のくせに功績を挙げれば当主にでもなれると思っているのか。なんと浅ましい考えか。」
「それは、兄上も同じではありませんか。」
「何を言うか!」
「いい加減にしてください。そんなことをしている間にジュリエットが。」
二人の口論の間にジュリエットの母が割って入る。
「ジュリエット。そんなことどうだってよい。今はそんなことを話している場合ではない。」
「全くもってその通りだ。今はオルフェ家の未来がかかっているのです。そんなことどうでもいい。」
二人は話を聞こうとはしなかった。
「ジュリエット。ああ、ジュリエット。」
ジュリエットの母にはどうしようもなかった。
当主争いの中で討伐隊は結成されることはなく、最終的にどちらが当主に相応しいかに発展し二人の頭から山賊討伐の一件が消えた。数週間後、そのことが王に知られ二人は公爵家から追放される。
期限の日
「おい。オルフェ家から何も言ってこねえのか。」
アルバートはいらだっていた。
「それが、何も言ってきません。」
「見捨てられたか。可哀そうでそして使えねえ嬢ちゃんだなあ。」
アルバートは机を蹴り上げた。
「もういい。あまり待ってると危険だ。嬢ちゃん奴隷商に売り飛ばす。公爵家の血統だ。しかもまだ幼い。高く売れるだろう。」
小屋の倉庫
「おら、飯だ。」
アルはあれから食事をとっていない。
自分の犯した失敗を悔やんでいた。
もう、どうだっていい。
そこにアルバートが来た。
「おい。また、飯食ってねえのか。商品価値が下がっちまう。おい。行くぞ。」
俺は担がれ、木樽の中に入れられた。
数時間かに荷馬車の上で揺られた。
ドン。
どこかに着いたようだ。俺は乱暴に降ろされる。
「おい、オヤジいるか。」
「はいはい。おおこれはアルバート様。いつもご利用ありがとうございます。」
奥から黒い背広を着た中年のオヤジが出てくる。
「こいつ、買ってくれ。公爵家のお嬢ちゃんだ。これは、お嬢ちゃんの持ち物。ほれ、オルフェ公爵家の家紋だ。」
「確かに、紋章といい、このハンカチの材質といい。そう簡単に手に入るものではありませんな。ですが、商品を見せていただかないことには何とも言えませんな。」
「まあ、そう焦るな。おい。」
「へい。」
バキッ。
木樽が壊される。
「ほう。これは、かなりの上物ですな。青い瞳に艶やかな金髪これは高値で売れますぞ。」
「で、いくらだい?」
「そうですな。3000万トニーでいかがでしょう。」
普通の奴隷でも70万~130万トニーが妥当なのでかなりの破格である。
「よし、売った。」
「わかりました。ですが、私どももすぐにそんな大金は出せません。なので、」
「おう、売れてからでいいぜ。ここに仲間を待機させとく。こいつに連絡すれば俺に届く。」
そう言って紙を渡す。
「わかりました。では、とりあえず1000万トニーをお渡ししておきます。」
「ああ、そっちのほうが俺らも助かるぜ。」
商談が成立したと同時に大男に担がれて、奥の部屋に連れていかれた。
そして、体に鎖と隷属印を刻まれた。
その後、また、馬車で揺られ何日も道なき道を進み隣国の獣人の国へと運ばれた。