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歌声

元クリスト国

転移魔法で元クリスト国に到着した。


「おかえりなさい。おや?そちらの方は?」

「みんなを広場に集めて。そうみんなだ。」


広場

負傷者や女性など老若男女の獣人が集められる。


「ソフィアさん。本当にいいんですか?」

「ええ。大丈夫ですよ。任せてください。」

優しい笑顔で答えてくれた。

俺は壇上にあがった。


「みんなに集まってもらったのは他でもない。こちらに来ていただいたソフィアさんだ。彼女は人魚です。彼女たちの声は特別です。僕が話すより実際に感じてもらえばわかると思います。」


俺はソフィアさんを壇上に連れてきた。


「はい。こんにちは。ソフィアです。」


たったこれだけの声であったがみんなうっとりしている。


「私は皆さんが十年前の戦争や奴隷生活のなかで数々の消えない傷をうけてしまったと白狼さんから聞き、力になってほしいと頼まれました。この声が皆さんのお役に立てればと思います。こんなに大勢の前に立ったことないから・・・歌います。」


「歌うんですか!」

俺は驚いた。

「ええ。効力を高める為にも歌声を手段として使うのは初歩的なものです。水上なら舞も披露できるんですけど。」

「そうですか。よろしくお願いします。」


「では・・・」


素敵な歌声だった。

まさに女神の歌声。

心が洗い流されるような天国にいるような心地のまま眠りについた。


「起きてください。」

「あれ。いつの間に?」

「良く寝れましたか?」

「ええ。みんな寝てる。良かった。みんな優しい表情になってる。これで少しは良くなるかな。」

「もちろんですよ。頑張ってください。」

「すみません。送ります。」


俺は転移魔法で海まで送り届ける。

「今日はありがとうございました。」

「ええ。またいつでも呼んでください。きっとまだまだ増えるのでしょう?」

「はい。その時は是非ともお願いします。」

「他人の、ましてや領民のために頭を下げるのはなかなかできるものではありません。白狼さんのそういうところ 好き ですよ。フフ。それじゃあ。」

ソフィアさんは海に帰って行った。


俺の心を奪って。

体は女だからな。きっと別の意味で好きと言ったんだろうけど。

その日は昼に寝たからなのか・・・なかなか寝付けなかった。

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