無謀
フォーチュン家屋敷
「お父様は無事に帰ってくるのかしら。」
アリーナは悲しげな表情を浮かべる。
「アリーナ。大丈夫です。旦那様はきっと帰ってきますよ。」
「・・・・・。」
俺は励まそうとしたが未だに気まずいままである。
「アリーナ。そろそろ。」
俺はアリーナと入れ替わる。
そして、午前の稽古が終わり昼食を食べているとき突然サイレンが鳴り響く。
そして、一人の兵士が走ってくる。
「何事だ。」
「それが、人族の軍勢が我が国の北の砦に攻め寄せています。今すぐに兵を用意して出陣していただきたく参上しました。」
「だが、兵と言っても今は戦争に出ていてもう、女、子供しか残っては。」
「ですが、北の砦が破られれば状況は最悪です。身体能力は我らが上です。彼らにも出陣するようにと。」
「あと、どれ程時間がある?」
「もう、3日ほどしかありません。」
「十分間に合う。分かった。すぐに行く。」
「残っているものを全員集めろ。村の奴らもだ。急げ。」
「アル支度をしろ。お前も出陣する。」
「アリーナ様はフォーチュン家の大将として出陣していただきます。こちらへ。」
アルとアリーナは引き離された。
入れ替わることもできずに。
北の砦前 広場
「諸君!今こそ、この国が一致団結する時だ。憎き人間どもの軍勢を蹴散らそうぞ。」
そこには鎧をつけてはいるがその状態からでも明らかに肥満体だとわかるほどの総大将が拳を挙げている。
他にも貴族の者たちがいたがどれもパッとしないものばかりだった。
だが、それよりもフォーチュン家の幼い大将に目がいく。
「あんな幼い大将で大丈夫か?」
など、あちこちで聞こえる。
だが、アリーナ(アル)はここにいる中ではかなりの実力者の一人になっていた。
「私は確かに幼くさぞ頼りのない大将であると思う。だが、私はこの国を守るため出来る限りのことをしたい。どうか、力を貸してくれ。」
一言一言、自分の兵たちに挨拶をして回る。
それだけでも彼女の兵たちの士気はかなり上がっていた。
その頃、ジュリエット(アリーナ)は救護班に配属されていた。
「あんたたちは戦っても足手まといになるだけ。だけど、運ばれてきた兵士たちを手当てするのも立派な戦いだ。それに私たちは食事の準備や調達やることはたくさんあるよ。分かったね。」
「はい。」
その日の夜
「アリーナ。この戦、僕が戦っていいのか考えたんだ。やっぱりアリーナが出ないと家臣の人たちの期待を裏切ることに。」
パン。
突然、ビンタをされる。
「何?期待を裏切るですって。スキルや能力を獲得して危なくなったから交代ってこと?ただ、逃げるための口実にしか聞こえないわ。それに、裏切るって何よ。私が戦ったら弱いままのアリーナよ。その方が裏切ることになるわ。もう、ほっといてよ。私じゃあ期待に応えられないよ。」
アリーナは走り出した。
「何をやっているんだ。俺は。」
「こんなところにいらしたのですね。これから作戦会議となりました。アリーナ様にも出席を。」
「わかった。今行く。」
作戦会議
「やっぱり、砦から出て戦うのは得策ではないの~。」
「ですが、弓矢だけでは限りがあり。」
「砦の前の森でゲリラ戦を仕掛けて混乱させるのはどうでしょう。」
「時間稼ぎにはなるだろう。向こうの本隊が返ってこなければ勝ち目がない。それは、良い案だと思うぞ。」
「問題はその役割を誰がするか。」
「やはり森に隠れるには小柄なほうが。」
「よし。フォーチュン家。お前らでゲリラ戦を仕掛けるのだ。」
「い、いや。」
「なんじゃ。儂は公爵家のものだぞ。逆らえると思っておるのかえ。」
「わかりました。」
くそ野郎。
「ならば、軍隊の到着するまでの間のゲリラ戦。そして、砦で防衛線をしている時は補給路を妨害するのだ。よいな。」
俺は他の奴らより先に出陣することになった。
ゲリラ戦法は足止めに使えません。指揮官の使えなさを表現するためです。




