魔糸
「う・・。」
「あ!アル君。目が覚めた!大丈夫?」
「あれ、どうして。」
「アル君魔力の圧縮に失敗してしまって腕から魔力が爆発しちゃったの。幸い怪我はないみたいだけど気絶したみたい。」
「そうだったんですか。」
「 大丈夫? 」
「うん。大丈夫だよエリア。」
「 良かった 」
エリアは俺の上を心配そうにぐるぐる飛んでいたそうだ。
「あの腕は大丈夫なんですか。」
「大丈夫よ。あれくらい。ちょっと皮がただれてたくらいだから。」
「それちょっとって言いますかね?」
「う~ん。まあ、すぐに治るしね。大丈夫!この国の医療は凄いのよ。腕の一本や二本簡単に培養して作ってしまうから。安心してね。」
「安心できませんよ!」
「・・・さあ。続きをしましょう。気を付けてね。」
「・・・はい。」
その後数十回に及ぶ爆発の末とうとう魔力の圧縮から放出までできるようになった。
「次はこれよ。」
師匠は指から青い糸が垂れている。
「この糸は魔糸と勝手に読んでいるのだけど魔力を圧縮して糸状に編み込んだもの。これをさっきの放出する要領で打ち出す。」
師匠は指の先からものすごい勢いで発射し木に魔糸をくっつけた。
「そして引っ張ると。」
木が倒れた。
「まずは指先から魔力を少しずつ垂らして糸を作るところからよ。」
俺は指先からゆっくり魔力を垂らす。
ポシャ ボン
垂れた雫が爆発した。
恐怖しながらも魔糸を作りあげた。
「じゃあ、それを木にくっつけてみて。優しく素早くね。」
俺は狙いを定め発射した。
バキッ ボン
木を貫通したと思ったら爆発した。
「ソフトにくっつけないと。でもこれは感覚で学んでいくものだから。でも発射のスピードは速くて良かったよ。今のままでいこう。あと、魔糸を途中で全部無くなったからいいものの。あのまま繋がってたら導火線のようにあなたに向かってきてたわよ。気を付けてね。」
「なんで魔力を圧縮して放出しないといけないんですか?」
「魂を抜くにはそれだけ大きな力が必要なの。太くてもいいけど実戦向けではないし。あと人の魂の波に同調させようと思ったら細い方が合わせやすいの。その分危険だけどね。じゃあ。次いってみよう。大丈夫壊れてもすぐに治してあげるから。」
「そんな無茶苦茶だ。」
その後俺は何週間も発射 爆発 気絶治療 目覚める を繰り返し遂にできるようになった。
「おお。出来たじゃん。じゃあ、次は両手でやってみましょう。」
「両手で!」
「魂を一人だけ抜いても入れ替えれないよ。同時にしないと元の体に戻っちゃうよ。片方だけ上手くいってももう片方失敗したらその魂が彷徨うことになるし・・・。」
師匠の顔が暗くなった気がした。
「が、頑張ります。」
「ちなみに目標は指一本で魔糸一本だから。それが出来ないと次にいきません。でも悪いことばかりじゃないよ。この魔糸で相手を操り人形のように操ることもできるから多様性も上がると思うよ。じゃ、いってみようか。」
魔糸が一本増えるたびに難しさは何倍レベルではなくではなく何乗というレベルで飛躍した。
腕は何回も砕け、何回死にかけただろうか。
そして全部の指で魔糸を操るのに10年という月日が経った。




