出発
「アル今日も訓練かい。」
「うん。そうだよ。おばちゃん。」
行き交う人にも顔を知られかなりの人気者になった俺。
身長だけでなく毛並みも一段と綺麗になった。
そして、エリアも人と同じ姿になっていた。
歳で言えば6歳くらいである。
「アロマ師匠。ヴェルさんおはようございます。」
「おう、アルにエリア!午前中は狩りに行くぞ。しかしあれだな。お前がいると獲物の位置がすぐにわかってだいぶ楽になったな。」
「ほんとよね。一日仕事だったのに半日で済んでしまうんですもの。アル君がいてくれて助かるわ。」
「よっしゃ。行くか。」
森の中
「エリア。よろしく。」
クンクン
アルの周りから透明な波が広がる。
「あっちにイノシシ、こっちに鹿、向こうにはゴブリン7、オーク1、ローウルフ5。」
スキル嗅覚で普段以上の範囲を匂いで感知する。
数はスキル魔力探知で補っている。
特に魔物は素材にはなるが危険であり正確な判断と位置を必要とするためである。
「よし。イノシシと鹿は終わった。オーク、ローウルフは放置。ゴブリンを狩って帰るよ。」
「ただいま。アロマ師匠練習お願いします。」
「はいはい。せかさないの。」
アロマ師匠は部屋の奥にフクロウを放った。
「じゃあ、飛んでるフクロウの魂を入れ替えてみて。」
意識を集中させ両手の標準を合わせる。
そして、魔糸を放ち魂を抜き指に引き付け、魂の抜けた反対のフクロウに打ち込む。
それをフクロウが気づかない程の早業で行う。
「出来ました。」
「いいんじゃない。もう教えることもなさそうね。これで卒業。」
「え。やっとですか。次は熊だとか言われるのかと。」
「魂の質は大きさや凶暴さではないわ。それにもう私を超えてるし。もう何も言えないわ。よく頑張ったわね。」
「ありがとうございました。アロマ師匠。」
「もうアロマさんでいいのに。」
俺は無事に習得した。
数か月後
俺はその後、特にすることも無くなってしまった。
狩りには行くけれど頻繁に行くものではない。
「ヴェルさん。この里を出ようと思います。」
「どうした、急に。」
「この里には育ててもらった恩もあります。ですが、他の世界も見て回りたいんです。」
「・・・なんとなくそんなこと言いそうな気はしてたが。こんなに急に言われるとはな。よし。婆ちゃん(ばっちゃん)の所へ行くぞ。」
「今からですか。」
「今から。」
腕を引っ張られ連れていかれる。
「ばっちゃん。アルが里を出たいって。」
「アホたれ。今何時じゃと思っとる。本当にお前さんは変わらんのう。アル。こっちに来なさい。」
「はい。」
奥の部屋へ連れられる。
「いいかえ。里から出るのは構わん。好きにせえ。じゃがの里の事一切を口にすることを禁ずる。約束できなければ記憶を消して出て行ってもらう。どうする。」
「誰にも話しません。」
「そうかえ。わかった。約束じゃ。お前は大切な家族。いつでも戻ってくればええ。」
「はい。ありがとうございます。では2日後に旅立ちます。」
「そうか。あまり外で獣人族のええ噂は聞かん。くれぐれも気を付けての。」
「はい。」
俺はみんなに見送られながらこの里を去った。




