特殊
俺は、ただその場に座り込んでいるしかなかった。
あれから何日たっただろうか。
もう、動く力も残っていない。
俺は目を閉じる。
雨が降り始める。
「なんだこのありさまは!」
「死んでる。」
「いや。一人まだ生きているぞ。」
「獣人の女の子か。この前の戦争で。」
「弱ってる子供を見捨てるなど誇り高き我らのすることではない。連れ帰るぞ。狩りは中止だ。」
森の秘境の村
「ギーヌは今すぐに医者だ。それとお湯と寝床を。婆ちゃん!」
「なんじゃ。騒がしい。おや。その子は。」
「いいから。早く!」
俺は布団の上に寝かされる。
「で、どうした。この子は。」
「戦争から逃げてきたらしい。そしてこの子だけ息が合ったから連れてきた。部族の誇りにかけて見捨てる選択肢はなかった。それに掟も破ってはないだろう。」
「はあ。わかった。好きにせい。ただ助けたところでどうする。この子にはもう頼れる親もいないだろう。」
「その時は私が育てる。」
数日後
「うっ。」
「目が覚めたか。ゆっくりでいい。起きれるか。」
俺はベットから起き上がる。
「ここは。」
「ここは、ジェム村だ。まあ、ゆっくりしろ。婆ちゃんを呼んでくる。」
「はあ。わかりました。」
彼女は風のように走って出て行ってしまった。
そして、疾風のように戻ってきた。
老婆を腕で掲げながら。
「ほら。婆ちゃん。目が覚めたみたいだ。」
「わかったから降ろさんか。馬鹿者!」
「はっ!ごめん。」
「全くお主は相も変わらず一つの事しか見えておらん。して、獣人の子よ。戦争から逃げてここまで来たのであろう。まずは怪我の治療じゃ。その後でどうするかゆっくり考えればええ。」
「ありがとう・・・ございます。」
「そうじゃ。名前は?」
「アル。」
「そうか。困ったことがあったらこのヴェルに言え。そいじゃの。儂は帰る。」
「ありがとな婆ちゃん。」
族長はゆっくりと帰って行った。
「元気になったらこの村を紹介してやる。それまで楽しみにしとけよ。」
ヴェルは元気に笑った。
数日後
村は活気に溢れていた。
だが、何か変だ。
何かが。
「あの・・この村って。何か変わってませんか。」
「ああ。そう言えば特殊だったなこの村って。」
「だって見る人全員・・・。」
「ここは、君の国の言葉で言うところのアマゾネスの里。女性しかいない。」
「女性だけの・・・。」
「さあ。行くぞ。」
俺は腕を引っ張られ、いや半分引きずられながら村を案内された。




