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暗雲

エルフの国

長老会議

「やはり獣人の国との貿易摩擦が収まらないどころか貿易規制をかけてきています。私たちも魔道具の規制をかけていますが世界中にドワーフたちが広がってしまったためにあまり効力が出ていません。」

「私たちとドワーフの国との共同開発が売りであったのに獣人の国がドワーフの国に戦争を仕掛けて滅ぼした。多くのドワーフは我が国で迎え入れたがかなりのドワーフが獣人どもに流れてしまった。」

「問題は貿易規制の方です。奴ら塩に規制をかけています。これは、命にかかわります。エルフの国では塩が取れないのを分かっていて。このままでは迎え入れたドワーフたちが死んでしまいます。」

「もう、人族に頼るしか。」

「何を言い出すのです。奴らは一般市民を攫って奴隷にするような種族ですよ。信用できません。」

「もうこのままでは。」

「戦争しかあるまい。」

「戦争。」

「もうそれしか。」


獣人の国

会議

「エルフの奴ら塩を規制されてからというもの、我らの言いなりになっておるわ。」

「このままいけばまた戦争になるでしょうな。」

「ドワーフの時は不覚を取ったが今度はそうならまいて。」


「もう、やめてください。戦争なんてまっぴらだ。」


フォーチュン伯爵は立ち上がった。

「おやおや、これはこれは我が国の武闘派の一角のフォーチュン家ではございませんか。なにを弱気に。」

「私は戦争が嫌いだ。」

「何をいまさら。おやおや~そういえばあなたの妻クリスティーナは戦争で戦死したのでしたな。いやはやそのお気持ちよくわかりますよ。」

「でしたら。」

「黙りなさい!これは王の決定事項です。従えないなら下がりなさい!」

「クウーン。」

フォーチュン伯爵は黙っているしかできなかった。


フォーチュン家屋敷

「お嬢様やりましたな。とうとう闘気を拳に纏わすことが。」

「いや、まだまだだ。少しでも気を抜けば乱れてしまう。」

「ですが、始めてから半年でここまでの上達は普通のものではできません。」

「そうですか。」

お腹が空いたな。

「アリーナ様昼食をお持ちしました。」

「ではまた一時間後に。」

「はい。」

外で昼食を食べる。

「なんか最近昼食がさらに美味しくなった気がするんだ。」

「そう。良かったわね。」

「いつもありがとう。アリーナ。」

「何のことよ。」

「実は。聞いちゃったんだ。これアリーナが作ってること。」

顔が赤くなった。

「別に言う必要ないと思っただけよ。」

「ふふっ。ありがとう。」

「ふん。」

アリーナは顔を背ける。

アリーナはこれだけ俺と仲良くしてくれている。

すべてを話しても大丈夫かもしれない。

「ア、アリーナ。実は、話しておきたいことがあるんだ。」

「何よ。急に」

「俺の過去と魔法の秘密を。今まで話したがらなかったことを。真剣な話なんだ。」

「うん。いいよ。」

アリーナは俺の真剣な眼差しから何かをくみ取ったのか何も言わずに聞いてくれた。

俺は曖昧な部分もあった(ジュリエットの殺された部分)が自分の中身が男のこと、今までの過去や魔法のこと全てを話した。

「わかったわ。ありがとう。」

アリーナはどこかへ行ってしまった。

それもそうだろう。今まで女だと思っていたのが実は男で、あんな過去を話されたら誰でも混乱するだろう。

「これで、良かったんだよな。」

自分のアリーナを騙していたことの呪縛からは解き放たれたがまた今度は後悔の形で襲ってきた。

「稽古を始めますよ。アリーナ様。」

それから、体はいつものように入れ替えるが、アリーナのいつもの昼食はなくなった。


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